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夢見モグラは空を待ち侘びて 7日目

新しく見つけた空間の中に、沢山の書物に囲まれた部屋があった。
どうやら昔ここは”トショカン”という場所だったらしい。
少々埃っぽいことを除いて、
くたびれた紙の匂いはとても心を落ち着けたし、
モグラはいたくこの部屋が気に入った。
一つ一つそのページを開くたびに、
敷き詰められるようにズラリと並ぶ文字を初めは全く理解できなかったが、
”オジジ”に教わりながら、次第にその法則性や規則性に気づき、
少しずつその中身を理解していった。
それでもつまらないものは枕にしたし、
心に響いたものは根城まで持って帰って大事に飾った。
かつて世界は沢山の文字に溢れていたことを、モグラ少し、羨ましくも煩わしくも思った。

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図書館の話。

自分が通っていた高校には課題図書という制度があった。
卒業までに100冊の本を読むように、
各学期ごとに5~6冊が指定され生徒たちはそれらを購入し、
読まないことには現代文の中間期末テストの20点分が解けないようになっていた。
きちんと読む生徒もいれば、
僕のように、いかに楽して生きていけるか常に考えているような輩たちは、
その本をきちんと読了した友人の元に跪き、
同様に群がる者どもに対して、
その友人がまるで教祖のようにその内容、あらすじを説くという光景は、
我が校のテスト前のお決まりの景色だった(多分。僕の周りだけかもしれないけれど。)。
出題する先生方も、もちろんそれを察知していたのだろう。
僕の現代文の成績は並以下だったは言うまでもない。


時は経って2020年春、図書館を始めた。

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前回の緊急事態宣言、自粛下、ライブツアーが中止になって、
皆さんを楽しませる術がなくなってしまったところで、
せめてもの償いのつもりで、巣ごもりのお供にと、
それだけで読んで面白い(つもり)の癖の強い読書感想文と、
おすすめのBGMとともに、読んだ本を紹介していくという場所を作った。

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読書は趣味かと聞かれると、好きか嫌いかと聞かれると、ちょっと口籠る。
当たり前だけれど面白いものは好きだし、面白くないものは苦手である。
ただ、自分の場合、歌詞を代表する文字を綴るあらゆる場面において、
本を沢山読んでいないと、この仕事を、長く続けていくことが出来ないと瞬時に察し、半ば強制的に自分に言い聞かせて、苦い薬のような感覚で沢山読んでいった。
はじめは文字を飲み込むたびに、うげえ、と吐きそうになるばかりであったが、時折そんな自分でも感動させられる作品に出会うこともあった。
最後のページを閉じた時に、涙し、ひとり自宅でスタンディンオベーション。文字嫌いを自分を感動させるくらいだから、余程すごい作品なのだと思った。
もとい、単に自分の食わず嫌い、読まず嫌い、だったのかな、とも思う。

そんな自分がゆえの利点もあって、
僕には文字を読むのが、本を読むのが嫌いな人の気持ちがわかる。
そんな自分が面白かったら大概の人は面白いだろうし、自分が文章を書く時には、そんなところを気にかけながら。飽きられる前に終わらせることを心がける。

あんなに本を読むのを毛嫌いしていた自分が、
本を作って他人様に売ろうとしているなんていうから、
未来は本当にわからない。

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本日の表紙は@kou_1118さんのものを使用させていただきました。
ようやく一週間!これはなかなかにしてなかなか。コメントやハートマークくれている皆さんありがとうございます。僕がサボらないように見張っておいてください笑。それではまた明日。

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