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小話(4)NHKのカメラ

 毎月、満月の夜に坐禅会を開催している近くのお寺にそこそこ通っています。いつも通り、そのお寺に行くと、NHKの取材が入っていました。”中秋の名月”特番の取材だそう。

 カメラ取材を快諾し、いざ坐禅を始めました。坐禅会は20名ほど参加で、みっちり40分間坐禅。体感で10分ほどたったころから、仕事終わりで疲れていたのもあり、ウツラウツラして、身体もフラフラしてきます。あかんあかん、と体勢を立て直すのですが、またフラフラします。

 その時です。NHKの取材班のカメラが僕の右斜め前に来た気配を感じました。その瞬間、ピシっと背中を真っすぐにし、坐禅歴10年もあろうかという風格(本当は1年くらい)を醸し出しながら、ひとーつ、ふたーつと大きく呼吸をします。
 始めはカメラ意識の呼吸だったのですが、そのうち深い深い瞑想に没入していきました。
 
 自分と向き合うはずの坐禅。しかし、自分以外のNHKのカメラを意識することで、しっかりと自分と向き合え、深い瞑想ができた。僕にとっては他者の目や存在が、自分のやりたいことに集中したり、推し進める原動力になるじゃないかということを思いました。

 その昔、自分は24時間365日、ジャン=リュック・ゴダールにカメラを回されていると思って、恥ずかしくない自分であり続けているという女の子に出会ったことがある。

 うまく他者の目を活かす。

 自分もNHKのカメラを意識し、日々精進していきたいと思います。

 放送日はいつだろう。聞きそびれてしまった。シャキッとした姿が映っていることを祈ります。


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