繋がり

僕は大学生だが、特にサークルなどには所属していない。そのため、同じ学科の人間と、今一緒に暮らしている寮の人達以外との交流はほぼ皆無だ。
だが今月に入ってから、普段は僕の激狭コミュニティの外にいる人達、そして尚且つ初対面の人達と接する機会が増えた。多くの人と関わると、確かに疲れはするものの自分が人間であることを再認識できるというか、自分が生きている証みたいなものを感じることができるから、僕の乾き切った心が少し潤いを取り戻す。やはり適度な他者との交流は必須だ。
大学に入学した時以来久しぶりに触れた、目まぐるしくもありかつ新鮮で、体の内に暖かい木漏れ日が射したようなこの感じ、どこか懐かしい。なんてことを思いながらここ最近過ごしていたわけである。

そんな思いになった、人と接する機会を得た理由の一つとしてまず挙げられるのが、新しいアルバイトを始めたことだ。寮の先輩に紹介してもらい始めたこのアルバイト、始めたばかりということで、当たり前だが様々なことを覚えなければならない。仕事の内容ももちろんのこと、社員さんや他のアルバイトの人の顔と名前、その店の雰囲気や周りの人間関係、細かい所で言えばロッカーの場所や使い方、家から店までの道順や所要時間など... 考え出せばキリがないが、人の顔と名前が覚えられず、大学入学当初に学科のグループLINEを頻繁に開いては名前とプロフィール写真を繰り返し見比べ照らし合わせて必死に覚えようとした経験のある僕にとって、一気に新しく物事を覚えなければならない場面は労力を必要とするから頭を使うし出来れば極力避けたいくらい。

ただアルバイトに関しては、これまでも2回ほど同様の経験はしてきているからそこまで目新しい事案というわけではない。
じゃあ逆に目新しい事案として何があったのかというと、今月は少しばかりではあるが、あるサークルの活動に携わらせていただいたのだ。これが人と接する機会を得た理由の二つ目として挙げられるものなのであるが、寮の先輩が所属している映画サークルでの映像撮影のお手伝いをさせていただいたのである。アルバイトもサークルどちらも寮の先輩が絡んでいるが、僕の元々のコミュニティがほとんど寮しかないのだからそれは必然と言えば必然なのである、、、まあそんなことは置いておいて。以前もほんの少しだけ手伝いを頼まれたことがあったので一応知っている人もいることにはいたのだが、キャストやスタッフの方の中には他大学からいらしている方も何人かいて、6割ほどは初対面であった。丁度同学年の学生が多いこともあり、数日顔を合わせる中である程度の会話を交わし、友達とまではいかなくとも最低限大学ですれ違ったらお互い「あっ!」って反応するくらいの仲にはなれた、と勝手に思っている。作品の都合上キャストは女性の方が多く、あまり女性との会話に慣れていない僕からすればかなりアウェイな現場ではあったが、なんとか上手くやり切れた。先述の通り、実際僕はサークルに所属しているわけではないので映像やカメラ、マイクなどの知識は全くと言っていいほどない。そのため手伝いと言っても荷物持ちや簡単な補佐といった雑用がメインではあるのだが、サークルを毛嫌いしつつも集団での活動にどこか憧れを抱いていた僕にとって、今回の体験は非常に新鮮で貴重で、とても充実していた。なんか新米ADって感じだったし、普通に楽しかった。まあキャストの女性陣がみんな可愛かったからっていうのもあるかもしれない(笑)。

僕は言うならば部外者で、何も責任がないからこんな気楽にいられるけれど、寮の先輩をはじめサークルやキャストの方々は僕の何十、何百倍も大変で苦労して体力気力をすり減らして撮影に臨んでいたと思う。一つの作品を創り上げるためには、僕が計り知れないほどの困難が待ち伏せているはずだが、壁を乗り越えた分だけそれと同等、いやそれ以上の達成感、充実感も得られるはずである。そんなことを感じるからこそ、形はどうあれ一つの作品に真剣に向き合っている人はかっこよく見え羨ましく思えるんだろう。僕も大学生のうちに何かできないかなぁ...なんて少し考えて、その思いを頭の片隅にそっと据え置く、そんなある晴れた春の深夜3時。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?