SLR運動を再考する
勝手に名づけている再考シリーズ。
今回はStraight Leg Raising(以下:SLR)について書いていきます。
SLRの特徴として
・背臥位のままできるので、術後早期より行える。
・難易度が低いため、自主トレとして指導しやすい。
・とくに高齢者における廃用の進行予防に寄与する。
があります。
そんな運動だからこそ、患者さんに対し1日1回は必ず指導する場面があると思います。
今この記事を読んでいるあなたも、ただ何となく指導するのではなく目的にあわせてやり方を変えていきましょう。
SLRの目的
SLRの目的として
①筋力強化
②体幹の安定性評価の1つ
③ハムストリングスを中心としたストレッチ
があげられます。
筋力強化については後ほど書きますので②③について簡単に書いていきます。
・体幹の安定性評価の1つ
体幹の安定性評価の1つとして
Active SLR test(自動下肢伸展挙上テスト)があります。
これは、仙腸関節由来の疼痛や骨盤の安定性に対する荷重伝達障害を疑う際にスクリーニングの1つとして行います。
内容としては、下肢を動かす際の先行的な骨盤帯周囲筋の活動を見ていくものになります。
やり方として、下肢挙上の際の
・体幹や骨盤の動揺
・下肢の重さや努力感
を評価していきます。
その際に左右差があれば
上記のように圧迫することで、各筋の働きを補助し、どこの機能低下が原因で体幹の不安定性が起きているのかを推測していきます。
・ハムストリングスを中心としたストレッチ
これについては、臨床上よく行っているのではないでしょうか。
選択的な筋肉のストレッチ方法として
・SLR+股関節内旋:半腱、半膜様筋
・SLR+股関節外旋:大腿二頭筋
と書かれている文献などもありますが
2015年に発表された論文によると、上記方法では選択的に筋肉を伸張できていない可能性があるとの報告がなされています。
あくまでも1つの参考としつつ、SLRでのやり方ではなくダイレクトストレッチを行っていってもいいでしょう。
SLRの筋活動
SLRは体幹筋や股関節屈筋、膝関節伸筋の筋活動が必要になります。
教科書的には大腿四頭筋などの筋力増強手段として書かれていることがありますが、個人的には腸腰筋の筋力強化として選択することが多いです。
理由として、筋活動で考えた場合大腿四頭筋の中でも大腿直筋が優位に働くからです。
論文を読んでみても
・内側広筋よりも大腿直筋の筋活動が高い。
・SLRの負荷を増加しても内側広筋の筋活動は少なく、大腿直筋のみが大きく増加する。
との報告があります。
このように大腿直筋を優位に鍛えていくということは臨床上あまりないため、このような目的ではやりません。
ただし術後早期における廃用の進行予防もかねて、大腿四頭筋を賦活させる目的で指導したりはしています。
さらに下肢の挙上角度によっても筋活動に違いがあり、
挙上角度が上がると大腿直筋より腸腰筋が賦活しやすくなります。
このように、SLR運動を行う際は腸腰筋の筋力強化として選択することが多いです。
SLRの注意点
学生さんや新人セラピストでよく見かけますが、「股関節疾患にはSLRだ!!」と思っている人へ。
このような研究があります。
つまり、SLR運動は股関節への力学的負荷が大きいので、股関節疾患(Hip OAや股関節周囲の骨折で免荷が必要な方など)+痛みがある人(急性期など)に対しては第1選択肢として行いません。
そもそも、そのような状態だとSLRはレバーアームが長いため、下肢を持ち上げるだけでも苦労しますしね。
そういう場合まずは
背臥位にて膝立て(レバーアームを短くする)で片足を持ち上げる練習からやっていきます。
これでも患者さんたちは様々な代償動作(腰椎の伸展や骨盤の回旋etc)を行ってきますので、しっかりと観察していきましょう。
さらにもう1つ!
腰痛や圧迫骨折などの腰部疾患の方に対しては、挙上する側と反対の下肢を立てることで腰部への負担を軽減させることができます。
そんなの当たり前に知ってるよ!という方もいるでしょうが、意外に見落としてしまっていることもあるためもう1度見直してみましょう。
まとめ
今回は臨床でもよく用いられるSLR運動について書いていきました。
難易度が低く汎用性の高い運動だからこそ、筋活動や股関節へかかる負荷を考慮しながら行うことが大事になります。
それぞれの目的にあわせて色々と工夫していきましょう。
ちなみにその他の再考シリーズはこちら↓
①ブリッジ運動を再考する
②パテラセッティングを再考する
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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