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アメリカの経済が強い訳

今株価が調整してるのはインフレが下げ止まり、利下げ時期が遠のき、長期金利が上がってるから。インフレが下がらないのは米経済が予想以上にしぶとく強いから。経済はいつ停滞し始めるのか?利下げはどうなるのか?今日は24年の米経済、インフレ、金利の予想をしてみる。

これは先週の配信中にフォロワーさんが送ってくれたBloombergの記事。

IMFは米経済が強いのはバイデンの財政赤字を無視した無謀な国家支出のせいで、これは世界の金融市場を不安定にしかねない、と痛烈に批判した。

世界各国で経済が停滞する中、いまだに元気な米経済までもが停滞したら世界経済も困るだろうとは思うけど、それでも警鐘を鳴らすのはかなり心配しているからだろう。

それもそのはず。不況でない時にここまでの財政赤字を容認したのは過去に例がない。コロナ禍の20年と21年の財政赤字が2.5兆ドルを超えたのはしょうがないとして、経済が強かった23年に1.7兆ドルの赤字は酷い。

リーマンショック後の数年間でさえ、1.5兆ドルは超えなかなったのに。

百歩譲って、23年は不況が予想されていたし、予算はそんなに急激に変えられないから正当化できても、24年はさらにまずい。まだ6ヶ月しか経っていないのに税制赤字がすでに1兆ドルを超えてる。

CBO(Congressional Budget Office)によると、24年度(アメリカの財政年度は10月始まり)の財政赤字は1.6兆ドルの予定。

でも財務省の毎月のデータを見ると、今年3月の時点で昨年度3月の累計赤字をすでに超えてる(去年は1.7兆ドルの赤字)ので、このままだったら1.6兆ドルを軽く超えそう。

今日

これだけ使ってれば経済も伸びるよね、と思う。

バイデンが大統領になってから施行された法律でお金をばら撒いていると言われているのは通称で:

  • Inflation Reduction Act (IRA)

  • Infrastructure Bill

  • Chips Act

IRAはインフレに対抗するための様々なインセンティブを盛り込んだ法律なんだけど、その中にガソリンや電気代の高騰を防ぐために再生可能エネルギーへの設備投資に出す補助金がかなり含まれていて、8910億ドルの支出予算のうち、7830億ドルがクリーンエネルギーと気候変動対策に割り当てられている(1年ではなくて今後10年で使う額)。

Infrastructure Billは道路や橋を直したり、列車、空港、港などを建設したり、直したりする法律。予想支出は4400億ドル。

Chips Actは高度な半導体がアメリカで製造できるように、研究や設備投資にお金を出す法律。つい最近もIntelが85億ドルの補助金を政府からもらえる決定があった。

他にもコロナ禍の後にできたBuild Back Better Act もあるし、最高裁で違法だとされたのに、バイデンはいまだに学生ローンの免除を施行しようとしている。

それもこれも、バイデンが再選するために好景気を維持して投票者の人気を得る、という思惑があることは間違いない。

つまり、簡略化して言うと、パウエルがいくら金利を上げてもバイデンがお金をばら撒くので金融引き締めの効果が相殺されている状態なんだと思う。

さらに、一昔前に比べて、アメリカ経済の経済構造はかなり金利に鈍くなったと思う。製造業に比べてサービス業やソフトウェア企業は設備投資が圧倒的に少なくて済む。結果、借金が少ない。

GOOG, NVDAやMETAに至ってはさらにフリーキャッシュフローも豊富なので、現金と短期証券の残高の方が借金残高より高い。つまり、金利が上がるとさらに儲かると言う立ち位置にいる。

経済構造上、高金利が経済に与えられる影響の威力が弱まっている中、経済に直接働きかける財政政策がお金を使いまくれば、経済が停滞しないのも、蓋を開けてみればごもっともなんだけど、それを予想できた経済学者は一人もいなかった。

