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第八章 リーダーのビジョンでチームに意味を持たせよ

これまで一貫して、「役職者になりたがる部下を増やす上では、まず上司自身のあり方が大事」とお伝えしてきました。

なぜなら、それほど上司の持つ影響力は良い意味でも悪い意味でも大きいからです。そこでこの章では、前章で述べた「自作思考」が事業部に少しずつ浸透してきた後に発信していく、「ビジョン」について触れていきます。

前提としておさえたいのは、山口周氏の著書『ニュータイプの時代』でも語られている「役に立つ」と「意味がある」という考え方の違いです。

よく引き合いに出される例として、車が挙がります。モノが不足していた時代であれば、機能面で優れた「役に立つ」日本車が優勢であったけど、モノが過剰に生産されている時代においては、ポルシェやフェラーリ、BMWなど、所有していること自体に「意味がある」ことが、生存競争において大切になってきました。

もう少し補足します。私は出張の機会があると、必ずと言っていいほど、日本航空を利用します。それは、私が中学生の頃に読んだ山崎豊子氏の『沈まぬ太陽』の中で主人公が日本航空の社員であったことで思い入れを持ち、御巣鷹山の事故、経営破綻を経験しても、何度も危機を乗り越える姿勢に、「何度も再生し、あきらめない航空会社」として私が意味を感じていることに由来します。

でも、まれに時間帯としてどうしても日本航空の便だと間に合わない、都合がつかないという際には、他の航空会社を利用することになるのですが、その場合は「役に立つ」という土俵になるので、価格と時間のバランスが取れれば、どこの航空会社でも構いません。つまり、「意味がある」という土俵では

絶対的であるのに対し、「役に立つ」という土俵では相対的な判断をしていることになります。

さて、これらを踏まえた上で、この章の章題である「リーダーのビジョンでチームに意味を持たせよ」について、私の事例をご紹介します。

卒業後に保育士、幼稚園教諭を送り出す専門学校のマネジメントをしていた頃に、これまで述べたような「意味」を学校に与える必要がありました。なぜなら、国家資格保持者を養成する学校は、そもそも国が定めた教育課程の中で、生徒は教科毎に予め決められた時間を履修、修得することで、単位を付与されていきます。

そのため、教育課程が大きく変わらないのであれば、入学希望者に学校を比較してもらう上で、「役に立つ」という土俵に上がりかねません。

そこで、学校法人全体としてのミッション、ビジョンを加味しながらも、私はいち学校として全先生方へ「どんな生徒が入学しても、あきらめずに向き合い、育て上げる学校」という意味を持つ専門学校を目指したいと発信しました。

教育現場はともすると、入学してきた生徒の「資質」やそれまでの教育環境で培われた「気質」を言い訳にして、「今年の生徒は、前年度に比べて」と発言する教員がいたりするのですが、前章で述べた「自作思考」を浸透し、「どんな生徒が入学しても」という意味を与えることによって、私たちの教授法を工夫していこうという方向性を示したものになります。

この「意味を与える」から、実際に「意味を持つ」までに至った先には、「どこの保育園、幼稚園にも卒業生が生き生きと働き続ける未来」が待っていると伝え続けました。

結果として、それまで「基準で生徒を振るいにかけてしまう」傾向にあった先生方も、一人ひとりの生徒と向き合う教育をおこなう学校になることができ、在校生数は当該地域でナンバー1を誇っています。

会社が掲げるミッション、ビジョンを、所属する事業部の土地柄、持っている業務分掌に応じて、あなたが事業部に対してどんな意味を与えるのか、ぜひ言語化してください。

それは、KPIなどの定量化されたものだけでなく、事業部としてどういう状態を目指すか、というビジョンです。言語化した後は、しつこいぐらい何度も発信していきましょう。

どんなビジョンを描くのか、どんなビジョンを描いたら、部下に納得感が生まれ、貢献したいと思うのか、難しいからこそやりがいのある取り組みです。

この章のまとめとしては、あなたのビジョンで、事業部に意味を持たせてください。きっとその意味を何度も発信するあなたの姿に触発される部下が現れます。

次の章では、「自作思考」の発信、「ビジョン」の発信に加え、「日常的に上司はどんな言葉がけをしていくこと」が重要なのかについて触れていきます。


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リーダ―育成・事業部再生コンサルタント

本間 正道
twitterID:@masamichihon

Email:playbook.consultant@gmail.com

著書『リーダーになりたがる部下が増える13の方法』

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