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富める市区町村の条件


▼全国平均より高い付加価値額かつ賃金を実現している市区町村は1719市区町村のうち36(実質34)

・GDPの55%を占める「消費支出」と15%を占める「企業設備」の原資となる1人当たり付加価値額で全国1719市区町村をランキングづけした上位が下の図表です(特別区分(23区)を1つとして計算)。
・赤マスは、全国平均より高い1人当たり付加価値額かつ1人当たり給与総額を実現している市区町村です。

出典:「令和3年経済センサス‐活動調査」統計局


▼富める市区町村の特徴

全国平均以上の1人当たり付加価値額かつ1人当たり給与総額を実現している市区町村の特徴は以下の通りです。

▽青森県六ケ所村:製造業が突出


▽熊本県菊陽町:製造業が突出(TSMC進出)


▽宮城県大和町:製造業が突出


▽山形県東根市:製造業が突出


▽東京都特別区部(23区):様々な業種が高いレベルで集まっている。但しサービス業の弱さが目立つ

▽愛知県豊田市:さすが「世界のToyota」。日本の100分の1の売上


▽長野県坂城町:製造業が突出


▽京都府長岡京市:製造業が突出


▽福岡県宮若市:製造業が突出


▽熊本県合志市:製造業が突出


▽京都府大山崎町:製造業が突出。規模は小さいが学術研究機関も



▽富山県船橋村:製造業が突出


▽山梨県韮崎市:製造業が突出


▽宮城県大衡村:製造業が圧倒的突出


▽静岡県吉田町:製造業が突出


▽長野県御代田町:製造業が圧倒的突出


▽大阪府池田市:製造業が突出


▽大阪府大阪市:大都市ゆえ、卸売小売や建設、金融も強い。23区と同じようにサービス業の弱さが目立つ


▽岐阜県輪之内町:製造業の他、運輸業も高い給与を実現


▽沖縄県八重瀬町:那覇市・糸満市・南条市に囲まれた有料老人ホームが充実?

▽大阪府門真市::製造業が突出


▽神奈川県厚木市:製造業が突出するも、学術研究も給与に貢献


▽福岡県苅田町:製造業が突出


▽東京都日野市:製造業が突出


▽北海道三笠市:大型医療法人が極めて高い付加価値額と給与を実現


▽愛知県東海市:製造業と大小の運輸業が高い給与に貢献


▽愛媛県四国中央市:卸売業・製造業が牽引


▽北海道標茶町:給与の根拠データ無いため集計間違いの可能性有り


▽佐賀県大町町:製造業が突出


▽長野県諏訪市:製造業が突出。規模は小さいが農協も給与に貢献


▽愛知県刈谷市:製造業が突出


▽愛知県知立市:製造業が突出


▽茨城県東海村:日本原子力研究開発機構など原子力施設集結


▽愛知県清須市:製造業が大きく貢献

▽新潟県聖龍町:製造業が突出


▽福島県浪江町:東日本大震災及び隣接の原発事故の特殊事情で建設業が突出

▼豊かにしている理由

▽豊かにしている理由は製造業が独占
36市区町村中、29市町村で製造業が突出し、高い付加価値額と給与を実現。


▽製造業の割合
1719市区町村のうち36市区町村のみで製造業の従業員の34.2%を占め、総売上の54.5%、付加価値額の47.6%、給与総額の43.5%を占める。

出典:「令和3年経済センサス‐活動調査」統計局

もっとも、36市区町村のうち愛知県の5市の合計だけで、製造業の従業員の33.7%を占め、総売上の53.6%、付加価値額の46.2%、給与総額の42.8%を占めるため、規模だけみると、愛知県の製造業が独占しています。

それでも、ほとんどの小さい市町村を豊かにしているのは製造業です。


▼23区と大阪市以外の大都市で、全国平均を上回れない理由は何か

▽全産業売上金額ベスト15市区町村
全国平均を上回る1人当たり付加価値額かつ給与総額実現しているのは、4市区だけ。(豊田市と刈谷市は製造業がその原因であることは前述の通り)
ほかの都市が、全国平均を上回れない理由は何か?

出典:「令和3年経済センサス‐活動調査」統計局

▽東京で高い付加価値額を生み出している業種

出典:「令和3年経済センサス‐活動調査」統計局

・従業員数に比し、2倍以上の高い付加価値を生み出している業種(赤業種)は、医療・福祉・金融・保険・学術研究、専門・技術サービス・情報通信(通信業・放送業等)・不動産業・電気ガス・物品賃貸。

こうした生産性の高い業種は、より良い付加価値ポジションを求め、東京に集まり、それが、さらに良い付加価値を生み出す土壌になっていくという、一極集中の連鎖で23区が豊かになっていると思われます。
同じような一極集中の現象が、西の最大都市で起こり大阪市を豊かにしているのではないでしょうか。
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裏を返せば、日本の人口的条件や地理的条件から、23区と大阪以外は、こうした一極集中サイクルを生み出せないとも言えます。

もっとも、九州や福岡などは自由な政策を展開できれば、世界的な小さな強国を模倣してより豊かになれる可能性があると考えます。
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▼富める市区町村の条件

・浪江町や東海村のような特殊事情を除いた、富める市区町村の条件は
❶製造業の誘致。特に重化学工業(化学・機械・金属)の生産性が高い
・愛知県:Toyota
・宮城県:東京エレクトロン、Toyota
・熊本県:TSMC
 
❷人口に多い市に面している場合、「大型」医療法人や介護施設の誘致
・北海道三笠市:大型医療法人
・沖縄県八重瀬町:有料老人ホーム

❸一極集中スパイラルを生み出せる大都市
・東京23区
・大阪市
一定の人口規模による需要を見込んだ集積類型が都市部を中心に出来上がっている。
出版や広告、デザイン、情報処理ビジネスの集積体である。
参考:「地域における産業集積の類型は大きく分けて5パターン」地域の経済2016内閣府
https://www5.cao.go.jp/j-j/cr/cr16/img/chr16_01-02-11h.html


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