板挟みの脚本家の苦悩が面白い『テルアビブ・オン・ファイア』

2019年公開映画219本中91位。

ルクセンブルク、フランス、イスラエル、ベルギーの合作という
これまた珍しい映画。

とある脚本家の苦悩を描いた作品なんだけど、
設定が秀逸で、全体的にコメディなので普通に笑えるし面白い。

パレスチナ人の青年サラーム(カイス・ナシェフ)は、
叔父がプロデューサーを務める人気ドラマ『テルアビブ・オン・ファイア』
のヘブライ語の言語指導として働いている。

ある日、彼はひょんなことから毎日通っている
イスラエルの検問所で引っかかってしまい、
司令官アッシ(ヤニブ・ビトン)に職業を問われて、
『テルアビブ・オン・ファイア』の脚本家だと嘘をついてしまった。

アッシは妻が同ドラマの大ファンなので、
毎回サラームを呼び止めて放送前のストーリーを聞き出すだけでなく、
脚本の内容に口を出すようになるんだけど、
アッシのアイディアが採用されたことから、
サラームは脚本家に昇格することに。

こうしてサラームはアッシの協力を得ながら
脚本家として活躍するようになるものの、ドラマの展開を巡って、
イスラエル人のアッシとパレスチナ人の制作陣との間で
板ばさみとなってしまう(笑)

制作現場において、まわりがやんや言いすぎて話が変わっていく様子や、
板挟みになって苦労するクリエイターの話は、
普段の仕事でもよくある話だし、
邦画でも三谷幸喜の『ラヂオの時間』などがあるから、
世界観としては割とありふれているとは思うけど、
パレスチナとイスラエルという
政治的な対立がある国同士を題材として使い、
ここまでコメディとして面白くできるのは単純にすごいなって思う。

ここらへんはインド人とパキスタン人の交流を描いた
『バジュランギおじさんと、小さな迷子』にも通ずるところはあるけれど、
日本では人種や宗教の違いを発端とする政治的な対立がほぼないから、
現地の人々と比べると感じ方はだいぶ異なりそうではあるよね。

だから、こういう映画を単純に「面白い」と言って、
誰かに不快な思いをさせてしまわないかちょっと不安にもなるけど。。。

終わり方も綺麗にまとまっててすごくよかったんだけど、
個人的には、ハリウッドや邦画のコメディのように、
もう少しパパッてテンポよく進んでくれた方がよかったかな~。

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