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ベンダーへ尋ねるべき55の質問:ソフトウェアのプレゼンやデモによる打ち合わせの際に、質問・確認するポイント

デジタル時代、誰もがソフトウェアの選定に関わる

今、我々はデジタル時代を生きています。クラウド、ビッグデータ、AI、IoT、5G、ブロックチェーン等、各種IT領域における著しい発展とそのコモディティ化により、利便性の高い様々なツールやソフトウエア、ソリューションが溢れています。そのようなデジタルツールやソフトウェアの恩恵を、ビジネスや日常業務の中で享受することが増え、特に企業の情報システム部門のような専任の部署でなくても、ソフトウェアベンダーからツールやソフトウェアの紹介プレゼンやデモンストレーションを受けることも当たり前のようになってきました。購買担当部門、情報システム部門、ユーザー部門、どのような所属であっても、説明されたソフトウェアの技術面・サービス面・コスト面を踏まえてビジネス的価値を評価し、選定に関わっていくことになります。
本記事では、ソフトウェアベンダーから打ち合わせにて、そのようなプレゼンやデモを受けた際に、どのような質問をしてどのような点を確認していくことで、自社のビジネスや自分の業務にフィットし、その価値を高めるツール・ソフトウェアを見極めることができるのかを考えたいと思います。

とにかく質問をすることが肝心

ソフトウェアベンダーとの打ち合わせにおいては、デモを丁寧に見せてもらうことは大切です。百聞は一見にしかずです。ですが、1時間の打ち合わせで50分近くプレゼンとデモをされてほとんど質疑応答やディスカッションができないというような時間配分はよくありません。説明担当者からの機能紹介や他社事例に関して資料でわかることは省略してもらい、Webやホワイトペーパー等のドキュメントではわからないことを中心とした議論に多くの時間を割き、自社の要件にフィットするのかどうか確かめていきましょう。また、質疑やディスカッションを通して、ベンダーの姿勢や考え方を知ることもできます。とにもかくにも質問をすることはソフトウェアを評価する上での要です。

そもそもどんなやつ?使えるの?

まず最初に、購入の意思をもてるかどうか以前に、紹介を受けたその最初の時点ではそもそもどういう特徴や利点のあるものなのか。そして、自社のビジネス・自分の業務に役立つのかを確認されるのではないかと思います。自社の要件や解決したい課題を事前に整理できていると質疑もスムースにいきます。顧客はどんな会社が多いのか。ユーザー事例を尋ねることも重要です。また、アプリがあるのであれば対応しているOS(iOS, Android)、UIのわかりやすさや最初は慣れるまでどれぐらいかかるのか、のラーニングカーブ等も聞いておきたい点です。

・このソフトウェアの特徴・利点は何ですか?
・どのような機能が含まれていますか?
・競合他社の類似製品と違うところはどこですか?
・自社のビジネスにどう役立ちますか? どんなベネフィットがありますか?
・顧客にはどんな会社が多いですか?
・同じ業種の他の顧客はいますか?
・ユーザー事例を教えて下さい

・iOS / Android でのアプリはありますか? 
・(デモであれば、) UIは直感的でわかりやすい感じですか?
・使いこなすまでにどれぐらいかかるものでしょうか?


導入は大変そう?

そうして特徴や利点を理解したあとは、実際に使うにあたってどのようなセットアップが必要なのか。導入のしやすさや、開発が必要な場合でのリソース・コストについても確認します。導入意思決定の前の無料トライアルの存否も大切です。

・そのソフトのセットアップや導入の難しさはどれぐらいですか?
・開発が必要になりますか?その場合、どれぐらいのリソース(人・時間・コスト)が必要になりますか?
・開発や導入に向けて頼むことができる、SI(システムインテグレーター)や代理店、コンサルティングファームはどこになりますか?
・無料トライアルやパイロットプログラムはありますか?
・ユーザーのトレーニングプログラムは提供されていますか?


