見出し画像

タミルの日常米「ポンニライス」について、ポンニライスを開発した大学に話を聞きにいきました。

2024年2月、僕は南インドはタミルナードゥ州のコインバトールにある
タミルナードゥ農業大学(Tamilnadu Agricultural University)へ行ってきた。
この大学は2024年現在、タミルナードゥ州で
最も一般的に食されている「ポンニライス」を開発した大学である。
今回事前になかなか大学と連絡が取れなかったり、紹介された教授が退任されていたりと、
紹介に紹介をされることを重ね、機会を作ることに難航した。
遂に辿り着いたタミルナードゥ農業大学から南西へ数キロ、
広大な田園が広がる稲作研究所(Paddy Breeding Station)にて
スレーシュ教授(Dr.Suresh)と出会うことができた。
以下はスレーシュ教授へのインタビューの内容を
箇条書きにてまとめたものである。

シュレーシュ教授(タミルナードゥ農業大学の稲作研究所にて)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
日にち:2024年2月
場所:タミルナードゥ農業大学の (paddy breeding station)稲作研究所
インタビュー相手:スレーシュ教授(Dr.Suresh)

内容

>タミルナードゥ農業大学とは主に何を研究している処か
大きく分けると以下のカテゴリ
・米 Rice
・雑穀 millet
・豆 Paruppu(タミル語で豆)
・オイルシード
・野菜 vegetable
・綿 Cotton

>ポンニライスとは
・「Ponni Rice」とは通称である→正式名称は「White Ponni」
・1986年にタミル農業大学で開発された。
・Taichung65−2とMayung Epos−80交配させたもの。

>育成について
・年に1度収穫できる
・育成期間は今市場に出ているもので135日
・育成時期は8月〜1月の間(雨季と乾季。夏季は避けている)

>食事について
・ミールス用(おかずと合わせるもの、つまり炊き込みご飯などでないもの)として作られた。
・口当たりに影響するアミロース(米の硬さに比例する)は中レベル。
(例:低→日本米、中の上→ソナマスリ、高→アフリカ米やポンニ普及以前の南インドのお米)
・市場に届くまでの過程で米が欠けずらいから見た目も良い

>これからのポンニライスについて
毎年新たなポンニライスを開発している
CO55,ADT56(2022年に開発)
ADT57(2023年に開発)
今開発しているものは育成期間を短くすることに成功
→育成期間135日→115日
今後目指すポイントは
1収穫の多さ
・背が低く風に強い
・暑さに強くすることで通年収穫
・収穫スピード早い→110日を目指す
2味わいの向上
・もっと短くて細い米→さらにタミル人の味覚に合う形状

ポンニライス開発までの歴史
タミルではポンニ開発以前は雑穀を主食としていた場所が多かった
→チェティナードゥ、コングナードゥのエリア→雑穀が主食
雑穀の短所:味が悪い、扱いづらい、消化に時間がかかる
→チョーラナードゥエリア、チェンナイの方→米が主食
当時の米(Thooyamalli , Kitchadi samba)の短所:高価で手に入りづらかった。
1960年代から始まったGreen Revolution (緑の革命)によって
品種改良や化学肥料による育成促進、農薬による病害虫防除により
品種や生産量が増え、値段も安価に。
そして1986年、ホワイトポンニが開発され、タミルナードゥに広がった。

>なぜこんなにも短い期間でタミルの代表ともいえる米になったのか
・気候に強く米が丈夫で欠けづらい→安定した大量生産
・値段が安価→入手のしやすさ
・アミロースの量がちょうどよい→味が良い

>ホワイトポンニ以外のタミルの米
Mappillai Samba(Red Rice),Kavuni(Black Rice)
栄養価は高いものの、硬く調理法が限られる。
(タンパク質、鉄、亜鉛豊富)(おかゆのようにしたり、ティファンのようにする)

>オーガニック、ミレット回帰について
Green Revolution(緑の革命)以後の流れから米や野菜の大量生産に至ったが
現在ではオーガニック食品や雑穀を積極的に取り入れる家庭が増えている。
(タミルの中流以上の家庭では週に3〜4回ほど食事に雑穀を取り入れているという)

以上
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

インタビュー後、門の前にて記念撮影

最後に4名への感謝を申し上げます。
レジスター教授、そしてラヴィケサヴァン教授、
スレーシュ教授へと繋いでくださりありごとうございました。

スレーシュ教授、お忙しい中時間を作って
僕の質問へ真摯に答えてくださりありがとうざいました。

そしてコインバトール在住のマリコさん、
今回の機会にあたり、なかなアポイントメントが取れず苦しんでいたところを
サポートしてくださいました。大変感謝しております。
ーーーーーーーーーーーーーーー
僕はまだまだアカデミックな知識が足りないことを
これからの自分の課題としている。
もっと学究的な知識があれば、もっと深くて核となる質問ができたはず。

幸いなことにスレーシュ教授から
「今後研究したいことがあれば、ぜひここに来なさい。あなたへの助けになるはず。
もしくは共同の研究も良い」と仰ってもらえた。
また一つ、インドへの心強くありがたいコネクションができたことは今回の大きな収穫だ。
これからももっともっと、インドへの探究心と、等身大でのインドへの経験と解釈を深めていきたい。

真更薫

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?