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TFBM 信じた道を走り続ける 1

曲のタイトル「WE RUN ON FAITH」にちなんで、私の筆も走らせようかと(コラボ期間中、不定期連載)。

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下北沢のタイ料理屋で窓際の席を選んで座った。
昔よく使っていたスタジオの近くは、店の入れ替わりがとても激しい。
昨日までの寿司屋が、気づけば居抜きのままフライドポテト屋になっていて、
しばらく見ないうちに派手な看板の眼鏡屋に変わっていた。
久しぶりにそこに出向くと跡形もないなんてことは茶飯事なのだけれど、
この店は行列に並ばない程度に適度に繁盛店のまま、くたびれたシンハービールのポスターが色褪せて端が捲れている以外、店の様子はずっと変わらない。
頼むメニューは決まっているのに、年季の入ったメニューを眺めているフリをしていると、入り口のドアを開いて、釣られてチリンチリンと呼び鈴が鳴った。
背の高く、上着を肩にかけ、出会って20年来変わらないままのすらっとしたシルエットの男性。
それがすぐにShunくんだとわかって、片手をあげてこちらへと合図をした。
まだ春なのに、もう既に夏のようにどうしようもなく暑い日の出来事だった。

画面越しの打ち合わせが増えると、
移動もいらない、時間短縮、なんて快適なんだ!と思う反面、
それで成立するのは、ある程度結果の見えている擦り合わせの話や、
元々の人間関係があってこそ。
新しく何かを始めるための交渉事や、よりハードなお願い事をする場面においては、少々ハードルが高くて、毎度のこと股でも裂けそうな気分になる。
実際に会って、膝を突き合わせ、同じ空気を吸った上で吐き出した言葉でないと、
越えられない壁もあるし、埋められない溝もある。
事情、時世、タイミングさえ許せば、やはりこうして実際に会って話せる機会があるのは、とても有難いし、舌がうまく滑るかなんて心配や、久しぶりの緊張さえあれど、喜びの方が断然に大きい。

日本古来のビジネス標語、ホウレンソウ。
アーティストという仕事においては、報告、連絡、相談、のなかで、圧倒的な割合で相談が少ないからなのか、僕はあまり誰かに相談するということに気乗りしない。相手によっては相談のポーズをとることもある。事後報告的なことは時にトラブルの発端になるし、揉め事は元々あまり好きじゃない。
それでも何か大切な決断をする前に相談したくなる時はあるし、
同じ高校の先輩で、同じ大学の先輩で、同じ職業について、巡り巡って今同じ事務所に所属しているShunくんは僕にとって、そういった大切な、そして希少な、存在のうちの1人である。

注文したカオマンガイのプレートの上のおそらくほうれん草ではない青野菜を食べ終え、ココナッツミルクにコーンがなんとなく入っただけの謎のデザートを飲み干す頃には、
今の自分たちのことや、将来のこと、ひと通り話す予定のことを話し終えていた。
そして、本来なら僕がひとり自分の予約していたスタジオに戻るという時に、Shunくんも一緒に来ることになった。

「一緒に曲を作ろう」

時として、良い曲、素晴らしい音楽が出来上がるまでには、良い物語があったりするもので、僕はスタジオまでの道すがら、そんな予感に満ち溢れていた。



TOTALFAT × BIGMAMA "WE RUN ON FAITH"

限定のCD+グッズセット販売は本日22:00〜

また今後さらにコンテンツが追加される!? Google Drive をご用意しました。
スケジュールの確認などこちらからどうぞ。


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褒められても、貶されても、どのみち良く伸びるタイプです。