より突っ込んだ機能・仕様・拡張性の確認

実際に自社で活用していくには、自社の組織やビジネスプロセス、仕事の仕方にどれぐらいソフトウェア側で柔軟に対応できるかもチェックしたいところです。カスタマイズし過ぎはツールやシステムの複雑性を増してしまい、あとあとのメンテナンスを困難にすることもありますが、ユーザの自律性を高めるためにある程度は有用です。
また自社が利用している他のソフトウェアやシステム基盤との接続も大事なポイントです。さらには、昨今はプロセスマイニングやRPA等の自律化ソリューションも豊富なため、それらとの連携も確認してみたいです。

・ユーザー側でインタフェースを変更することは可能ですか?
・ユーザー側でロジックを拡張することは可能ですか?
・ユーザー側で出力できるレポートにはどんなものがありますか?
・どれぐらい細かいアクセスコントロール(権限設定)ができますか?
・保存できるデータやコンテンツの量に制限はありますか? 
・ユーザーからの同時接続数に制限はありますか? 
・アクセス負荷はどれぐらい耐えられますか?
・システム側で出力されるログにはどんなものがありますか? ログはどのような分析に使えますか?
・自社の他のシステムやツールとの接続は容易ですか?
・RPA製品との接続は容易ですか?


データ活用やアナリティクス

現代のソフトウェアは単にその機能により、タスクこなしていくだけのものでは最早ありません。使用することを通して蓄積されたデータの分析による現場の把握やそれに基づく意思決定、またデータから機械学習モデルを構築し将来の活動を最適化していくというアナリティクスが大きなトレンドとなっています。データに関してはよくよく聞いておきたいところです。

・利用状況や統計情報などを可視化できるダッシュボードなどがありますか?
・データサイエンスや統計に詳しくないユーザーでも、データの分析は簡単ですか?
・データ分析の単位に関しては、どのような柔軟な設定ができますか? (ユーザーセグメント別、部署別、事業別、等)
・自社の他のシステムやツールとデータ連携をすることは可能ですか?
・ユーザー側でのデータのエクスポート/インポートはどのようなフォーマットで可能ですか?
・生データをエクスポートすることは可能ですか?


カスタマーサポート・アフターサービス・運用・保守

導入して使用を開始したあと、わからないことや操作に悩むときがあります。想定外のエラーにぶつかったり、システムトラブルに見舞われることもあります。またクラウドサービスでも時にはユーザー側での運用や保守がある程度必要になることもあります。そのようなケースを考えた際に、どのようなヘルプやサポートが受けられるのかを尋ねましょう。海外で開発されているサービスや製品の場合、簡単な質問は日本語で対応してくれるが、込み入った質問は英語でのテクニカルサポートしか受けられないということもありますので要注意です。そして発見されたバグへの対応、セキュリティ脆弱性への対応をどのようなポリシーで行っているのかも必須確認事項です。

・どのようなカスタマーサポートや保守を受けられますか?
・ユーザー側で必要な運用や保守はありますか? 
・メンテナンスによるダウンタイムはありますか?
・システムエラーが出た際の対処やサポートはどうなりますか?
・(海外のソフトウェア・サービスの場合) テクニカルサポートを日本語で受けることはできますか?
・製品のバグや修正依頼にはどのように対応していますか?
・セキュリティの脆弱性に対してはどのように対応していますか?


価格・料金・コスト

さて、とうとう価格を確認する段に来ました。固定費がどれぐらいなのか、従量課金となる部分はどれぐらいか。価格はライセンスが細かく別れていて、簡単に理解できないケースもあります。開発が必要だったり、重要な機能が別料金になっているケースもありえます。最低契約期間や途中契約解除のペルナティ、はたまた最初は低価格だが利用が増えるにつれて負担割合が上昇していくケース、逆にバルクが効いて割り引かれていくケース等、ここの確認は慎重かつクリティカルな質疑になります。

・価格設定はどうなっていますか? どのようなライセンス形態ですか?
・最小契約単位や最低契約期間はどのくらいですか?
・追加料金が必要な機能やサービス(コンサルティング、アドオン機能、API 等)はありますか?
・使用が増えていくとライセンス料金の考え方は変わりますか?
・途中での契約解除はできますか? 契約解除にあたって必要となることはなんですか?


