あまりに現実が酷すぎるので少し脳を休ませたくなった。

そんな時にはマーベル映画でも・・とか言って、まだちゃんと観ていなかった「アベンジャーズ」を観る事にした。

何しろここ最近は深刻な歴史のドキュメンタリーばかり観ていたので「現実も深刻」な上に「観ているものも深刻」が続き過ぎるのはさすがに辛い。

【アベンジャーズ】

今更ながらとにかくお金がかかっているアベンジャーズ。
日本特撮の「作り手との共犯関係」なんてものは感じられず、とにかくリアルなアクションシーンが続く。

リアルになるほど原作の「ヒーローのデザイン」や「戦い方」に違和感が出てくる。
何しろ「コスプレ感」がすごい。

その違和感に対して登場人物たちが巧みに「セルフ突っ込み」を入れ「なるほどそれもありだな」と思わせてくれる。

特に時代遅れ感のすごい「キャプテン・アメリカ」は「みんなが求めている古き良き時代の象徴」としてあえて「あの感じ」でいくのだ、みたいにされてて面白い。

観ている人達がシラフになって「何そのマント？いるのそのマスク？」とか突っ込みたくなるポイントを「もぐら叩き」みたいに論破していく映画でもある。

【論破の人】

そんな時。自称「論破がすごい人」が「ホームレスの命はどうでもいい」とか言って大批判を浴びていたらしい。

彼に救われた人達や彼を応援していた人達が気の毒になるけど、
「臭くて邪魔なホームレス」より「可愛そうな猫」を助けたい、とか言っていたらしいので、批判されるのは当然だろう。

とはいえ本質的な問題は「このレベルの言説が売れてしまう国の問題」かと思う。

「勝てばいい」「可愛ければいい」「金があればいい」という近年の風潮が生み出した想像力の欠如した哀れな思想だ。

僕のアシスタントが昔「自分は敵にも色々ある、みたいなのが嫌いなんですよ」と言っていたのを思い出す。

相手の人生を想像する余裕がないくらい追い詰められている人達が多い、というのもあるだろう。

とにかく近代資本主義社会という世界は「勝つしかない」世界なのだ。

そんなわけで「アベンジャーズの話」に戻ろう。

詳しく全てのキャラを知っているわけではないのだけど、映画を観る限り「アベンジャーズ」に出てくるスーパーヒーローはみんな苦悩している。
そして問題の解決には「勝つしかないのだ」とか「力が必要なのだ」とかいう結論に至った人達が多い。

つまりアベンジャーズのヒーロー達は近代の人達が選んだ道で戦っているので基本的には件の「猫を助けたい男」と似ている。

でも大事な点はこの映画のテーマが「そんな風に自分１人で戦っていてもダメだから協力しよう」という所だろう。

「マーベルヒーロー夢のコラボ企画」ではあるのだけど、そもそもそれぞれが「孤高の戦い」をしていた人達なので、簡単に協力なんかしてしまったら（前作も含めて）リアリティがなくなってしまう。

なので結果的に「それぞれ力はあるけれど自分とは違う相手といかに協力していくか？」というテーマが映画の中心になっていくのが面白い。

【チャンク最強説】

そんなわけで「力があればいい」「勝てばいい」みたいな単純な言説がもてはやされる「競争の時代」が限界に来ている今、次はどうすればいいのか？みたいな事を見せてくれるのがアベンジャーズだった。

（今の所２作目の「エイジ・オブ・ウルトロン」までしか観てないのでそんな印象）

とはいえこの問題に関してはこの前にヤンサンでやった「グーニーズ」が素晴らしい結論を出している。

「結果主義」や「勝利至上主義」が過剰になると人はバカになるし孤独になる。
あげくの果てに「ホームレスの命はいらない」などと優生学みたいな闇に落ちてしまう。

結論から言えば「愛情不足からくる病」だろう。「使えないヤツは生きる価値がない」と言われて育ったのかもしれない。

そういう病には「グーニーズ」が効く。

グーニーズでは普段「使えないヤツ」と言われている「チャンク」がみんなを救うことになる。

しかもチャンクは「醜く利用価値がない存在として軟禁されていた人」と協力して仲間を救うのだ。

この世界観は「可愛い猫を助けて臭いホームレスを切り捨てる」という世界とは反対の世界だ。

ある意味「チャンク」は最強のヒーローだろう。

【コンテンツに宿る力】

毎度同じ話になるけど、コンテンツの良さは時代のクリエイター達が残した「哲学」や「美意識」みたいなものを時空を超えて伝えていけるいう所につきる。

それは瞬間的にもてはやされる「過激な言説」や「お得情報」なんかより深い所で僕らを支えてくれる。

長く愛される絵本や小説なども同じだろう。

そんな作品を残して死にたいと思う。

そして「そんな作品」を見つけたらあなたに教えたいと思ってます。

そんなわけで、大変な時代ですが猫もおっさんも海もアニメも腸内細菌も大切です。

あなたも大切です。

今週も体に気を付けてくださいね。

山田玲司