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W&Sオープン1回戦 ティアフォー VS マレー マッチレビュー

自己紹

初めまして、安藤正也と申します。
現在は筑波大学大学院にて主にコーチング、スポーツアナリティクスについて学んでいます。昨年までは競技テニスをプレーしていました。以前からスポーツ観戦が好きで、特にテニスは勉強も兼ねて毎日のように見ていたのですが、最近アウトプットの重要性を感じており、自身の勉強の意味も含めてマッチレビューを書けるときは書いていこうと思います。テニス以外ですと、プロ野球、MLB、Jリーグ、海外サッカーを毎日のように見ています。
宜しくお願い致します。

試合のポイント

今回取り上げる試合はWestern & Southern Openのシングルス1回戦、フランシス・ティアフォーVSアンディ・マレーになります。
本来なら毎年シンシナティで行われているこの大会。今年はコロナの影響で、翌週から行われる全米オープンと同じニューヨークでの開催となり、同時にATPツアーの再開初戦となりました。


今大会がATPツアー再開初戦となるため、両者共に再開後初の実戦となります。
2人の最後の公式戦は、ティアフォーは3月のチャレンジャー大会、マレーは昨年11月のデビスカップでのオランダ戦となります。
両者共にツアー中断期間にエキシビションマッチには出場していますが本格的な実戦復帰はこの大会からになります。
次週に控える全米オープンに向けても両者共に勝利が欲しい一戦です。
過去の対戦はなくこの対戦が初対戦となります。

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https://www.atptour.com/en/players/atp-head-2-head/f.-tiafoe-vs-a.-murray/td51/mc10

1st Set

マレーのサービスから試合がスタート。
序盤はお互いの盤石なサービスキープによって試合が進みます。
ティアフォーは強打による攻撃的なプレーでの試合の支配を狙う。一方のマレーは長くラリーを続け、ティアフォーを揺さぶることでティアフォーのミスを引き出すことを狙いました。
特に2人のプレーの意図が顕著に表れていたのはセカンドサービスに対するリターンでした。2人共にコート内に入ってリターンを打っているものの、ティアフォーはよりポジションを上げリターンを強打しているのに対し、マレーはリターンを深くに返球し、まずは相手の攻撃を封じてその後のラリーでの勝負に持ち込もうとしました。
リターンのポジションデータからもティアフォーがよりポジションが前であることがわかります。画像上がマレー、下がティアフォー。

キャプチャ

https://www.atptour.com/en/scores/2020/422/MS057/second-screen?isLive=false&set=0&tab=ReturnPosition

キャプチャ

https://www.atptour.com/en/scores/2020/422/MS057/second-screen?isLive=false&set=0&tab=ReturnPosition

しかし、序盤はティアフォーは攻めてのミス、マレーは少し浅く入ってしまい、攻撃されてしまう事が多く、なかなかブレークチャンスは訪れません。また、両者のサービスゲームでのゲームメイクが良かったとも言えます。
攻めのティアフォーVS守りのマレーという構図で試合が進みます。
両者ブレークポイントを与えることなく、5-5までゲームは進み、このゲームでティアフォーはリターンからの攻撃でポイントを取り、この試合初のブレークポイントを握りますが、マレーがサービスで凌ぎタイブレークに突入します。
タイブレークでは先にマレーがダブルフォルトでミニブレークを許し、ティアフォーに6-5でセットポイントが訪れますが、ここでティアフォーのストロークにミスが立て続けにミスが出てしまい、ここを見逃さなかったマレーが最後はパッシングショットを決めて8-6でタイブレークを制します。
スタッツからもティアフォーがより攻めていたことがわかります。
また、マレーの1stサービスの確率が53%と低いです。
スタッツ上で結果を左右する大きな差が見られたというよりはタイブレークでの数ポイントが1stセットの結果を左右したのではないでしょうか。

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2nd Set

攻めのティアフォーVS守りのマレーという構図は変わりません。しかし、1stセットよりオープンなゲーム展開となります。
2-2で迎えたティアフォーサーブでマレーがスライス等を混ぜてラリーで揺さぶりをかけて、ティアフォーのミスを引き出し、ブレークポイントを迎えます。ここでティアフォーは強力なサービスからより攻撃的にプレーしキープに成功します。
今度は逆にティアフォーにチャンスが訪れます。このゲームでマレーの1stサービスは高い確率で入っていたものの、ティアフォーは攻めの姿勢を崩しません。特に、30-30でマレーのワイドへの1stサービスをクロスにリターンエース。そしてブレークポイントではマレーの狙いとするロングラリーに持ち込まれたものの、最後はボレーを決めてこの日初のブレークを奪います。
そして次のサービスゲームをきっちりキープし、ティアフォーが6-3でセカンドセットを取ります。
ティアフォーはストロークの攻撃の中にも、マレーのポジション、体勢を見てドロップショットやネットプレーを織り交ぜて効果的にプレーしました。
ウィナーの差がティアフォーが15に対し、マレーが2と大きな差が出ました。また、マレーの1stサービスの確率が45%と更に下がりました。そして入ってもポイント獲得率が50%とマレーはファーストサービスに課題の残るセカンドセットとなりました。

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Final Set

勝負のファイナルセット、いきなりゲームが動きます。
マレーがキープし1-0で迎えたティアフォーのサービスゲームでティアフォーが3本フォアのミスを犯し、0-40とマレーに大きなチャンスが訪れます。ティアフォーが2本凌ぎ30-40。ここで、マレーがティアフォーの攻めを耐え、ロングラリーが続き、最後はティアフォーがオープンコートへのフォアボレーをミスしマレーがブレーク。
このゲームでは、しぶとくラリーを続けることで、ティアフォーにより厳しいコースを狙わせてミスを誘う。リターン、ストロークをを深く返球することで、ティアフォーの無理な攻めをさせてミスを引き出すといったこの試合でのマレーの狙いが効果的に働きました。マレーがこの試合初のブレークを奪いました。
更にここからマレーのプレーがより攻撃的になり一気に畳みかけます。
マレーから4-1で迎えたティアフォーのサービスゲームでは30-40とマレーに再びブレークチャンスが訪れます。ここでリターンエース。決定的な2ブレーク目を奪います。
そして、5-1で迎えたサービスゲームでは、サービスエースやサービス&ボレーを見せてより攻撃的にプレーし、ラブゲームでキープ。
7-6(6) 3-6 6-1でマレーが勝利しました。
マレーは1stサービスの確率も53%と回復し、ポイント獲得率では1stサービス、2ndサービス共にティアフォーを上回りました。
一方のティアフォーはアンフォースドエラーが49とマレーの23を大きく上回ってしまいました。
攻めのティアフォーの方が走行距離が長いという少し意外な結果となりました。

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まとめ

両者の良いプレーが多く出た試合となりましたが、Final Setではマレーが元世界1位の試合巧者ぶりをみせて勝利しました。特にブレークしてからのプレーは圧巻でした。
試合のハイライト動画はこちらになります。


マレーは2回戦で第5シードのアレクサンダーズべレフと対戦します。
本人も「いいテストになる」と述べており、怪我からの復帰途上にあるマレーがトップ選手であるズべレフにどういったプレーをするか注目です。
試合は日本時間25日の早朝に行われる予定です。
是非ご覧ください。




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