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音楽レヴュー 2

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音楽作品のレヴューです
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#アフロスウィング

Ghetts『Conflict Of Interest』



 ゲッツはイギリスのプレイストーで生まれた。経済的に裕福でない家庭で育ち、さらには刑務所暮らしも経験するなど、紆余曲折な人生を歩んでいる。
 それでも、グライム黎明期から活躍するラッパーとして多くのリスペクトを集め、素晴らしい作品をいくつも残してきた。『Ghetto Gospel』(2007)と『Freedom Of Speech』(2008)という2つのミックステープはグライム・クラシックに

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Chip『Snakes & Ladders』



 イギリスのトッテナムで生まれたチップは、浮き沈みが激しいキャリアを歩んできたラッパーだ。デビュー・スタジオ・アルバム『I Am Chipmunk』(2009)は全英アルバム・チャート2位に入るなど、活動当初は商業面での成功が目立っていた。当時はいまほどメインストリームの中心に食いこんでいなかったグライム・シーンを出自とすることもあり、チップの成功は多大な注目を集めた。

 しかし、『I Am

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NSG『Roots』



 ここ数年、イギリスのオンラインラジオやボッドキャストを聴いていて、何度NSGの名を耳にしたことか。
 NSGは、ロンドンのハックニーで結成された6人組。“ Options”のMVが3000万回以上再生されるなど、いま大注目の集団である。

 そんな彼らのデビューミックステープが『Roots』だ。“Options”や“Trust Issues”といったヒット・ソングも含む全18曲入りの本作は、

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J Hus『Big Conspiracy』



 イースト・ロンドン出身のラッパーJ・ハスは、イギリスの音楽シーンを牽引する男だ。アフロビート、ダンスホール、ヒップホップ、R&Bなどの要素を交雑させた音楽性はアフロスウィングと形容されることが多い。いまでこそ、このジャンルは定番のひとつになったが、それをいち早く鳴らしていた彼は紛れもなく先駆者の1人だ。

 自身のハードな人生を反映した歌詞も彼の持ち味だ。さまざまな固有名詞や比喩を駆使して、

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