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仕事がデキるメカニズム

前回までに生産性の話をしたが、それはどちらかというと一つの仕事に取り組むときにどうやるか、という話だった。
今回は、1~3年くらいのもう少し長いスパンで、バリューのある仕事をするために意識していることを書こうと思う。

仕事デキるポイントは4つ

"仕事がデキる"のメカニズムを、4つのポイントで捉えている。

1)インプット:知識・経験・ノウハウを自分に蓄える工程。
2)プロセス:インプットを処理する工程。
3)アウトプット:プロセス(処理)した結果を他者にわかる形で表現する工程。
4)スタンス:ふわっとしているが、その人の人となりとか価値観とか。インプット・プロセス・アウトプットにゆるやかに影響を与える(と思う)

図にするとこんな構造だ。

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それぞれの項目について次項以降で詳しく説明する。

インプット

前回までに生産性についての記事の中で述べているインプットとは意味が若干異なるので先に補足しておく。

生産性の議論での"インプット"は、自分が投下する時間・労力を意味していたが、、ここでは自分に入ってくる情報をインプットと呼ぶことにする。
PCでいうと、ハードディスクに格納したデータに当たる。

インプットを増やすには、主に
1)座学
2)On the Job Training(OJT); 仕事を通じて体得するスキル・経験
3)仕事外での経験
の3がある。

1)座学

本を読んだりセミナーに参加したりするのが主な方法だと思う。

僕は新卒入社で営業をやるつもりでリクルートに入社したが、入社式の日にウェブマーケティングの仕事をする事を知らされた。その時、ウェブマーケティングはおろかマーケティングの事など全く知らなかった。
部長に
「UUってなんですか?」
と平然と聞いてしまっていた。
ちなみにUUはユニークユーザーの事だ(みんな知ってるよね、、、)。

これはやばいと思って、ビジネス書を大量に読んだ。20代の頃は1週間に一冊のペースで本を読んだ(多くないとか言わないで)。

2)OJT

少なくとも毎日8時間×週5で仕事をしているのだから、仕事を通じて得るインプット量はとても多い。そして、仕事を通じて得たインプットは血肉になりやすい。

リクルートでウェブマーケテイングの仕事を通じて得た経験・スキル・考え方は、コンサルティングの仕事をしている今でもとても活きている。特にデジタルマーケティング関連のコンサルティングは、頭がいいかどうかだけでなく、知ってるかどうかも大事なので、現場経験があると格段に仕事がしやすい(このツールはこういう事ができて、こういう癖があって、、、とか、この会社は○○で、、、とか、こういうケースはこういう風に対処するとよい、とか)。

そして、僕がリクルートを辞めてアクセンチュアに転職した理由の一つでもあるが、とにかく色々な業界やテーマに関わって引き出しを増やしたいと思ってアクセンチュアの経営コンサル部門に転職した。製造業、小売業、通信業、金融業等の様々な業界のクライアントを相手に、事業計画を作ったり、組織設計をしたり、業務プロセス改革をしたり、ITシステムの概要設計をしたり、、、、色々なテーマの仕事を経験することができた。

そして「やっぱマーケティングしたいわ」と思い、今はAccenture Interactiveでマーケティングコンサルタントとして働いているが、マーケティングど真ん中以外の経験・スキルが活きる場面は多い。マーケティングのデータを分析するときには過去のデータ分析・プログラミングの経験が、マーケティング活動が売上・利益にどう影響を与えるかのシミュレーションを作る際には事業計画を作った経験が、マーケティング活動を円滑に進めるためにはどうしたらいいか?というお題に対しては組織・設計や業務プロセス設計の経験が活きる。

"マーケテイングは経営アジェンダ"という考え方が日本でも近年広まってきているが、その流れの中で、マーケティングの実務経験と、経営コンサルティングの経験が20代で出来た事は運が良かったと思う。

3)仕事外での経験

仕事内容に依るかも知らないが、少なくともコンサルタントやマーケティングの仕事においては、成果を出すには人間としての幅が必要だなと思う。

コンサルタントの観点では、地頭が良くてロジカルなだけではクライアントを動かす事はできない。コンサルタントは芸人のような職業で、目の前にいるクライアントを動かしてなんぼなのだ。コンサルティングファームである経営共創基盤のパートナーの塩野誠氏も以下のように述べている(ちなみにこの記事もめっちゃいいこと書いているのでぜひ読んでほしい)。

個人的に、コンサルタントはバイネームで売れなければならない、芸人のような存在だと思います。常に魅力的かつ新しいコンセプトを示し続け、予定が分刻みに詰まったCEOに「この人の話を15分聞かなきゃいけないな」と思わせる人が、プロフェッショナルとして活躍しています。

