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デザイナーと店舗商売

先ほどフリーランスのデザイナーと打ち合わせをした。
その中で「店舗商売をはじめる」という話を聞いた。
実は、デザイナーが店舗商売をはじめるというケースは多い。
そして、残念ながら、続かないことが殆どだ。
今回は、この辺りのことを書き綴っていく。


デザイナーと店舗デザイン

店舗デザインを専門とする会社が「モデルショップ」として店舗商売を始めるケースがある。
このパターンは、まだ良い。
赤字でなければ、店舗運営を継続をする価値がある。
実際には、若干の赤字なら、広告費だと思って飲み込むケースが殆どだろう。

しかし、現実には、店舗デザインを生業としていないデザイナーも店舗商売を始めたがる傾向にある。

そんなデザイナーの話を聞いていて、私が感じること。
それは「デザインの力」を過大評価している傾向が強いということ。
そして、その「デザインの力」に夢を見て、店舗商売をはじめることが多い。

デザインの力

デザインの力を甘く見てはいけない。
「印象」の多くは、デザインで決まる。
デザインの良し悪しで売上は変わる。
経営者として、そこを甘く見てはいけない。

しかし「デザイン」という仕事は、幅が広い。

・どんなコンセプトでデザインをするか?
・どんなニーズ、欲求を刺激するものか?
・どんな属性の人に刺さるデザインにするか?
・どんな印象が欲しいのか?
・どんなキャッチフレーズ、文章を利用するか?

など、ザっと挙げただけでもキリがないくらいある。

上記項目が「デザインの成果物と結果」に対して、大きく影響することは言うまでもない。
しかし、店舗商売をはじめるデザイナーは、上記項目に対して、どの程度コミットしているだろうか?

経営の力

当たり前だが、店舗商売を続けて行くのは「経営」だ。
これは「幅が広い」というレベルの話でなく、もはや「全容が見えない」というレベルの複雑さがある。

――― その中においては、デザインは1枚のパズルピース

店舗デザインが重要なピースであることは間違いない。
しかし、1枚のピースで勝負ができるほど「店舗運営」は甘くない。
だから「初版のパズル」が完成する前に閉店するデザイナーズショップが多いのだと思う。

そもそも、店舗商売を経営する上で最低限必要なピースは以下の通り。

・商品に関わる知識
・商品のクオリティ
・仕入先、外注先の選定と確保
・店舗運営のノウハウ
・商品および店舗のリピート力
・店舗運営ルールの開発
・店舗運営スタッフの確保と教育

これに加えて、事務、労務、経理、資金調達、財務なども必要となる。

当たり前の話だが、これらの項目は「デザインの力」によって、免除されることはない。
これらをカバーするのは「経営の力」ということになる。

デザインの力を借りる時

デザインの力は、販売量をブーストさせる潜在力を持っている。
これは、たしかだ。

しかし、経営上、この力を取り入れるまでには、順番とタイミングがある。

まず、商品力。
短期目線でも、長期目線でも、これが一番重要だ。
デザインの力は、商品力をブーストさせるものではない。
一瞬、商品を売る火種にはなるかもしれないが、「経営」という目線から考えると一過性の焼け石だ。

次に、店舗運営の基礎が固まっていること。
最前線で働くのは、店舗運営スタッフだ。

あとは、資金繰りに余裕があること。
ここまで最低限の準備が整う。
デザインの力を借りるのはここからだ。

商品力がなければ、リピート購入はされない。
リピート購入がされない場合は、自転車操業が始まる。
店舗運営が固まっていなければ、販売量は増やせない。
クレームに至る可能性すらある。
資金繰りに余裕がなければ、販売量を加速させた時に資金がショートする。
そもそも、デザインに予算を確保できないかもしれない。

――― 販売量をブーストさせる準備は整ったか?

これが、デザインの力を借りる時の判断基準だ。


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