もっと身勝手で非効率でもいい

会社を辞めてフリーターになり、
転職して働き出してから数ヶ月が経った。

人間とは慣れるもので、
仕事をしていることがデフォルトになり、
平日は仕事をして、土日休んで、また仕事に行く、というサイクルが当たり前になった。


長い休みになり、少し仕事から離れると気づくことがあった。

それは、会社員に戻ってからというもの、
毎日のほとんど全てにおいて最大効率を目指し、周りに配慮した行動を取るようになっているということだ。


例えば、
朝は決まった時間に起きて、
決まった電車に乗り、
昼飯をどこで食べて、
何時に家に着き、
何時までに寝て、
また決まった時間に起きる、
というサイクルが決まっている。

また、遊びに行くにも、
土日という限られた時間のリソース内で、
金銭的、時間的に最大のリターンが得られる行動を選択するようになる。

例えば、誰かと遊びに行くとして、
衝動的には、遠出したいとか、地方の観光をしたいとか色々思うけど、
やっぱりお金とか時間を考えると、少し遠めのカフェとか商業施設とか、
それなりの距離にあってそれなりのお金で済む場所を選択することになる。


そういうことを繰り返していると、
なんかよく分からない感覚だけど、とにかく虚無的な、退廃的な気持ちになってくる。

誰に言われたわけではないけど、
意味あることしか許されないような気持ちになってきて、
そうなると、何をするのが一番いいんだろう、と考えてしまい、何か疲れてしまう。

何となくで過ごしてしまうと、貴重な休みの時間を非効率な方法で消費してしまった、と後悔しそうな気がする。
まあこれも一種の強迫観念で、実際はそうでもないのかもしれないけど。


僕は仕事を辞めてからフリーターを5ヶ月していた。
その当時と、会社員として働いてる感覚を比べると、
やはり一番違うのは時間に対する感覚だと思う。

フリーターの時は、ほとんど最大効率を考える必要はなかった。
もちろんバイトのある日はその時間に合わせて出勤する必要はあるけど、それ以外はどう過ごしてもいい。
つまり縛りがゆるいのだ。

だから、フリーターの時は、
朝起きてご飯を食べた後、
とりあえずゆっくり歩いてドトールに行き、
ホットカフェオレを飲みながら、
やる気が出ないなあ、なんて思いながらスマホに今の気分を書き留めて、
それに飽きたら少し作業をして、昼飯を食べに家に帰る、ということができた。

あとは、自転車で衝動的に見知らぬ土地へ走り、
疲れたら喫茶店で休んでから帰る、ということもできた。


フリーターは、バイト以外の時間、
今日はどうするのか、明日の自分はどうなるのか、決まっていない。
別に家にいても良いし、働いてもいいし、適当に遊びに行っても良い。
当然、半年後や1年後どうなってるかなんてわからない。

でも会社員だと、当たり前のように、明日は会社にいるのか家にいるのか決まっている。
土日があっても、月曜日までには家に帰ってこないといけないことは決まっているから、
どこにいてもいい、なんて状態にはならない。

何なら、仕事を辞めなければ半年後も1年後も、なんなら5年後も同じような状態かもしれない。
それは良い意味で言えば「安定」であり、
悪い意味で言えば「縛り」だと思う。

それはメリットデメリット両方ある。
僕はフリーターは楽しかったけど、毎月の奨学金と税金の支払いがしんどくて正社員になった。
結局、フリーターで悠々生きるにはかなりバイトをしないといけなくて、そうなると結局「悠々生きる」とは逆の状態になると思ったからだ。

だから別にフリーターと正社員どちらが良いという話ではない。

ただ、正社員になると、時間に対して給料が支払われ、限られた人員や予算、時間の中で成果を出していく必要があるから、
どうしたって最大効率的な思考と行動が求められる。
まあそれは会社という仕組み上、そういうもんだと思う。

だけど、そうやって毎日を最大効率的に過ごしていると、
なんか退廃的な気分になってくる、ということだ。

結局ここまでダラダラ書いて何が言いたいかと言うと、
連休に何も予定がないと、迷ってしまうのだ。

最大効率を考えれば、普段よりも自由に使える時間があるため、
いつもは行けない旅行に行くとか、帰省をするのが良いだろう。
だけど前もって計画を立てていないと、宿も新幹線も取れないし、費用もかなり高くつく。
あと、予定で連休が埋まってしまうと、なんかそれはそれでしんどい。

僕はこの連休をどう過ごしても良かった。
最大効率はもはや取れないと分かっているから、
無駄で非効率で思いつきの行動をとることにした。

僕は、東京からひたすら西を目指すことにした。
適当な電車に乗って、途中下車しつつとにかく西を目指すだけの旅。

当然、コスパなら夜行バス、タイパなら新幹線使えって話になる。

けど、なんかもう目的を決めて時間通りに体を動かす、というのがもう疲れた。
もう、何時までにこれをやるためにこれをする必要があって、、とか考えるのが、もういい、いい、となってきた。

仕事では周りを考えて行動するから、
1人でいるときぐらい、もっと考えなしに衝動で動いてもいい。

今日どこまで行くのか、どこに泊まるのか、
明日どこに居るのか何も決めていない。

でも、それでいい。
どうせ家にいても何をすれば良いか分からない。

僕は電車に乗って八王子に行き、
八王子から甲府行きの電車に乗り、
甲府から松本行きの電車に乗り換えた。

宿は空いてなさそうだから、ネカフェでも泊まろうか。
どこかで良さそうなスーパー銭湯があったら休みたいな。

一人旅は身勝手で考えなしにならざるを得ない。
たまにはこんな感じでもいいだろう思う。

恐らく僕が切り替えが下手なだけで、
大体の人はそんな無駄なことをしなくても過ごしていけるんだろう。

周りの人には「普通に旅行先決めて、新幹線で行った方が有意義に時間使えるじゃん」とか言われるかもしれない。

僕が「いや、時間や目的に縛られすぎると疲れるし、思いつきで適当に過ごしたいんだよ。あと、早く行きすぎても風情がないじゃん?」なんて言っても、
大抵微妙な反応になるだろうから、
わざわざ分かってもらわなくてもいい。
あと、こういう返しをする自分を客観視すると
なんか鼻につくから、やっぱり何も言わない方がいい。

でも、僕にとってはその無駄で非効率なことが大事だなと思う。
それは結局、最大効率的な解の出し方では辿りつかないことだったりする。

誰に言われたわけでもないのに勝手に自分で最大効率でないと、と思いすぎた。
自分で自分を制御して意味あることを重視しすぎると、虚無で退廃的な気持ちになってしまう。
自分がやりたいことってのは案外難しい。
これからも身勝手でいいときは身勝手に過ごすようにしたい。

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