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52ヘルツのクジラたち

映画館の新作映画のお知らせで流れ、
気になっていたので読んでみた。
また1冊読み終えられたので拍手!!パチパチパチ
というわけで読書感想を。

2020年に出版、
2021年本屋大賞受賞。
そして、
今年2024年3月映画化。

人の会話の周波数は250〜4000Hzと言われる。
人が感知できるのは200〜20000Hz。
数値が低いほど音が低い。
クジラのコミュニケーションはおよそ10〜39Hz。
1980年頃、
高周波の52Hzの声を出すクジラが発見された。
これが意味するところは、
このクジラの声に仲間が気づかないということ。
どれだけニアミスしていたとしても、
お互いが気づくことができないという。
このようなクジラは他にいないらしく
「世界でもっとも孤独な鯨」 と呼ばれているそうだ。
物語は、
まるで52Hzのクジラのように、
届けたい相手に声が届かず、
助けを求めたくても声が宙を彷徨うだけ、
この広い世界で孤独に埋もれている人たちのお話。


自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれる―。

読書メーターあらすじ より

愛されたい人からの愛を受けられず、
ただ理不尽な理由で消費され、
痛めつけられ、
罵声を浴びせられ、
孤独に追いやられる。
お前のせいだ。
お前さえいなければ。
精神を削られ、
体力を削られ、
身体を削られる。
やっと掴んだ愛情も、
ほんの少しの歪から、
いずれ大きな崩壊を招くことがある。
正常な判断ができず、
自分の価値を見いだせず。
いつしか、
自分が声を上げているのかどうかもわからなくなる。
自分が自分の声に気付かなくなる。


この物語は、
最初から内容が重く、
胸が締め付けられる。
やっと訪れたのかと思われる安寧な時間も、
すぐに覆されてしまう。
ほっと息つく間がない。
ただ有難いのは、
ちゃんと52Hzの声に耳を澄ませて受け止めてくれる人がいたということだ。
高校時代の友人。
自分を見つけ出し連れ出してくれた最愛の人。
自分を心から心配してくれる人。
手を差し伸べてくれる人。
自分の声を「聴いてくれる」人。
そういった人がいてくれて、
読者としても良かった。
決して綺麗事で終えることはできない事だけれど、暗闇の中に目指すべき光をさしてくれた。


貴瑚と、
愛と、
その二人へ惜しみない愛を注いでくれるすべての者に、
幸多からんことをと祈る。


余談。



52Hzのクジラの声は周波数が高く、
仲間へ声が届かないという。
このクジラは、
他のクジラの声は受け取れていなかったのだろうか。
受け取る声の周波数も52Hzと同等でないとダメなのだろうか。
他のクジラの声はたくさん聴こえるのに、
自分の言葉は届かないとなれば、
想像するだけで胸が苦しい。
ただ、

52ヘルツのクジラの生息地は広く、8月から12月の間は太平洋におり、その後は北アリューシャン諸島からアラスカ、そして南カルフォルニアの沿岸まで、一日30キロから70キロの速度で年間で最長約1万キロメートルを今も遊泳し続けている。

52ヘルツの鯨を追う!
『ザ・ロンリエスト・ホエール:ザ・サーチ・フォー 52』

このクジラは孤独だったのかもしれないが、
たくさんの場所を回っていて、
少しだけ楽しんでいたのかもしれない?
なんてことを想像した。


最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。

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