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〆はビールで

ある方の記事で、
ラーメン屋に入ったおじさんが、
餃子とビールとラーメンを頼み、
提供順番がラーメン→餃子→ビールだった、
というお話を読んだ。


おじさんは〆のビールに怒り、
若い店員は困惑していたという。

この話を読んで、
まず最初に頭に浮かんだのは、

ー 店舗内の教育が不足している

ということだろうか。

お酒を飲まない人間に、
お酒の提供順番の重要性などわからないだろう。
店舗側が教えるべきサービスだと思う。


もちろん、
ビールが先行、
まもなく2番手に餃子がきて、
ちょっと遅れてラーメン登場。

なんていうのはあくまでも一般論。

人によってはフードコート的に、
全品同時提供が好みかもしれないし、
〆ビールの人もいるかもしれない。

注文の時に聞くシステムか、
注文の時に言うシステムがあれば、
まだいいのかもしれない。

あ~でも、
そんなことイチイチ言わんでも「普通」わかるだろ!!
って怒鳴る客はいるかもしれない。

そんでもって、
「普通」ってなんですか?
誰の「普通」ですか?
誰が決めたんですか?
それカスハラですよ?
とか応戦するんだろうか。


どこまでするのがサービスなのか。


わたしも若い頃は接客業メインで、
ラーメン屋
とんかつ屋
居酒屋
就職はイタリアン・バールなど。


お酒の提供はホールの人がするので、
注文を受け、
キッチンへ注文を伝えると、
まずはドリンクの準備に取りかかる。
例えばその間に来店客があれば、
その手を止めて案内に行くだろうが、
すぐさまドリンク提供に戻る。
早くしないと料理が出てしまう。


上手い人なら料理の注文をわざとズラしたり、
調理場側がズラしてくれたり、
提供順番に合わせて提供してくれる。
そんな連携プレーが出来るときは、
たとえ忙しくても楽しく感じる。

話が逸れたが、
とにかくドリンク提供のスピードは命懸けなのだ。


わたしの苦い思い出。


イタリアン・バールでの出来事。
わたしは新入社員のペーペーで、
上司Sさんによく怒られていた。
わたしとSさんとの相性は悪く、
何かと目を付けられ怒られていた。
なぜ目を付けられたかというと、
歯向かうおバカがいるからだ。


ある日のディナータイム。
テーブルは埋まりつつあり、
忙しい時間を過ごしていた。
ドリンクやフードの提供が慌ただしく、
少し遅れ気味だった。
わたしはお客さんの案内・注文受注・ドリンクやフードの提供・お通しなどの用意・食器の下げなどが担当。
あるカップルが来店し、
注文を受けた。
ドリンクとチーズの盛り合わせ、
もしかしたら食事になるナニカも注文していただろうか。
とにかくドリンクは先行である。
ドリンクはバンコへ伝え用意してもらう。
わたしは残りの注文をキッチン側へ伝えると、
チーズの盛り合わせの準備に取りかかる。
たしか5種類くらいのチーズを木のプレートに盛っていたと思う。
塊のチーズを切り分け、
リコッタチーズはスプーンで形を整える。
割と手間取る一品なのだ。
そんな間にドリンクの準備が整って、
その場を離れてテーブルへ運ぶ。
戻るときに他のテーブルの空いた皿を下げたりしたかもしれない。
もしくは注文に呼ばれたかもしれない。
他のドリンクやら料理やらを運んだかもしれない。
とにかくチーズの盛り合わせ完成させられないのだ。
わたしは焦りを感じる。
ドリンクはとうに提供している。
チーズをつまみながら飲みたいだろうに、
他の料理が先行してしまった。


そんな最中、
予約の団体が来店。
10名以上はいただろうか。
一気にドリンクのオーダーが入る。
みんなで一斉に乾杯してもらうためにも、
ドリンクの準備はスピードが求められる。
Sさんに、
「ドリンク準備を手伝え」
と言われた。
いつもなら、そうするだろう。
でもこの時は違った。
『これだけ作ったら手伝います』
と断ったのだ。
「ここはいいから手伝え」
『これだけ待たせてるのでできません』
「もういい。お前帰れ!!」
そうしてSさんがドリンク準備を手伝いに行った。


わたしは涙をこらえるのに必死だった。
Sさんの指示を無視して、
とにかくチーズの盛り合わせを完成させ、
ようやくカップルの元へ提供できたときには、
グラスの底にわずかなドリンクが残ってるだけだった。


わたしはこの時の出来事を忘れられず、
ずっと正解がわからないでいた。


それから数年後のある日、
ベテランのサービスマンにこの時の話を聞いてもらったことがある。
そして言われたのは、
「料理提供が遅れることを、まずそのお客さんに伝えるべきだったね」と。
わたしは意地になっていて、
そこにお客さんの存在を忘れていたのだと気付いた。
やっと、
この時の嫌な記憶から開放された。
Sさんへの嫌な気持ちとか、
自分の情けない気持ちとか、
そんなところに答えはなく、
ちゃんと見るべき方向を教えてもらえたのだ。



わたしは裏の戦場を知っているので、
例え提供順番が希望と違っても、
多少のことは何とも思わない。
お客様は神様だ。
な~んておバカなカスタマーはぶった斬るとして、
サービスマンは料理提供に+αの価値を提供できると、
きっとお客も、
そして働く側も、
楽しい時間を過ごせるのではないかと思う。


最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。

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