悪口を言っただけで殺される時もある
私の母方の祖父は長野県諏訪の生まれです。
祖父は早くに父親が病死したので、母親に連れられて東京へ出てきました。
私が小二のとき、終戦直後の東京に住んでいた祖父の狭い家に行ったことがありますが、その周りはまだ焼け跡があちこちに残っていました。
もう60に近かった祖父は、特技や職能を持たず、ろくな仕事もしていなかったらしく、みじめな生活をしていました。
私の母はその祖父の次女で、私が幼稚園に行く前から私に「うちには緋縅(ひおどし)の鎧があった!ナギナタがあった!」などとやや意味不明の実家の自慢話をいつも私に言っていました。
「うちの先祖は木曽義仲よ」などと言って絵本を買ってきてくれたりしたころもありましたが、そんな大昔の話なんか子供の私には何の興味もありませんでした。
後に私がブラジルの日系集団地に住むようになってから、いろいろな人と知り合いになりましたが、一人だけ私の母によく似た"家系自慢”の婦人と出会いました。
不自賛毀他戒。
これは「富士山来たかい / ふじさんきたかい」と覚えます。
「自慢ばかりして人を悪く言うことを禁じる」という意味の仏教の戒律です。
その婦人は長野県中野市出身で、私も中野市の名前だけは知っていましたが、先日起きた事件(※↓)で中野市のことを久々に耳にしました。
犯人は殺害理由で「自分の悪口を言っていると思ったから」と言っていましたが、山国では「山の向こうには鬼がいる」と思うそうで、性格的には閉鎖的、排他的になり、自賛毀他(じさんきた)傾向の人が多いらしく、自分を善人だと信じ込んでいる人ほど、人の悪口ばかり言うようです。
寒冷の中で貧しく育つと劣等感から毀他傾向になるらしいですが、暑くて食べ物の豊かなブラジルでは、そういう陰湿なタイプの人に私はこれまで出会うことはありませんでした。
しかし、ブラジルの殺人は年におよそ8万人で、そのほとんどが金欲しさです。
日本での殺人はここ数年、年間200人台で、そのほとんどは怨恨、嫉妬、怒り、それから原因不可解といいますから、日伯両国の間には大きな隔たりがあります。
「人が何を考えているかがもし分かったら、親でも裸足で逃げていく」
暁烏敏
(あけがらす はや / 真宗大谷派の僧侶 1877 - 1954 )
【今日の名言】
「人の不幸は良いおかず 隣の不幸は鴨の味」
「人間は“私はあの人より幸福だ”と思いたい性質を持っているので、他人の不幸を喜ぶ」
「自分は幸せだと感じている人だけが、他人に親切に出来る」
=悪口を言わない、人の不幸を喜ばない、他人に親切に出来る・・・それが幸せの道なのである。
※編集協力
和の国チャンネル
p.s.
赤い鎧は「赤備え」といって、武田信玄や真田幸村で有名ですね。田附さんのお母様のご先祖は誇り高き武田家の家臣だったのでしょうか……。
お読みになって頂きありがとうございます。宜しくお願い申し上げます。