ちなみに、昔、担当していたクライアントに新規事業の事業計画を提案した時に
頭いいのはわかるんだけど君、面白くないんだよな
と言われて提案が全く刺さらずに泣いた事がある。それが悔しくて、それまでは本を読んだり勉強したりばかりしていたが、それだけではだめだなと思い、人間としての幅を出すためにはどうしたらいいのだろうかと考え始めるようになった。

「人間としての幅って何?」と言われると、正直僕の中にも明確な答えがあるわけではないが、とりあえず好奇心を忘れずに、色々な事にチャレンジする事、そしてそこで経験した事や感じた事の意味を考える事が大事だと思う。一見仕事と全然関係ない事でも、解釈次第では仕事と共通する部分があったりする。そして、そこに仕事上の課題の解決の糸口があることもある。
前述の記事の中で、塩野氏も以下のように述べている。

一種のジャーナリスト気質を持っていることです。好奇心を持ち、「人生はすべて取材のようなものだ」と思える人は、苦しい局面も自分の糧にできますね。したがって、学生の皆さんの中でも、知的好奇心を持ち続けられる人はコンサルタント向きだと思います。

マーケティングの観点では、当然ながら世の中のトレンドだったり、生活者が日々どんな気持ちでどんな事を考えながら過ごしているのかを知ったり想像したりする事が極めて重要なのは言うまでもない。仕事ばかりしているとその感覚を忘れてしまうので、時折、一生活者の感覚に浸ることが必要だ。そう言い聞かせて、僕は一ミリも面白いと思わないTikTokを見ている。。。。これが面白いと思えないという事はおじさんになって来ているんだなと思うが、それは仕方ないし、それを実感する事が大事だと思うようにしている。

プロセス

プロセスは、インプットを処理する工程だ。

どんなにいいインプットがあったとしても、適切に処理できなければ宝の持ち腐れになってしまう。このプロセス力が高ければインプットを効率的に得ることができる。同じ経験・仕事・読書をしたとしても、それをどう処理(解釈)するかで、有用なインプットとして自分の血肉にすることができるかどうかが決まるからだ。

そして、処理した結果が微妙だと、それをどんなに取り繕ってアウトプットしても結局無価値なものになってしまう。

なのでプロセスはとても重要な工程だ。
PCでいうとCPUのイメージ。

プロセス力は
1)地頭のよさ
2)処理スキル
の2つで決まると思う。

1)地頭のよさ

これはもう生まれ持ったものなのでどうしようもない。世の中には、とんでもなく頭がいい人・才能に溢れた人というのがいる(その逆も然り)。僕も、学生時代や社会人になってから何人かそういう人達に出会ってきた。恨めしいけどどうしようもない。

しかし、それで諦めるのではなく、自分の地頭のレベルを理解した上で、足りない地頭をインプットで補うのか、後述する処理スキルで補うのか、といった事を考える事が重要だ。

2)処理スキル

処理スキルとは、インプットを処理する技だ。地頭の良さをさらに活かすために、もしくは地頭がそんなに良くなくてもそれをリカバリーするためには、この処理スキルが欠かせない。

データ分析でPythonが使える、エクセル仕事がとんでもなく早い、といった”業務スキル”と、ロジカルシンキングや論点思考・仮説思考といった”考え方のスキル”がある。
PCでいうとアプリケーションに当たる。

処理スキルは、知識や経験の獲得を通じて形成される(たまに天性の才能でやってのける忌々しい人たちもいるが)。つまり、インプットがスキルとして血肉になる。インプットとの境目が難しいが、なんとなく"知ってる"→"できる"になったものはスキルだと思っている。

地頭はどうしようもないが、処理スキルはインプットの努力次第で身につけることができる

アウトプット

ここでの"アウトプット"は、プロセスで処理した内容を表現する工程だ。
「伝え方が9割」という本でも述べられているが、伝え方は本当に大事。

どんなにたくさんインプットがあっても、どんなに素晴らしい処理をしたとしても、結局受け手はアウトプットの結果を通じてしか、あなたの仕事の価値を認識できない。

アウトプット力(=伝え方・表現の力)、具体的には、例えば資料作成やプレゼンテーションのうまさは重要だ。
PCでいうとユーザーインターフェースに当たる。

アウトプットにも、天性の才能を持つ人がいる。カリスマ性とかオーラがある人だ。個人的にイケメン・美女もこれに入ると思う。イケメンってだけでなんかいい感じに受け止められてる事あるよね、、、、羨ましい。そういう意味では身だしなみもアウトプット力の一つなのかもしれない。

しかし、このアウトプット力も、インプットを通じて鍛える事ができる

僕は資料作成スキルを身につけるために、資料作成関連の本も大量に読んだ。資料のストーリー構成を考えるのはロジカルシンキングが必要なので、ロジカルシンキングの本もアウトプット力を鍛えるのに役立った(バーバラ・ミントの「考える技術・書く技術 」という本はわかりにくいが名著)。