戦略および製品ロードマップ

ここではベンダーの業界における戦略やロードマップについて質問することで、購入をしたあとのベネフィットがどう高まるのか、あるいはどういうような制約を受けるのかを聞くことになります。まずはベンダーが自社内で開発したのか、買収等で手にいれたものなのかというソフトウェアの成り立ちを聞くことで、ソフトウェアの今後のロードマップがベンダーの他の製品・サービスと統一されたアプローチになるのか、そうでなく煩雑になる可能性があるのかを確認します。そして、将来における製品の機能拡充による発展の可能性というプラスの面だけでなく、ベンダーロックインの果てにサポート終了になってしまうということがないようにリスクにつながりそうな要素も把握しておきます。

・このソフトウェアは貴社で開発されたものですか? それとも買収等で構築されたものですか?
・今後の機能追加・拡張の予定は?
・長期的なロードマップと発売時期について教えて下さい
・EoS(サポート終了)に関するポリシーを教えて下さい


エコシステムの評価

提供されるソフトウェアやカスタマサポートだけでなく、ソフトウェアを取り巻くエコシステムがどれぐらい充実しているかというのも重要なポイントです。例えば、ユーザーコミュニティが運営されており、ユーザー同士のコミュニケーションで問題の解決やビジネスの進展も期待できるということがあります。できれば、既にユーザーとなっている企業の意見も聞けるとよいです。エコシステムに関してはパートナー企業がいて関連ツールがたくさんあり、業務にあったカスタマイズを助けるということもあります。

・ユーザーコミュニティはありますか? どれぐらい活発に情報交換をしていますか?
・他のユーザー企業の話を聞くことはできますか?
・貴社のソフトウェアの関連サービスを提供しているパートナー企業はありますか?


ベンダーの評価

カスタマーサポートのあり方や戦略や製品ロードマップを踏まえながら、ベンダーそのものの評価も明確にしておきましょう。眼の前の営業担当だけでなく、顧客企業に対する体制がどうなっているのか。人材の充実度合いも確認します。業界の課題や自社のビジネスをよく理解しているのかどうか。仮説を持っているのかどうかについても聞いておきたいです。
また、ベンダーと取引をすることでどのような付加価値もあるのか。定期的なニュースレターによる情報の提供や様々なセミナーの提供等も単なるおまけという範囲をこえて自社のビジネスの成長にプラスになるものかどうかを見極めて加点要素としましょう。

・弊社の担当・サポートをしていただける体制・人材について教えて下さい
・業界の課題はどのようなものだと分析されていますか?それに対する貴社のソリューションは何でしょうか?
・弊社の課題は何だと思われていますか?
・他社と比較した際の貴社のビジネスモデルの特徴があれば教えて下さい
・貴社の製品・サービスの顧客向けへのセミナーやニュースレター等ありますか?


終わりに

以上、ソフトウェアベンダーから打ち合わせにおいて、どのような質問をして確認をしていくことで自社のビジネスにあったツール・ソフトウェアを見極めるかについて述べました。
今日、いかにデジタル時代に有用なツール・ソフトウェアを採用し、自社が持つポテンシャルを解き放っていくかは、競争上の差別化を図る上でも重要なポイントになります。実際の打ち合わせでは、全ての質問を網羅する必要はありませんし、営業から提供を受けた資料で確認できることも多いでしょう。一回の打ち合わせでは消化できず、複数の打ち合わせをもってもらうことで利点・リスクを正しく理解できることもあるでしょう。ここであげた確認点を参考にしつつ、効果的な選定に役立てていただければと思います。

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