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息子のストレスからの回復劇

今朝、突然息子を職場に連れて行くと父親が言い出した。
野球部に行かなくなってから約一ヶ月。塾以外は特に何もしようとしない息子にしびれを切らして長拳をやらせようというのだ。
長拳は息子が小学5年生の時に一年間だけ私がやらせていた。その時は内々の表演会で発表できるくらいまで頑張ってやっていたのだが、子供が一人もいなく、ジジババばかりでイヤだと言い出した。
辞めるときに建前上は受験を理由にしたが、本音は本人がやりたくないからだった。
そしてその思いは今も変わらない。
しかし父親は息子を長拳に通わせると言い出した。そして職場で空いた時間に鍛えるとのことだった。

私はまた面倒くさいことを言い出したなと思った。本人が望まないことをやらせても全く身にならないだろうと思うからだ。
かといって強引さは家族イチなので文句を言っても無駄だ。息子は言われるがままついて行き、私も何も言わず見送った。
ただ今日は塾が夜からあるので時間には帰るようには伝えた。

しかし時間になっても私の職場に帰ってこない。もしかしたら直接塾に行くのかもしれないと思ったが、開始時間になっても入室していない。
私は主人に確認の電話をした。そうしたら私の職場には帰らず、自宅にある学校の宿題をするため、午後四時には帰宅していると言っていた。
私は寝ているな、と思った。急いで自宅に戻り様子を見に行った。
案の定、息子は寝ていた。
長拳で鍛えられて疲れたのだろう。しかし私は大きな声で息子を起こした。

息子は冴えない顔を揺り動かしながら「あぁ。」と言ってよくわからない表情をした。
私が塾が始まっていることを伝えたら、息子はすぐさま謝りながら私に具合が悪いことを伝えたかったが出来なかったと言った。
少し私は怒り気味に起こしたことを申し訳なく思った。息子は明らかに体調を崩していた。

少し熱があるように思えたが、実際には熱はなく、火照った頭を氷枕で冷やした。それから少ししてだいぶ楽になったようだった。
私は原因を探るべく息子にいくつか質問をした。昼食も移動も問題なし。長拳がイヤだったんじゃない?と聞いたら「うん」と答えた。
たぶんこれが原因だろうと思った。

少し職場に戻るのが遅れため、一緒に働く父から電話があった。息子はどうしたのかと。
私は具合が悪く寝ていたことを告げて電話を切った。
職場に帰ると母があれやこれやと聞いてきた。私は朝からの流れを説明し、多分疲れて体調を崩したのだろうと伝えた。
母は主人の文句を言いながら、こんなことで塾を休むことになるなんて、野球部を続けていればこんなことにはならなかったとか言い出した。私は「イヤ、違うだろ。」と思いながら、
母は母でずっと高校受験を心配する母の愚痴交じりの息子へのアドバイスを私に聞かせていた。

私は急に息子が不憫に思えた。
誰も息子の心には目を向けていない。皆、自分が良かれと思うことばかりを押し付けているのだ。
息子の人生は息子のものだ。本人が決めなくてどうする?自分自身の人生を歩めるように後押しするのが私たち大人の仕事ではないのか?

私は仕事を終え、すぐさま自宅に戻り息子の様子を見た。火照りはなくなりだいぶ楽そうだったがまだ寝ていたいようだった。
私は息子の要望に答えお粥を用意し、食べたくなったら食べるように伝えた。
そして長拳をやりたくないことはちゃんと父親に伝えた方がよいと言った。が、息子はすかさず「おもいっきり伝えたが却下された。」と訴えた。
相変わらず強引だなと思った。

父親が帰り、私と同じように原因を探ったが、長拳を見られたのが嫌だったという息子の意見はスルーし、原因が分からないようだった。
私は息子の体調を崩した原因は練習を見られたことだったのかと初めてその時知った。
そうだ、息子はめちゃくちゃシャイなのだ。人様に練習など見られるのは相当のストレスだったに違いない。
私はわざと息子に長拳の練習が見られたのがイヤだったんだよね?と聞いて息子の同意の声も父親に聞かせた。
しかし父親は全くそんなのは具合の悪くなる原因とは思わないらしく、結構周りから見学されていたことを教えてくれた。
息子にとっては最悪なシチュエーションだ。
結構繊細な息子にはこんなことでも具合が悪くなるには十分すぎると感じた。
私はもう一回、長拳の練習が見られたことがイヤだったんだよね?のやり取りを父親に聞かせた。が、変わらず否定された。
まぁ、自分の非を認めるのがイヤな人間なのでこれくらいにしておこうと思った。

しばらくして息子も元気を取り戻し、焼き魚とお粥と豆腐を元気よく食べ始めた。
心が落ち着いたのだろう。本当に良かった。
心をわかってあげるだけでいい、人とはそれくらい難しく、単純だと思う。

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