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ブナ林に恋をする②

前回参加した妹のプロジェクト、次も参加しようと決めていた。
天気予報をときどきチェックしていて、週末が晴れだと知った。
けれど、急に雨が降ったらショックだから、あまり期待しないでおこうと弾む心を何となく抑えつつも、心待ちにしていた。
紅葉がどんどん進んできている。ブナ林の秋をどうしても見たかった。
買ったばかりのトレッキングシューズを履き、ダウンコートを着て(今回はフードのファーの部分だけ取り外しておいた)、集合場所へ向かう。
今回は一番下の妹夫婦も来ていた。ということで、珍しく3姉妹がそろったのだった。
一番下の妹もよく山に行っているので、ウインドブレーカー、登山用のパンツ、トレッキングシューズ、と完璧である。
「そのズボン、登山用? いい?」
わたしが聞くと、
「うん、普通にいいと思う。これでキリマンジャロ登ったからな。お姉ちゃんも買いーや」
と返ってきた。
今回はこの前とは違う場所へ向かうらしい。
車を道の端に停め、先頭の妹に続く。今度の場所は足場が狭く、ぼんやりしていると落ちそうなくらいすぐ側が斜面だったので、真剣に足元を見ながら登っていく。
ときどき立ち止まりながら、見上げてみる。
くらくらするほど、迫って来る。
森の作り出す奥行きが、見るものを圧倒させる。光が差し込んで風が吹いて、あちこちで秋が奏でられている。
この感覚をわたしはきっとこの先も覚えているだろうし、この風景を恋しく思うのだろう。
誰かに会いたいと願うように。どうしているかなぁと気遣うように。
雨で崩れた斜面を指さしながら妹が話す。
「ここも土砂崩れを起こしています。大きな木は根っこで支えてくれるけど、雨で流れてしまったりもします。こういう人が登るための道も土砂崩れのひとつの要因になったりします。あの斜面にも木を植えていけたらなと思っています」
帰り道、自分のできることが小さすぎると唇をかみながら、それでもやっていこうと誓った。
なんだか神さまに会ったみたいだった。
次は、もう来年。冬を越してまた会いに行く。
次はウインドブレーカーも買っておこう。

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#エッセイ #ブナ林 #妹 #秋

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