走れ、自分の想いより先へ。
ハイエースを運転しながら
運転席にて
ひたすらに前を向いていた。久しぶりの運転なのもあるが、耳の奥にこびりついてしまった声を振り払いたい気持ちも強い。
「ここにいる」と言ったのは、誰なのか。考えても答えが出ないのはわかるものの、どうして応えなかったのかも、自分では分かっていた。
ただ単純に怖かったのだ。感覚としては、それだけ。でも、理論的には答えが出ない。自分が自分に問いかけたとでもいうのか。それなら、なぜ、いまはその問いかけが続いていないのか、説明できない自分に苛立ちを感じた。
ププーッ。
後ろの車のクラクションで、ハッと我に帰る。あぁ、信号が青になっていたのか。追い抜いていく車の窓から、知らない男が不機嫌そうに、こちらを見て、口を動かしている。異様に寄せられた相手の車、視線をするりと前にずらして、無視をした。
ププーッ、という音と「ここにいますか?」という問いかけが、わたしの頭の中でぐじゃぐじゃと音を立てて混ざっていく。
気持ち悪いな、と思った。
カップ置きに残しておいた缶の半分くらいこレッドブルを、ゴクゴクと飲み干す。喉がパチパチと爆ぜるのが気持ちよかった。
「置いていこう。それが正解」
バックミラーのわたしが嗤う。
それでも前へ。
不快な思いより、不安な想いより
「その先しか見えないから」
わたしは、さっきより少しだけ強くアクセルを踏み込んだ。
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