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【エッセイ】八重山の海と海人|柔術家/歌手/海人の独り言 |文:渡辺直由@石垣島



八重山の海の魅力


八重山の魅力を誰かと語る時、やはり海は外せないのですが、そんな時に必ず話題になるのが石垣島(八重山)と宮古島と沖縄本島の離島や奄美大島、そして鹿児島以南の五島列島やトカラ列島など。

南の海でどこが1番美しく、観光地や漁場として魅力的か?と言う事です。

皆さんも経験ありますよね?

もちろんそれぞれに美しさや良さがあり順位など付けられないのですが、それでもやはり気になるところではあります。

そんなある日、私が石垣に移住して2年目で海人(漁師)の仕事を始めた頃でしょうか。ちょっとした疑問を持つことになります。

勉強のため海人や漁業関連の書籍を読み漁るうちに気付いたのが『八重山の海の本ばかりだな…』という事。

そんな好奇心から、その頃に知りあった博学な某先輩海人や某著名な海人の写真集や書籍を多数出版している方にこの事を質問してみたのですが、そこで一気に謎は解けました。

彼らは私に『八重山には日本最大の珊瑚礁群《石西礁湖》がある』と言う事を教えてくれたのです。

日本最大の珊瑚礁群《石西礁湖》

石垣島を1つの島として考えるのではなく八重山にある数々の離島を1つの島と考えると…、そのスケールの大きさに圧倒されます。

衛星写真で見るとよくわかるのですが、陸続きではないもののこの石西礁湖は珊瑚で繋がる巨大な1つの島なのです。

石西礁湖(せきせいしょうこ)の「石西」という部分は、石垣の「石」と西表の「西」から取られ竹富島、小浜島、黒島、新城島周辺海域を含む東西約20km、南北約15kmにわたって広がっています。

世界でも有数のこの珊瑚礁群を駆け、制覇してきた八重山の海人たちの技術や知識のレベルはそれはもう物凄くて、世界に誇れるものなのだと。だから本にもなるのだと言うことを聞いて知った時に、先輩海人たちの顔が次々に浮かんできて、ブワーっと鳥肌が立ち、色々な感情が押し寄せてちょっと涙が出そうでした。

その昔、今60〜80歳くらいの海人オジーたちが若かった頃の仕事の話を聞くとそれはもうクレイジーで、命がいくつあっても足りない、正しく戦場と言っていい過酷さでした。

潜水病(減圧症)の知識やダイビングコンピューターも無い時代、追い込み漁などでは最大80〜90メートルまで潜らされ短時間で浮上。あるオジーの話では、その仕事をやっていた数年の間に約10名いた仲間の半分が船の上で泡を吹いて亡くなり、他の仲間は長期の入院後、意識が戻ることなくお亡くなりになり、生き残ったのは2人だけだと言う壮絶な話をしてくれました。

他にも子供の頃からウェットスーツ無しで真冬の海に放り込まれて漁をさせられて溺れた話など、全て書くとめちゃくちゃ長くなるのでその話はまたいつか。

詳しくは八重山の海人関連の書籍や、今は絶版になったものも図書館にありますのでご興味がある方は是非お読みになってください。

八重山の海と海人


とにかく八重山の海と海人は本当に凄いんです。

しかし先述したように、もちろん他の離島の海や漁師も凄いですし、その地域独自の画期的で目からウロコの技術も多数あります。

ある捌くのが大変な魚を秒で捌く方法や、ある海産物の可食部分だけを抜き取る方法などなど。
※それらの幾つかは八重山以外から伝わったものもある。

海人の技術は企業秘密なので詳細は語れませんが、とにかく生き残るためにその土地土地で必死に知恵を絞って生き抜いた漁民の技術や魂は凄いんです。

私は新参者なので、なかなかこれらの秘密を簡単に教わる事は出来ませんが、もし島の方で家族や親戚に海人がいるのであれば、彼らが元気なうちにそれらの素晴らしい秘伝の技術や後世に残すべく貴重な昔話をしっかり聞いておく事をオススメします。

今回は八重山の海や、それに関わる人々がいかに素晴らしいかと言う話の
ほんの入口くらいのお話をさせていただきました。

続きはまたいつか。

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この記事を書いた人

渡辺直由(柔術家/歌手/海人)
1975年8月4日生まれ。東京都出身。19歳でメジャーレーベルから歌手デビュー。2004年に盟友早川光由と共にトライフォース柔術を創設。柔術世界選手権や欧州選手権、プロの舞台でも活躍。2011年に現役を退き憧れの八重山に移住。電灯潜り漁師(現在休業中)を経て2022年6月に美崎町にカラオケ&弾き語りバー《アームバー》をOPEN。現在も代表としてトライフォース石垣島支部で柔術クラスを持ち、後進の育成に努めている。
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