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【読書感想】現代建築から見つめ直す

皆さんの好きな番組は何ですか??
私は武井壮さんがMCを務める『憧れの地に家を買おう』という番組が好きです。世界各国のかなりの高級物件を紹介している番組で、今朝の冬晴れの空の如く、現実感も雲のようにきれいさっぱり無いですが、この国行ってみたいなあと気軽に見ることができます。先週だと北イタリアの物件を紹介(特別回で武井さん自ら、現地で取材兼内見)していました。さぞや煌びやかで、新しく、ハイテクなのだろうと構えていると、「築百年の物件をリフォーム」なんて紹介されるもんだから、結構驚きます。そして、そういう古い物件程、価値を見出す文化だったりします。

私は、2年ほど前に、アルバイトで東京都内の高級物件を撮影していて、湾岸エリアのタワマンやら、恵比寿・白金やらの、家賃が一桁も二桁も多いような場所に’お邪魔’したという経験があります。20階建ての高層マンションがずらりと並び、隣同士の部屋は幾何学対称性に寸分の狂いなく、画一的に整っている。外も中も完璧に綺麗で、交通の便も申し分なく、生活には困らないだろうなと思うのですが、なんだか居心地が悪くて、それと何度も足を踏み入れるにつれて、ちょっとした虚しさも出てきます。(これは私のある種のアレルギーなんでしょう。)
一方、スペインの田舎町を歩いていた時、屋根にでっかい鳥の巣が我が物顔で乗っかっている教会や修道院に泊まったときを思い出します。住むという点からするともちろん不便ですが、上みたいな感情はほとんど現れませんでした。この感情の違いは何なのだろうと。

先週末にたまたま、駅の近くの本屋を散策していたら、開高健さんの著書『オーパ!完全復刻版』を見つけ、八千八百円という値段には目をつぶって購入しました。この本は、ブラジル、アマゾンでの釣りルポ・写真集で、文庫本は手元にあったのですが、大型版で写真が見たかったのです。
この本の中で、自分にとって、かなり印象的だった文章を引用します。

現代建築というものはこれまで私が諸国で見聞した限りでは、歳月と添寝することができないのである。デザインの流行が変わるから”時代遅れ”になってそうなのではなく、どうやら、もともとそんな体質や気質に生まれついていないのである。らしいのである。どの傑作も、ちょっと歳月がたつとたちまち醜怪、卑小な不具者となってしまう。ある年齢で成熟が止まってしまった美少年みたいなところがある。美貌を保つためには自殺するしかない、ある種の早熟な不具の美少女みたいなところがある。

開高健『オーパ!』集英社文庫(1981年)

ここでは、ブラジルの中央高原に突如として現れた首都ブラジリアを題材としており、アマゾンでの生活との圧倒的な対比を、文中ではタイム・マシンとして言及しています。

首都ブラジリアの夜

文中の「歳月と添寝する」という表現は、建築にとどまらず、私たちの生活全般に対しての表現だと思っていて、個人的には、最近はすべてのサイクルが早く回りすぎている(そして社会全体が、平均としてはそれを求めている)ように感じます。ファスト文化・消費にも通ずるこれらの感覚に、僕はまだ慣れていなくて、そんな中の感情の一つとして、都内高級物件に足を踏み入れた時の空虚感が顔を出したのかもしれません。
では一体どうしたらよいのか、といわれると、多分どうすることもできないのだけれど。

書き出したら、とっても固くなってしまいました。いけない!
まだ肩の力が抜けてない、ということの記録の一つとして、残しておきましょう。
それではまた。



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