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世界的な枠組を知ると、気候変動問題が身近になる 2

前回に引き続き、気候変動問題に関する世界的な枠組について、記事を書きます。

前回はUNFCCCとCOPでした。

おさらいです。UNFCCCって何でしたっけ?
そうです。United Nations Framework Convention on Climate Change。国連気候変動枠組条約ですね。

このUNFCCCの会議体がCOP(Conference of the Parties)。「締約国会議」です。

このCOPが毎年いろんな国で開催されているというわけです。因みに2023年のCOP28が最も近いものになります。これは中東のドバイで開催されました。

COP28の内容についてよくまとまっているサイトが有りましたので、詳しく知りたい方は以下のリンクを参照ください。

このCOP。
一躍世間の注目を浴びたのが、1997年に京都で開催されたCOP3です。このCOP3で採択されたのが有名な「京都議定書」です。

この名前はさすがに聞いたことがある方が多いと思います。

京都議定書はどういったものだったかを簡単に説明すると以下の通りです。

先進国に対して、1990年の排出レベルを基準にして、2008年から2012年の間に特定の温室効果ガスの排出量を平均で約5%削減することを義務付けました。

一方途上国には温室効果ガスの削減目標はなしとなります。これは「歴史的に排出してきた責任のある先進国が、最初に削減対策を行うべき」という気候変動枠組条約の合意が反映されたためです。

ただ、途上国は置いてけぼりということではなく、先進国が途上国で温室効果ガス排出削減の取り組みを共同で実施するクリーン開発メカニズム(CDM)が盛り込まれ、途上国も温室効果ガスの排出削減に貢献できる仕組みになっていました。

ですがこの京都議定書は早々に困難に直面します。

先ず途上国がこの京都議定書発効後、急激に経済成長を遂げていくことになります。そもそも途上国には温室効果ガスの削減目標はありませんので、彼らは優先度が高い経済成長を選択することとなります。

そんな中に2001年に排出量世界第2位のアメリカが京都議定書から離脱します。

2012年の当初削減目標を間近にした2011年。これでは目標達成なんか無理だということでカナダが離脱します。

ここに京都議定書は限界を迎えることなります。

これらの反省を踏まえて2015年。フランスはパリでCOP21が開催されることとなります。

このCOP21で採択されたのが「パリ協定」です。

このパリ協定では京都議定書に参加国の不公平感があったという反省を活かし、途上国を含む全ての参加国と地域に、2020 年以降の「GHG 削減・抑制目標」を定めることを求めました。

パリ協定の概要は以下の通りです。

・世界共通の長期目標として2℃目標の設定。1.5℃に抑える努力を追求すること
・主要排出国を含む全ての国が削減目標を5年ごとに提出・更新すること。
全ての国が共通かつ柔軟な方法で実施状況を報告し、レビューを受けること。
適応の長期目標の設定、各国の適応計画プロセスや行動の実施、適応報告書の提出と定期的更新。
イノベーションの重要性の位置付け。
・5年ごとに世界全体としての実施状況を検討する仕組み(グローバル・ストックテイク)。
先進国による資金の提供。これに加えて、途上国も自主的に資金を提供すること。
・二国間クレジット制度(JCM)も含めた市場メカニズムの活用

外務省HP https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page1w_000119.html

この一番上にある「世界共通の長期目標として2℃目標の設定。1.5℃に抑える努力を追求すること」

これがいわゆる1.5℃目標とか2℃目標と言われるものです。
そうですカーボンニュートラルに直結する目標値ですね。

ただこの時点でこの長期目標は科学的知見が乏しいとされていて、IPCCに特別報告書の作成を求めることになります。

また出てきましたね。聞き覚えのある用語。IPCC

Intergovernmental Panel on Climate Change の略で、「気候変動に関する政府間パネル」と呼ばれるものです。

このIPCCに、世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)により1988年に設立された政府間組織で、2021年8月現在、195の国と地域が参加しています。

IPCCの目的は、各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えることです。IPCCが直接研究を行っているわけでなく、世界中の科学者の協力の下、出版された文献(科学誌に掲載された論文等)に基づいて定期的に報告書を作成し、気候変動に関する最新の科学的知見の評価を提供しているのです。

したがって、特定の政策の提案はおこなわない「科学的中立性」を持っている組織とも言えます。

その科学的中立性を持ったIPCCは以下のように報告します。

「地球温暖化を 2 °C、またはそれ以上ではなく 1.5 °Cに抑制することに
は、あきらかな便益がある」
「1.5 °C未満に抑えるためには、世界のCO2 排出量を 2030 年には 2010 年比で 45% 削減し、2050 年前後にネットゼロを目指すことが必要」

IPCCによってパリ目標が科学的裏付けを得られたということですね。

ここから地球温暖化対策において1.5度目標、2度目標というものが世界的な基準となっていくわけです。

で、このパリ目標に則した温室効果ガスの科学的削減目標設定の助けになるのがSBT(Science Based Targets)となります。

SBTに関する記事はこちら

いかがでしょうか。

駆け足で気候変動問題に関する世界的な枠組みについてご紹介してきましたが、ご理解いただけましたか。

皆様のカーボンニュートラルに関する理解の一助になれれば幸いです。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。