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『ゾンビ映画』 にコロサレル!

2021年1月から地上波で“ゾンビ”ドラマが始まった。
本格的なゾンビをモチーフにした民放ドラマは初めてだと謳っているが、確かに“ゾンビ”というジャンルは制限や予算の関係で映像作品化するのが難しいジャンルである。
しかし近年は欧米の映画を中心にいろいろ実験的な試みがされていて、良作が多いのも事実です。
B級と言われながら多くの映画好きが愛してやまないゾンビモノ。
今回はそんなゾンビ映画について。

※今回の日テレ系ゾンビドラマ『君と世界が終わる日に』は動画配信サービスHuluとの共同制作によって予算面等をクリア。

父とゾンビが始まった日。

ゾンビ映画の父と言われるジョージ・A・ロメロ
デビュー作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』とその後の名作『ゾンビ』(『Dawn of the Dead』。ここではリメイクのザック・スナイダー版と混同を避けるため『ゾンビ』表記。)で現在の創作物のゾンビの形をほぼ全て作ったと言われている。
例えば今では当たり前の「ゾンビに噛まれると感染して自分もゾンビになってしまう」という設定。
元々ゾンビとは各地の地域信仰で語り継がれた生ける屍であり、墓から蘇るものだと思われてきた。
それをゾンビが人間を噛む(食う)事によってその人間もゾンビになる=指数関数的にゾンビの数が増える=恐怖の増大という枠組みを映像に落とし込んだのが彼である。
それ以外にも
・ソンビは頭(脳幹)を攻撃すると動かなくなる
・ゾンビはノロノロ動く
・ゾンビは会話ができない
などもジョージ・A・ロメロにより形成されたゾンビ像だ。
これによってゾンビのキャラクターとしての魅力が一気に増大して、ゾンビモノは瞬く間に映像コンテンツの一大ジャンル(サブジャンルくらいかな?)へと上り詰めていくのである。
さらに彼の作品の素晴らしい所は当時のアメリカや世界情勢をこのゾンビモノに巧妙に落とし込んでいる所にあるのだが、その話をすると『ジョージ・A・ロメロにコロサレル!』になってしまうのでまたの機会に。

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ゾンビの多角化。

2000年代に入ったくらいからゾンビ映画にも多角化経営の波が押し寄せます。
冒頭にも書いた通り、ゾンビモノは映像の規制(残虐なシーン等)や予算の制限(予算に作品の質が比例しやすい)などがあり流行も徐々に下火になっていきました。
しかしゾンビとは元々完全なる創作物。
いくらジョージ・A・ロメロという“父”がいたとしても、各クリエイターの頭の中でいくらでも自由に成長していくことが可能。
そこに目をつけた非凡なクリエイターたちは低予算でもアイディアを駆使して面白いゾンビ映画をたくさん創り出していきます。
いわゆる “ゾンビ×○○” というマッシュアップモノである。
ここからは私の好きなマッシュアップモノのゾンビ映画を紹介していきたいと思います。

※ここから先、多数のゾンビ映画のネタバレを多少含みますのでご注意ください。

まず手始めとして。

ゾンビ映画の再興に欠かせないマスターピースが2000年代初めに公開された、
ザック・スナイダーがリメイクした『ドーン・オブ・ザ・デッド』
ダニー・ボイル『28日後…』
そしてゲームからブームになった『バイオハザード』
これらは間違いなくゾンビ映画再興の火付け役ですが、マッシュアップモノではない比較的王道のゾンビ映画であるのと、個人的にそこまで好きでもないのでここではスルーさせていただきます。
好きな方すみません。
しかし『28日後』でそれまではノロノロ動く設定だったゾンビが走り出すという設定を加えた事や、『ドーン・オブ・ザ・デッド』でグランドホテル形式という見せ方を加えた事は、後のゾンビマッシュアップに大きな影響を与えました。

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『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)

