ボルダリングを1ヶ月で辞めた

大学生の頃ボルダリングを始め、1か月で辞めた。

まず、何か趣味を始めたいと思う時、運動をしたいけど何か手軽にしたいものはないかな、と思っていた。

そしてボルダリングなら、運動もできて1人でも黙々と気軽にやれるんじゃないかと思った。
あと筋トレにもなるというから、幼い頃からあったガリガリコンプレックスの解消にもなると思った。

僕は小さい頃から近所の山に登って遊んでいてたから、ボルダリングには謎の自信があった。


近くのボルダリングジムを探し、
試しに一回行ってみた。

初めてだったから、色々教えてもらい、
初心者用のコースを登った。

僕は隠された才能があるのでは、という密かな期待があったが、そんなことはなく平凡だった。

手の握力がだんだんなくなってきて、
もう登れないよ!となって、2時間くらいで帰った。

数日経ってもう一度行き、
今度は黙々と登っていた。
僕の登っているところは小学生が登っているところで、
上級者コースでは中学生から社会人の上級者たちがハイレベルな課題に挑戦し、和気藹々と盛り上がっていた。
僕は誰とも話さず黙々と登り、体力が尽きたら帰ることを繰り返した。

4.5回目ぐらいだっただろうか。
このペースで通うなら、1ヶ月何度来ても料金変わらない、みたいなプランを申し込んだ方がお得になるくらいには通っていた。

僕はボルダリングを続けるか迷っていた。
今のところ、すごく楽しい!という感じではなく、難しい、疲れる、という感覚の方が強い。
ただし、これを続ければ筋トレにもなるし、
運動系の趣味が作れるかも、という気持ちだった。

だから迷っていたが、ジムに行ってすぐ1ヶ月フリープランを申し込んだ。
10,000円かかった。
月4回以上なら、元がとれる。
僕はもはや、これを支払ったからには続けなくては、というプレッシャーを自分にかけていた。


すると、定期を支払ったのだから今後も続けていくと感じたのか、
そのジムの店長が僕に話しかけてきた。

「学生?」
「はい」

「家は近くなの?」
「まあ、30分くらいですね」

「なんでジム通おうと思ったの?」
「まあ、運動したいなと思って、、」

そういうやりとりを続けていると、
不意に店長は僕を何か温かい目で見るようにしてこう言った。


「君、人見知り?」


僕は即座に返せず、言い淀んで「アア…ハイ…」と言った。
その受け答えで人見知りであることが証明されてしまっていた。


店長は、
全然大丈夫だからさ、同年代の子もいっぱいいるし、
あっちにいる〇〇君とか、今日は来てないけど〇〇ちゃんとか、結構いるから、
すぐ馴染めると思うし、
みたいなことを言っていた。

僕はそれを聞きながら、
そうなんですね、とぎこちない笑みを浮かべながら受け答えをしていた。


その日のジムの帰り、
自転車に乗りながら、何かモヤモヤした感情が胸を占めているのを感じていた。

僕は運動系の趣味を持ち、筋トレをしたかった。
そしてボルダリングを選び、決して安くない金額を出して一カ月の定期を買った。

ジムに馴染むとか、そんなことを全く考えていなかった。
むしろ、そういうことを気にしないでいられるのが趣味じゃないのか。

でも、お金を払っている立場なのに、
なんでそんなことを気にしながら通わないといけないんだろう?
僕はボルダリングをしながら体を鍛えたいだけだったのに…

そんなことを考えると嫌になってきて、
僕はそれきりボルダリングジムに行くのを辞めてしまった。

10,000円をドブに捨ててしまった。
だけどそれでも行きたく無かった。

店長は、僕の人見知りのレベルを見誤ったなと思う。
想像以上に僕は繊細な人見知りだった。


あれから数年経ち、僕は社会人になり、
最近引っ越しもした。

何か運動する趣味を始めたいなと、また考え始めている。
今度はすぐに辞めないようにしたい。

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