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経営者の月末

経営者にとって、月末は特別だ。
多くの会社は、月末に現金が動く。
待ち遠しいと思う時もあれば、恐怖を感じる時もある。
今回は、経営者の月末について書き綴っていく。


締日と支払日

多くの会社には、締日と支払日がある。
取引件数が多くなって来ると請求書に対して、その都度、銀行振込をするのが非効率的だからだ。

例えば、多くの会社は取引先から来た請求書を月末で締め切って、集計する。
そして、翌月末に支払いをする。
これが「月末締め、翌月末払い」というルールだ。

私の周りには、月末払いが多い。
その次に多いのは、5日払い、25日払い。
今回の記事では「月末=支払日」を前提とする。

現金が足らないという恐怖

月末締めの場合、月の終わりに取引先へ請求書を送る。
多くの仕事をこなし、たくさんの請求をした月は、来月が待ち遠しい。
来月末には、多くの現金が入金されるからだ。

自社から請求書を送るのと同時に、自社が支払うべき請求書が届く。
月末締めの場合、月の初めに先月分の請求を締める。
そして、月末に支払う必要がある金額が確定する。

「請求した金額 > 支払う金額」であれば、その月は現金が増える。
しかし、「請求した金額 < 支払う金額」であれば、その月は現金が減る。
現金が増えるのに限界はないが、現金が減るのには限界がある。
現金のマイナスはありえないからだ。

月末に現金がマイナスになることが判明する。
これこそが経営者にとって、最大級の恐怖だ。

眠れない。
胃が痛い。
しかし、何とかしないと会社は倒産する。
まさに、ギリギリまで追い込まれた状況だ。

この状況を体験する経営者は多い。
よほど恵まれた起業をしたか、よほど優秀な経営者でない限り、残念ながらこの体験をすることになる。
経営というのは、苦しい時は本当に苦しい。

火事場のクソ力を出せるか?

「現金が足らない」という状況に追い込まれた時、「火事場のクソ力」を出せる経営者がいる。
出せない経営者なら、会社は倒産だ。

「火事場のクソ力」を出せる経営者は、ピンチを切り抜ける。

・銀行から早急に融資を受ける
・取引先への支払に猶予をもらう
・取引先から入金を早めてもらう
・すぐに現金が手に入る仕事を獲得する
・新たな契約を獲得し、前受け金をもらう

方法は様々だ。
しかし、普段は絶対にしない引け目を感じることも実行する必要がある。
強力なメンタルがなければ、「火事場のクソ力」は出ない。

絶望的なピンチがもたらすもの

一度「火事場のクソ力」を出した経営者は、必ず強くなる。
死にかけた状態から回復して急成長する「サイヤ人」のようなイメージだ。

現金が足らないというピンチを乗り越えた経営者は、本気で学習をする。
二度と同じ経験をしたくないからだ。

例えば

・キャッシュフローを可能な限り先まで予測する
・最低3か月分の運転資金を現金で持つ
・普段からの銀行との付き合いを大切にする
・税金を覚悟して、現金を来期に持ち越す
・取引先のピンチに対して、手を差し伸べる

経営を続けて3回も「火事場のクソ力」を出す経験をすれば、起業前とは「もはや別人」だ。
屈強なメンタルが構築され、自分の「火事場のクソ力」を信じられるようになる。

私の経験上、「火事場のクソ力」と「人との付き合い」が経営者のピンチを救う。

私の会社が最初に倒産しかけた時の話

私の場合、会社が4期目に起こった。
3期目に大きな仕事を獲得し、調子に乗って新しいオフィスをつくった。
それで現金が無くなった。

驚くべきことに、現金はそれほど持っていないのに、3期の税金が異常に高かった。
当時の私は「減価償却」というルールを知らなかったからだ。
その期に支払った金額は、全てその期の経費になると勘違いしていた。
持っている現金以上に税金が課されることなど、想像もしていなかった。
黒字で倒産など、ありえないと思っていた。

全ては、当時25歳の無知な私に原因があった。
「火事場のクソ力」を経て、何とかピンチを切り抜けた後、私は学習した。

・大きな買い物は慎重にする
・大きな買い物を決定する前に税理士へ相談する
・会計と税金の勉強する
・月次で業績を把握する
・取引先の締日と支払日を把握する
・キャッシュフローを強く意識する

おそらく、一度痛い目に遭わなければ、私は学習をしなかったと思う。
その後も何度も痛い目に遭って、学習をした。
そして、今も痛い目に遭いながら、学習を続けている。


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