見出し画像

『The Yin and Yang of Gerry Lopez ジェリー・ロペスの陰と陽』から

ジェリー・ロペス
Gerry Lopez

名前は、聞いたことがあった。
あとは、サーファー界のレジェンドということは知っていたくらい。

YouTubeで、彼の半生を描いたフィルムが無料で公開されているよ、とにかく観てごらんよと言われて、めずらしく素直にその提案にのっかり、昨夜、観たところだ。

『The Yin and Yaing of Gerry Lopez ジェリー・ロペスの陰と陽』 パタゴニアフィルムズ 2022

このドキュメンタリー映画、気に入った。

久しぶりに体感を伴う映像だったんだ。
私はサーフィンをしないし、やったこともない。
ボディボードを浮き輪代わりにつかまって、波打ち際を漂うくらい。

だから、サーファー達のいう、「特別すぎる最高の体験」というのがどんなものか知らない。

だけど、この映像からは、それが伝わってくるんだ。
その特別な体験が。

ハワイイのノースショアといったら、私でも知っているくらいの、とてつもない高さの波で有名な海だ。

あの地で、波がつくるおそろしいチューブの中を、何というか、まるで、育った作物のできを眺めるファーマーのような穏やかさで、ボードに乗っているジェリーがいるのだ。

作品の中で、彼自身も言っている。
「ボードの上で止まっているように見えるだろうけど、その逆で、本当はとんでもない速さで動いているんだ」

これが、タイトルにある陰と陽に繋がる。
ジェリーはヨガに精通していて、その哲学をサーフィンで体現しているのだ。

動と静
激しさと穏やかさ
その中庸こそ、あのモーメントなんだろう。
作中で、何度も、波とひとつになる、と語っていた。それは、よし波に乗ろう、よく乗れている、などという意識下では、決して実現しないのだ。

だから、彼はメディテーションをしていた。
最高に興奮するようなコンペティションで、まさに波に乗らんとする、その直前に、砂浜で。

その対極の世界観が、映像の随所に現れ、そしてその究極が、サーフィンのシーンだと感じた。

残念だな、語るほど、映像からえた体感から遠のく。
もう、言葉にするのはやめておこう。

パタゴニアらしい、彼らだから作れたドキュメンタリー映画だったと思う。

いい作品は、いつもほんの少し、私を前に動かす。