喉に針を刺した日


行ってきました。


前回、甲状腺に「何か」が見つかって、大きな病院を紹介されて、再度エコーなどによる診断の結果
腫瘍であることがはっきりした。

初めの病院では1cmだったものが、今回は2cmを超えてまぁまぁ、なサイズらしい。

更に、それが悪性なのか、良性なのかで治療方針も変わるらしく、その細胞を検査しなければならないとの事。

そこで、喉に細い針を刺して細胞を吸い取り、
それを顕微鏡で見て判断する検査

「甲状腺穿刺細胞診」を受けてきた。

事前に担当医からの説明では、

「超極細の針を喉に刺し、腫瘍から細胞を吸い取って検査する。」と言う事で、

「1度目で上手く吸引できなかったりなど、場合によっては2回針を刺す事もある。」と聞いていた。

「痛みも後遺症もほとんど無い。あっても内出血があるかもしれないこと」から安全な検査です。と。

話には聞いたことあるし、そうなんだろうな、と納得。

予約時間に受付を済ませ、そのまま超音波センターに向かい、順番を待つ。

エコー検査を待つ人は今日も多くて、みんなそれぞれ静かに俯いていて

「皆さん、どこかしらが どうかあるのだな。」

などと、また他人の安否を思っていると

みんなが出入りしている病室みたいな部屋とは違う方向から看護師さんが呼びに来た。

「Marrypossaさんですか?では、行きましょう」

ついて行くと、そこはもう、手術とかするんじゃないの?って重厚な扉の部屋に連れていかれた。

思ってたんと違う

もっと気軽な雰囲気だと思っていた。


その扉の向こうには医師数名、看護師数名が待機していて、ど真ん中に診察台があった。

白衣を着た年配の医師が、氏名、生年月日や施術の説明をきいているか、などの確認をとり、
これから、針を刺して、腫瘍の細胞をとります。と説明をしてくれる。

微妙な薄暗さの部屋で、診察台に横になると

肩の下に枕を入れられ、喉が反り返るような体勢に整えられた。

あ、苦しいわ、これ。




常に声がカサカサで咳払いをしたくなるので、
この体勢は喉に更に負担がかかる。

でも、もう、既に文字通りのまな板の上の鯉。

お腹の上で手を重ね、目をきつく閉じた。

怖いな。。。
目開けるのも怖いけど、閉じとくのも怖い。

「ではこれから、エコーを当てていきますね〜」
(ぐりぐり。)

「ピンセットで軽く押さえますよ〜」
(探るようにチョイチョイと軽くあてがわれる。)

「じゃ、これから針を刺しますね〜。」

「唾は飲みこまないでくださいね〜」










そう言われると、
めっちゃ飲み込みたい気がしてきた。


(私は大人。。。)
(私は大人だもの。。。)
(大丈夫。唾は飲み込まなくても大丈夫。)

ひたすら自分の生理現象と戦いながら、針の検査が終わるまでやり過ごすことだけを考えていた。

その間、超極細そうな針を刺されている感覚はあるものの、痛みはほとんどない。

余裕やん。

別の医師が「では陰圧します。」と言う。
吸引されるのだな、と思った瞬間。

ずぅ〜〜〜〜〜〜ん

と、とても気持ちの悪い鈍痛のような感覚が広がった。

前言撤回

(唾は飲まない。)
(唾は飲まない。)
(だめ!絶対。)


気持ちの悪い軽い痛みと戦いながら、頭の中では如何に喉を動かさないで留めておくかに集中していた。

「陰圧解除〜」

「はい。楽にしてくださいね〜」

ゴクッ。

あぁ。終わった。
良かった。

緊張が解けた瞬間…

「じゃ。次はその下の、このあたりで」

年配の医師が指示を出す。


つ ぎ?(;゜Д゜)  あるの?