まずは“ゾンビ×音楽”をマッシュアップ!
ジョージ・A・ロメロの大ファンで彼の作品『ランド・オブ・ザ・デッド』にゾンビ役としてエキストラ出演している今作の監督エドガー・ライトと主演サイモン・ペッグ
『ゾンビ』のパロディとして作っているのでコメディ要素がとても強いが、注目すべきは音楽の使い方。
エドガー・ライトといえば『ベイビー・ドライバー』でも見せた映像に音楽をハメ込むスタイリッシュな演出が特徴。
今作でもクイーンベックの曲を抜群のセンスで映像にハメてきます。
そしてゆるーいオフビートの空気感でハリウッドとは違うUKの世界観を構築。
ゾンビ映画なのに「センスあるなー」と思わず関心してしまう。
さらにコメディ色を活かしてゾンビが弱かったり、間抜けだったりするのも今作の大きな特徴です。
ゴア描写が少なかったり(低予算のためらしい)ゾンビ初心者の方にオススメな作品。


『ゾンビランド』(2009年)

次は“ゾンビ×コメディ”をマッシュアップ。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』がUK的なゆるーくて風刺のきいたコメディなら、この『ゾンビランド』はUS的な下ネタやらなんでもありのコメディ。
こちらは『ヴェノム』ルーベン・フライッシャーのデビュー作です。
この作品はゾンビという要素はサイドテーマとして、コメディを柱にラブストーリー、ヒューマンドラマそしてロードムービーといろいろな物語の要素をうまくごちゃ混ぜにしている。
にもかかわらず最後にはうまくまとまっているし、「ゾンビ映画観たな」と思えるのが不思議。
ルーベン・フライッシャーはこの映画を作るまで「ゾンビ映画なんてほとんど観た事なかった」らしく、一人の映画マニアとして作っているのでそういう作りになっているのかもしれない。
ゾンビ関係なく(関係なくていいのか…)シンプルなコメディ映画としても楽しめる傑作。


『高慢と偏見とゾンビ』(2016年)

“ゾンビ×不朽の名作”をマッシュアップ!
これはかなりイレギュラー作品です。
もしジェーン・オースティン 『高慢と偏見』の世界にゾンビがいたらという世界観。
日本で言ったら樋口一葉 『たけくらべ』の映像化にゾンビが出てくるようなものか…全く想像できないが。
しかし怖いもの見たさで観ると、ジェーン・オースティンの世界観を基盤にしっかりストーリーをなぞりつつも、ゾンビ映画ならではの衣装や戦闘シーンなども巧みに組み込んでいる。
主演のリリー・ジェームスサム・ライリーの美しさも相まってとても格式高いゾンビ映画に仕上がっています。
最もゾンビ設定は全体的にゆるゆるです。
でも個人的にはミステリー調でもないし、そんなにその点は気にならなかった。
こういう大人が大枚を叩いて本気で馬鹿馬鹿しい事に取り組んでるって素敵だと思うんですよね。
そういう部分も含めて好きな作品。
監督はドラマ『Lの世界』や映画『セブンティーン・アゲイン』バー・スティアーズ


『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)

“ゾンビ×高速鉄道”をマッシュアップ!
列車のような密室状態はゾンビ映画ととても相性が良い。
日本のアニメ『甲鉄城のカバネリ』『鬼滅の刃 無限列車編』もそうですよね。(甲鉄城のカバネリでは“カバネ”鬼滅の刃では“鬼”と“ゾンビ”という言葉は使われていないが、名称以外の設定はほぼゾンビと同じ。)
今作でも実は“ゾンビ”という言葉は使われていない。
それは制作された韓国ではゾンビ映画はヒットしない言われていたため、意識的に使わないようにしていたらしい。
今作の特徴の一つはゾンビがとてつもないスピードで走り込んできます。
これはテンションが上がる。
車内の狭さを利用したスピード感の見せ方や、ホームや線路に出た時の圧倒的な数の見せ方など演出面でのうまさも秀逸。
監督はアニメーションクリエイターのヨン・サンホで今作が実写デビュー作。
現在、続編の『新感染ファイナル・ステージ』が公開中。

あの名作は?

この他にも、ゾンビモノで世界で1番ヒットしたと思われる米国ドラマ『ウォーキング・デッド』は映画ではなくドラマでありしかもマッシュアップではなくかなり王道作品であるため。
そして日本代表とも言える『カメラの止めるな!』はおそらくこれを読んでくれている人全員が観てるのではないかと思うため。
以上の理由で今回は割愛させていただきました。

いやあ!ゾンビモノって本当にいいもんですね。
これからもたくさんの優秀なクリエイターによって、素晴らしいゾンビ映画が生まれることを願って。


ゾンビ映画にコロサレル!
ニシダ




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