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永遠に美しく…という病

恋がしたい…という病はどうやら一過性のもので収束を迎えそうだ。しかし、こちらの病は一向に収まりそうにない。ずいぶん長患いなうえ、最近ますます熱を帯びている。
数年前のとある夜。
風呂上がりすっぴんでふと覗いた鏡に、知らないおじさんがいた。いや、正しくは知っているおじさんがいた。
「…ぅお、お父さん?お久しぶりですっ!」
って違うやろ!
そこには父親そっくりの自分の姿が。
ヒイッ…。
膝から崩れ落ちるよね〜。
あ〜あ、私はおばさんじゃなくておじさんになってしまうのか?ジェンダーレスだね。いや、せめておばさんになりたい!!
こうして謎に低め設定の目標を掲げ、アンチエイジングという魔の扉をズババババーンと開いてしまったのである。
まず始めに手を出したのは、ゴム製で口まわりの筋肉を鍛える器具。「羊たちの沈黙」でレクター博士が咬まされてるみたいなやつね。歳とると、顔の下半身が要なのよ。
1日数分咥え、よだれを垂れ流しながらたるみに対抗。そして別アプローチとして、ナンタラ波で肌を引き締める美顔器。清水からバンジーするくらいはお高めのやつ。
さらにレチノールやら幹細胞やらプラセンタやらの美容液にクリーム。
手当たり次第、夢芝居…。
節操なんて情緒は私にない!
SSKT(シミシワくすみたるみ)全包囲網。
しかし、いちばん消し去りたい顔の左のほうれい線は、ドーンと鎮座したまま。世界大紀行、グレートリフトバレーここにあり。
そして、はたとわき出る疑惑…。
これもはや家庭の医学では施しようがないんじゃ…。
注入か?注入しかないのか?
ここまで来たら止められない。
さかりのついたおじさんおばさんは、ついに美容皮膚科の門を叩いた。
若干ビビって、カウンセリングという名目で予約したが、いざとなればやってやるぜという意気込みだ。しかし。
なんかな…セレブ臭漏れ出るクリニックで、場違い感が半端ないのだが…。
そして個室に入り、出てきた女医が,これまたものすごい美女である。
カウンセリングシートなるものを見ながら、私の顔をちらと見る美貌の女医。
「左のほうれい線…そうね、元々あった口角のシワと頬のたるみがつながっちゃったみたいね。」
…つながっちゃいましたか。やっちまったな!
「だけど…。」
女医のクールな視線に血圧が急上昇。
「エラが張ってる方が気になるかしら。」
な、な、な、なんと〜〜〜〜〜?!
ほうれい線ばっか気にしてエラはスルーだったよ。
エラスルー。ドライブスルーちゃうで!
え?なに?私、エラ張ってんの?いつから?前から?どこから?小刻みにパニック。
まさかストイックに鍛えすぎてエラがマッチョに??
「それとここのシミね。」
シミもですかぁ〜?それは申し訳ないですぅ〜。
ねぇ、何か女医に地味にディスられてますけども!
そんなこんなで、パコッと心が折れまして。
そそくさと逃げ帰りました。
カウンセリング以上、注入未満の意気地無し。
その日から、レクター博士の器具は封印。
二度と日の目をみることはありませんでしたとさ。
だけど冷静になると、やっぱりプロの目は確かなわけで。
自分は気になるところだけしか見えてないけど、美人女医は全体を見てたわけよね、なにごともバランスよね。そうよねと自らを奮い立たせ、ひとまずエラを引っ込める作戦にシフトチェンジ。
柔軟性あるのが私の長所とばかりの尻軽さ。
そして、セルフ頬骨矯正始めました。
ぐぎぎぎぃ…ぐぬぬぬふぅ…とエラと格闘する日々。
皮肉にも元手0、灯台元暗しのこの手法がいちばん効いているような気がするのはまやかしか?
女医のアドバイス、プライスレス!
いやしかし、まだまだ道のりは長い。だって人生100年なんでしょ?ドナドナだね。
永遠に美しく…とはいかなくとも、そこそこに美しくありたいという下心も女の業か?
病みは続くよ、どこまでも。







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