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久しぶり。やっと帰るよ。

手紙を書こうと思った。今まで、何回か手紙を出したけれど、LINEでありがとうと言われるだけで君からの手紙での返事は無かったなと思う。それでも、最後に何らかの形で手紙を書こうを思った。

やっと帰国日を決めた。空港まで迎えに来てくれるみたいでありがとう。結構遠いのに。おかげで、自宅で隔離生活を送れるから助かるよ。ホテル代、2週間も払えるほど残金がないからね笑

実は最後に本当の手紙を書こうと思っていたんだ。帰国日まではあと一か月ほどあるけれど、この小さな町から本当に手紙を出すと、君の所へ着くのに一か月以上かかってしまって、僕が先に空港へ着いてしまうから、それはやめといた。僕はそっちの方が好きなんだけどな。

この春で、付き合いだしてから丸6年が経った。たぶん気が付いてないね笑。僕ら、そんな性格じゃないし、記念日なんてないから、どの日なのかも知らないよね。にしても、6年は長かったなー。

もしかしたら君の目に、僕は何かを目指しているように映っているかもしれないけど、まぁ、僕もそのつもりなのだけれど、時々、急にむなしくなって、自分がこれといった仕事もついていない無価値な人間に思えてくるんだ。何かを目指しているみたいな、そんな姿勢を周りに見せているだけの空っぽな人間に思えてくるんだ。僕が学生の時、僕が会社を辞めた時、僕がカナダに来た時でさえ、僕に「社会人かくあるべき」を説く人はいた。別に僕はそれを無視しているわけではないけれど、ただ、それに従う前に、まだ僕が自由である状態のときに経験したいことがあったんだ。ただ、僕は自分のわがままを通しているだけなんだ。

君が僕に「何かしてあげたい。何かあったら頼ってくれていい。」というけれど、君に何かしてもらえるほど、それに値するほど、僕は何かに取り組んだり逆境に立ち向かったりはしていない。ただ「自分の経験を積もう」なんていう理由で、気が付いたら労働経験の薄い30歳になってしまった。時々、それが本当に恐ろしくなって、なにか安心できるものを探すんだ。何か、何をすれば自分が安心できるのかを探し、その心を落ち着けるために何か、英語とかPHOTOSHOPとかを勉強して、自分はとりあえず前進していると安心するのだ。最近勉強を始めたなんていうと、君はすごいなんて言うけれど、ただ僕はからっぽな言い訳を探しているんだ。

君は僕の事を「すごい」と言ってくれる。でも僕からすれば、毎日早起きして仕事をして、安定してお金を稼いでいる君の方が、僕の到底手の届かない場所にいるように思える。海外に行くことなんて、航空券を買ってしまえばいいのだからね。

「何もしてあげられてない」と君は言った。勝手に遠くにいるのはいつも僕の方であり、恋愛において何もしていないのは僕の方である。フラフラしている身にとって、どこかに帰る場所があると思えるのは、かなり心強いものだから、君はそのままいいんだ。大学の友人から「フラフラ働くために年上を騙してリスクヘッジにしてる」とギャグじみた揶揄を言われたことがあるけど、最近の自分の金銭状況を思うに、その揶揄もあながち間違っていないと思えてしまって、少し申し訳なく思っている。帰ったら、仕事さがすから。

もうすぐ、日本に帰ります。会うまでに2回もコロナの検査をするし、そもそも飛行機が飛ぶのかとか、また新しい規制が出てこないかとか、本当に帰れる自信がないのだけれど、とりあえず、その日に、日本で会いましょう。1年半分、老けて帰ります。