人生にはモテ期が3回来るらしい。
残念ながら私は保育園のころに1回目を迎え、それ以来、途絶えている。
保育園のころ、モテたよと母は嬉しそうに今でも言う。
もちろんわたしはそんな頃、誰かを好きなんてわからなかったけれど、仲のいい男の子がいた。
その子が引っ越すことになり、保育園のへやで先生がみんなにタオルを配った。その子のお母さんから預かったものだと先生は話した。
その子はもう保育園には来ていなくて、わたしはよくわからずに先生からタオルを受け取った。かわいいひよこのタオルだった。わたしだけ、みんなと違う柄だった。
「まさこちゃんは、これね」
先生はわたしだけに違うものを渡したように思った。

そのタオルはもうなくなってしまったけれど、今でも黄色いひよこ柄が眼に浮かぶ。
今頃、どこでなにをしているだろう。
「あんたのこと、好きやったみたいよ」
母から何度かそんな話を聞いた。
もう顔も覚えていないし、何をして遊んでいたかも覚えていない。そもそも一緒にいたのは1年ほどだと思う。
あのタオルを握っていたわたしは、どうしてか大切にしようと思ったみたいだった。
割と長いこと使っていたような気がする。
初恋の形はたぶん、曖昧だ。
あれが恋だったのかどうか、きっと後になって知るんだと思う。
小さくてもたぶん、それはちゃんと恋の形をしていた。

4月12日 花言葉 かたくり 初恋

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