あまりの財政赤字の暴走ぶりに米財政の破綻や米ドルが基軸通貨ではなくなる可能性を心配する人もいるけど、実は私はそこはあまり心配してない。ドルにとって変われる通貨が他にないから。ドルは酷いけど、他よりはまし、という状態。

それより株投資家として心配なのは、もし米経済が不況にならずに持ち堪えているのは財政赤字垂れ流しのおかげだとしたら、この椅子取りゲームの音楽が止まったらどうなるのか、ということ。

その時までにインフレがちゃんと2%前半くらいまで下がり、すでに金利が下がっていればおそらくそれほど問題はないかもしれない。だからパウエルは利下げを驚くほど急いでいるのかも。

さらに、早く金利が下がってくれないと国債の金利のせいで財政赤字はさらに悪くなる。だから金利高止まりは困るのだ。

まさかスタグフレーションの始まり?

そうこうしているうちに、もしインフレが高止まりしたまま、経済が停滞したらどうなるのか?それが株投資家がもっとも恐れるスタグフレーションというもの。

スタグとはスタグナントの省略で経済の停滞を意味する。つまりスタグフレーションとは経済は停滞してるのにインフレが下がらない状態。

今日(25日)アメリカでは1 QのGDPのデータが発表された。GDP成長率はコンセンサス予想の2.5%を大幅に下回る1.6%だった。

ただし、この数字は輸入が予想より多かったり、在庫がマイナス成長するなど、実際の経済成長には実は逆に働く項目が悪かったせいで成長率が落ちただけなので、心配する必要はないという経済学者の分析を聞いた。

それより心配なのは1QのコアPCEプライスが予想の3.4%よりかなり高い3.7%だったこと。

これは1月2月3月と3ヶ月分データに入っている。もしアップサイドサプライズが全て3月に来たのだとしたら(1月2月がレビジョンで数字が上がったのではなく)、明日の3月のPCEデータはかなりまずいことになりそう。

逆に、1月2月のレビジョンで3月は予想通りならGOOGとMSFTの決算も良かったし、株は大丈夫かもしれない。

とにかく、今日のGDPデータは経済は思ったより弱く、インフレは思ったより高い、というスタグフレーションのデータだったのだ。

でも株価は私が朝データを見て「やば!」と思ったよりずっと下げなかった。しかもMETAが会場前15%も下げていたのに。QQQは一日中ゆっくりと朝の下げを解消していった。

これは株価の底強さ、市場参加者のリスクへの貪欲さを示してると私は感じた。

2024年はどうなる?

ここ最近の例にもれず、今年もFed Fund Futuresはことごとく予想を外してる。実際はFed Fund Futuresの予想の真逆になっている。

今年の年初は計7回も利下げが織り込まれていた。コンセンサスはまだ利下げが1回か2回織り込まれてるけど、私はもう今年は利下げはないと腹を括った。

それは株には悪いことか?私はそうとは思わない。利下げができない理由が経済が強い→インフレが下がらない、であるかぎり。

経済がいざ不況になる、という予想が色濃くなってきたら利下げの確率は確実に上がる。でもその場合、株価は下がると思う。

だから、利下げがない、は実は強気シグナルだと私は思ってる。

さらに、CBOによると、2025年の予算はなんと2024年の驚きの1.6兆ドルをさらに超えて1.8兆ドルになるらしい。それなら椅子取りゲームの音楽はしばらくは止まらない。

4月から始まったこの調整が去年の8月9月10月のように数ヶ月続くのか、それとも4月だけ下げて5月からまた上昇を続けるのかは経済とインフレと企業決算次第。

肌感覚ではアメリカ経済は全く停滞していない。今週末行ってきたテキサスの高級スパリゾートも満室だったし、たくさんのWharton卒業生が集まった。経済が停滞してたらあんなにたくさん集まらないだろう。

よって私は引き続き、CNNのFear & Greed IndexとVIXを見ながら、Buy the dipの戦略を貫く予定。


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