見出し画像

孤独死のススメ【エッセイ】二〇〇〇字

 あと10年もたてば、団塊の世代が「適齢期」になってくる。ますます「孤独死」が増えるだろう。誰にも看取られずに長期間、気づかれずに腐敗した姿で発見される。そんな姿を想像しただけでもゾっとする。そうだろう。では、「看取り」されるように、「孤独死」であっても短時間で発見されるようにすればいいのではないか。そうなるように制度などを活用し、「孤独死、万歳」で行こうじゃないか。上野千鶴子『在宅ひとり死のススメ』は、そう提案する。
                 *
 昔よく、「畳の上で死にたい」と口にするひとがいた。自宅で死ぬことを望んでいたはずなのだが、いまは病院で最期をむかえるひとが、ほとんどだ。
 延命治療を続けた結果、居心地の悪い病院で絶命することが幸せなのだろうか、と上野は言う。同時に、「独居であることの満足」を強調する。同居人がいることの煩わしさ。家族、親族内の殺人が社会面を賑わせる。殺人までいかないまでも家族であることの何某かのストレスがあり、むしろ独居の方が気楽、と感じているひとが多いとの調査結果も示す。オシドリ夫婦であれば、しばらくは独居することもないが、ツレが先に逝ったら、一人が残る。最後は一人。上野は、積極的に「おひとりさま」でいることの満足度の方が高いと主張する。
 むろん、自宅のローンの支払いが済んでいて、老後の蓄えを常識の範囲で保有していることが前提。最近、『老後の資金がありません!』なる映画が封切りされたように、このご時世、満足な貯金があるひとばかりではないだろうが。それでも、上野は、日本の介護保険制度を高く評価する。賢く使いこなせば、多くのひとが自宅で最期を迎えることが可能だ、と言う。
 可能なら「PPK」が、理想。「ピンピンコロリ」である(「BBK」もある・・・。「ビンビンコロリ」。「〇上死」(汗))。しかし、「PPK」でも独居だったら、「看取る」ものがいなければ、「孤独死」である。放置されたままなら、腐敗。最悪、白骨である。浴槽で死んだ場合、「保温」のままだと、肉は溶けていくらしい。
 だが、巨額な資金がなくても、その不安を解消することができるかもしれない。「看取り」サービスである。介護保険を賢く使いこなしたり、民間会社のサービスを利用したり。
 「孤独死」を回避することは、大袈裟にITを駆使しなくてもできる。独居者が希望すれば、監視カメラを設置し、必要なタイミングで監視するひとがいれば済む。カメラを、日々必ず姿を見せる場所、例えば、キッチンとか。日捲りカレンダーを写すだけでもいい。捲られていなければ、連絡を入れる。カメラと設置のコストと、監視・連絡するひと、生存確認の訪問をするひとの人手(人件費)があれば、できる。新聞販売店と連携することも考えられる。前日の新聞が残っていれば、連絡を入れる。1日の放置で済む。「看取り」については、本人の「最後の」出費(30~300万円位)があれば、民間サービスで賄える。
 施設があるじゃないかという人もいるだろう。多くの蓄えがあるひとは、高級老人ホームもある。贅沢な食事とスタッフに恵まれる。しかし、気の合うひとが住人であれば良いが、人間関係に不満があっても簡単に施設を移られるわけではない。ほとんどのケースが、死ぬまで出られない(刑務所なら刑期が終われば出られるが)。
 倉本聰『やすらぎの郷』。俳優や歌手、ミュージシャン、脚本家などの昭和世代にテレビの世界で活躍した人物だけが入居する超高級老人ホーム(コミュニティ)。知的レベルも近い。理想かもしれない。同じベクトルにあるひとたちの集まりだから。しかし、普通の施設と同じで人間関係にストレスを感じるかもしれない。

 ここからは、非現実的な話かもしれないが、敢えて、こういうことが実現できたらいいなあ、というか、可能なら実現させたいという話になる。
 『やすらぎの郷』をネット上、(noteのような)SNSで実現できないかということである。退所も簡単にできる。そんなバーチャルな空間をNPO法人が管理する。入所者を全国から募集する。noteのようなSNSを使うひとたちは、年齢層が高く、融通が利く時間も豊富。いろんな職業の人もいるだろう。医師、看護師、介護関連かの経歴を持つひともいる。一種の「共助」「相互扶助」「助け合い」である。

 冒頭の話。いま通っている「エッセイ教室」の受講生が書いたショート・ショートの話なのだが、オチはこうだった。
 癌を患い余命がわずかになった夫と看病する妻。夫が盛んに言う。「治る可能性がないなら、畳の上で死なせてくれ」と。すると妻は、特製のベッドを病室に運んできた。「あなた、畳よ」と。


(因みに上野は、認知症になったときことも書いているが、期待で終わっている。認知も多様性の一種と考え、「誰もが人間らしく生きられる」社会にしようとの呼びかけで、終わっている。難しい問題が多くあるだろう。しかし、そうならないように「PPK」で最期を迎えられるように、「8000歩ウォーキング」など、様々な健康法を積極的に実行していこうではないか)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?