そのまま序盤の流れを繰り返し、今度は首の根元付近に針を刺す。

例のごとく唾は飲み込んではいけないらしく、

(唾は飲まない。)
(唾なんてない。)
(唾なんて知らない。)

自己暗示をかけた。

陰圧とやらをされたらもう。

筋肉注射をした時にずぅ〜〜〜〜〜んと広がる鈍い痛みに近い。

心拍数もあがりはじめる。

ドキドキドキドキが止まらない。

眉間に力が入る。


「はい、楽にしてください〜」


ゴクッ

(頑張った。私、頑張ったよ…お母さん)

ほっとしたのもつかの間。


「じゃ、次はその隣ね。」

年配医師の時の一声。


(((;°Д°;)))カタカタカタ






うそでしょ?聞いてない。聞いてない。

2回は許す。


3回は聞いてない。


でももう、エコーでぐりぐりされてるし

ピンセットでチョイチョイされてるし。

この後針でしょ?唾なんでしょ?

ゴクッ

先にのんだわよ。フン。

じっと耐える。


針を刺す痛みがあった。

え、、?  痛いかも。




え?痛いです。



ドキドキドキドキ

(陰圧中)


痛い〜〜〜〜〜(」゚Д゚)」

(陰圧解除)

「はい、楽にしてください」

終わった…。 _| ̄|○ il||li


あー。怖かった。


「じゃ。最後にここをもう1回」


年配医師の魔の囁きが聞こえた。


(ΦДΦ)カッ!!







思わず目を開けてしまった。

みんなで取り囲み。覗き込まれていた。

(。>﹏<。)キュッ

すぐに閉じる。



やだー。怖いーーーー。


マッドサイエンティスト達に何らかの施術をされる異星人を思い浮かべていた。


ゴクッ
ゴクッ

いつもより唾液が多く出始める。


お腹の上の手に力が入る。

ドキドキが止まらなすぎる。


(唾なんてない。)
(唾なんて知らない)
(今だけは!)
(いまだけは!!!)


「では針を刺しますね〜」

チカッ 

としたあと、針が進んでいく感覚がある。

皮膚とか、脂肪とか、筋肉を突破し、目的の細胞まで針が進んでいく鈍くて重たい痛みが広がる。



いーたーいーーよぉーーー(;´༎ຶٹ༎ຶ`)


閉じた目の横から涙が流れ出す。

(涙じゃないもん)
(これは私の勇気)


いや、4回目の痛さよ。
ズンズン痛い。
鈍く痛い。

既に3回も刺してるから、

「きっと細胞達が怒っている。」と思った。


そもそも4回は聞いてない。

あんのぉ白髪メガネ!!(年配医師)

毒が出始める。

(陰圧中)

ずぅ〜〜〜〜ん


はぁ?めっちゃ痛いし。
なにこれ。
痛いやん。

それも聞いてない。

怒りすら覚えだす。


(陰圧解除)

「はい、終わりましたよ〜楽になさってくださいね〜」

「消毒しますね。」

(なんかサワサワされている)

「絆創膏しときますね。」

(ペタッと貼られる)

「ゆっくりと起きてください。お疲れ様でした」

大きく深呼吸をして、

目を開け、起き上がると、やっぱりたくさんの医師たちに囲まれていた。

みんな私に集中していた。

そして気づいた。


研修医だな。







台から足を下ろすと緊張がとけて


「怖かった〜」心の声が漏れた。

みんながドッと笑った。

もしかしたら、その場にいた医師たちも、緊張していたのかな?と思った。

ありがとうございましたと、検査室をでる。

長い廊下を歩きながら


はは〜ん。さては。

謎は解けた。


研修医のために4回も針を刺したんだな。


と、辻褄のあうような適当な事に思い当たった。


喉は鈍く痛い。

手を当てると、絆創膏を貼られていた。

何はともあれ。

研修医のために身を捧げたわけだし、
十分に細胞取られたわけだし、
検査結果がでやすいだろうし。

白髪メガネは悪くない。

よし。
今日もお腹空いた。

帰ろう。


トイレに行き鏡を見ると、とても小さな小さな
絆創膏だった。


これだけあちこち刺されて

恐怖と痛みに耐えた証が

こんな小さな絆創膏なことが納得いかない気もする。


帰宅し、絆創膏を剥がすと、まったく針の跡もなく、

腫れたり内出血もない。


あの時間は幻だったのか?


UFOにさらわれた人達の気持ちが

少しわかった気がした。









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