そしてプレゼンテーション力を上げるために、僕は今ボイストレーニングに通っている(ネタかと思われるかもしれないが大真面目だ)。

ある日、仕事でミーティングで他の人が発表をしていた。その人の発表を聞いて、みんな「うんうん」と感心したように頷いていた。僕もそう感じたが、議事録を書いていたので手元のメモを見返してよくよく考えてみると、当たり前の事しか言っていない。
あれ?普通の事を言っていても、いい声で滑舌良くハキハキ話していたら、いい内容に聞こえてくるんじゃないか?
と思った。

少なくとも、その裏は正しかろうと思った。ボソボソ声だったり早口だったり、いわゆる"えーあー症候群"(話の最中に「えー」とか「あー」とかを頻発する事)だったりすると、どんなにいい内容でも全く頭に入ってこない。

そこで僕はその日に「プレゼンテーション ボイトレ」とググって、ボイストレーニングのスクール「青山ヴォイス・メイクアップアカデミー」に入会した。ちなみに、当時仕事で一時的に地方に住んでいたのでそこのスクールに入会したが。今は東京に戻ったので、Skypeで授業を受けている。

スタンス

スタンスはその人の人となりとか価値観とか。具体的に言えば、ガッツがあるとか、素直とか、そういった部分だ。このスタンス次第で、インプット・プロセス・アウトプットの成長スピードが決まると思う。

スタンスは10代~20代までの間にどんなインプットがあったかでほぼ決まると思う。個人的に、思春期の過ごし方と新卒一社目の会社に大きく影響されると思っている。20代以降、スタンスを変える事は通常ではかなり難しい。意識的にできている人は優秀な人が多い。

まとめ: 全ての出発点はインプットから

インプット、プロセス、アウトプット、スタンスについてそれぞれ述べたが、まとめるとこんな感じのイメージだ。

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そして、見てわかるように全ての出発点はインプットだ。ではどんなインプットを、どんな順番でやればいいのだろうか?個人的には以下の順番がいいんじゃないかと思っている。

①考え方のスキルが身につくインプット
②業務知識と業務スキルが身につくインプット
③アウトプット力が身につくインプット

①考え方のスキルが身につくインプット

インプットをこれからどんどんしていく上で、まずはそのインプットを処理するプロセス力を身につける事が肝だ。僕は以下の数式でイメージしている。

血肉として残るインプット
= (これまでに獲得したインプット + 今回新たに得たインプット)
× プロセス力

これまでに獲得したインプットと、今回新たに得たインプットが点と点で繋がる時がある。一見関係ないような事柄でも、解釈次第では共通点が見出せる時がある。そういう経験ができると、物事の本質的な理解が深まる。それができる人は、プロセス力>1だし、できない人(インプット同士の相乗効果がない人)はプロセス力=1だし、間違った理解をしてしまう人はプロセス力が<1なんだと思う。

以上から、下図のようにプロセス力は複利で効くので、いかに早いタイミングでプロセス力を身につけるかが、”仕事がデキる”人になる上でもっとも鍵になる。

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そして、プロセス力のうち地頭はいじりようがないので、処理スキルを鍛えるしかない。さらに処理スキルは考え方のスキルと個別の業務スキルに大別されるが、考え方のスキルは様々なインプットに汎用的に使えるので、真っ先に体得すべきだ

②業務知識と業務スキルが身につくインプット

考え方のスキルが身についたら、それを活かすために業務知識のインプットと業務スキルのインプットを増やそう。いいアウトプットをするにも、中身がないと始まらないからだ。これは知識とスキルは両輪で伸ばすのが効率がいいと思う(業務知識と業務スキルの境目が曖昧、というか自分の中でもまだ綺麗に整理できていないからというのもある。これはもし綺麗に整理できたら更新したいと思う)。

③アウトプット力が身につくインプット

そして最後にアウトプット力を伸ばすインプット。これは資料作成やプレゼンテーションの仕方の本などを読んだり、「この人の資料わかりやすいな」と思うものをパクったりすればいいと思う。プレゼンだったらTEDを見るのもいいと思う。

ボイトレはもう自己満足の領域というか、月謝も安いわけではないので万人におすすめできない。それでも僕はコスパの良い投資だと思っているが。

また、補足すると、インプットのパートで述べたが、全ての経験がインプットになりうるので、「この経験はインプット、プロセス、アウトプット、スタンスのどれに紐づけたらいいだろうか」と考える事が重要なので、上記の順番はあくまでも「意識的にインプットするなら、こういう優先順位だよ」くらいに思っておいて欲しい。

最後に:おすすめの本

考え方

アウトプット(資料作成)

スタンス


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