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施設入居のはなし

あなたは自分の家で最期を迎えたいと思いますか?

「なるべく家で面倒みたい」
「最期まで家で過ごさせてあげたい」
そう思っているご家族もたくさんいると思います。
ずっと過ごしてきた家で最期を迎えられたら、幸せかもしれません。
でも、それだけが幸せの道ではないとも思います。
介護生活は、時間が経てば経つほどご家族の負担が増えていくからです。

負担が増えても家で介護を続ける人もいますが、仕事や子育て、家族関係などに支障が出てしまい、家での介護を続けられなくなる人もいます。
家で介護を続けられなくなった人は、大体自分を責めてしまいます。

「私がもっと頑張れたら」
「同じような状態でも家で面倒みている人もいるのに」
施設入居の当日、ご本人を部屋まで見送ったあと、そう言って泣いてしまうご家族を何人も見てきました。
他のご家族やケアマネージャーさんと何度も話し合った結果の施設入居だったとしても、日頃どんなに大変な思いをしていたとしても、ご本人とあまり関係が良くなかったとしても、いざ施設入居となると後悔してしまうんですよね。
コロナ禍に施設入居を決めたご家族は、感染症対策で面会が制限されていたため、特にそういう気持ちが強かったと思います。

一方で、ご本人が施設でどんな様子なのか気になりますよね。
その人のタイプによって、すぐに友達ができて楽しく過ごせるようになる場合と、馴染むまでに時間がかかってしまう場合があります。
どちらの場合でも、職員さんが様子を見ながら声をかけたりしてくれるので安心してくださいね。
気になるようであれば、面会などで施設に行ったときに、生活相談員さんや介護の職員さんに声をかけると日頃の様子を聞かせてくれたりしますし、不安なことがあればきちんと話を聞いて対応してくれます。

入居したばかりの頃、家に帰りたがる人はとても多いです。
普段穏やかに過ごしている人でも、帰宅欲求が強くなってしまうと泣いてしまったり、顔つきや口調が変わって大声を出したり暴れてしまうことがあります。

私が働いていた介護施設でも、家に帰りたいのに職員にとめられて強硬手段に出てしまったケースがありました。
押し車で玄関の自動ドアをこじ開けて外に出ようとしたり。
持っている携帯電話で警察に「閉じ込められている」と通報したり。
武器(そのときはホウキでした)を持って倉庫に立てこもったり。
2階に部屋がある場合、エレベーターや階段のドアが開くたびに走って乗り込もうとしたり。
職員に手をあげたり、出入り口や窓を破壊してしまったケースもありました。

これから施設入居を考えている人は、これを読んで不安になってしまうかもしれませんが、施設の職員さんはプロなのできちんと対応してくれますし、必要に応じてご家族に連絡も入れてくれます。
安心しておまかせして大丈夫ですよ。

入居してしばらくすると、ご家族も日常の生活を取り戻して気持ちが落ち着いてくることがほとんどです。
また、施設の職員と顔見知りになってくると、「今日はこんなことを言ってましたよ」などと普段の様子を聞く機会が増えたりして安心感も生まれます。
はじめの頃は面会に来るたびに泣いて帰っていたご家族も、笑顔で「また来るね」と手を振って帰っていくようになります。

入居しているご本人も、だんだん施設に慣れてきて居心地がよくなると、帰宅欲求で暴れたりすることがなくなってくることが多いです。
面会に来たご家族と会っても、「気をつけて帰ってね」と笑顔で見送ったあと、「そろそろおやつの時間かな」とすぐにいつもの生活に戻っていきます。

施設入居に対してご家族が罪悪感を持ってしまう気持ちはよくわかりますが、お互いに生活が落ち着くことで関係性が良くなる場合もあり、悪いことばかりではありません。

施設入居を希望しているけれど不安がある場合や、施設が混んでいて入居の順番待ちをしている場合は、ケアマネージャーさんに相談してショートステイを利用してみるのもいいと思いますよ。

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