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人材育成国際会議「ATD22」参加レポート

今年も参加しました世界最大規模の人材開発/タレント開発の国際会議「ATD22(ATD-ICE (International Conference & Expo))」
コロナの影響で、2020年はバーチャル開催となり、昨年と今年はバーチャルとリアルのハイブリッド開催となりましたが、今年はアメリカのオーランドで開催され、リアル参加者もかなり戻ってきたようでした。

コロナ前の参加者は約13000人ほどだったようですが、今年はリアル(5400人)、バーチャル(2500人)とあわせて、約8000人で、コロナ前の約半分といったところでした。
世界的にはだいぶ感染状況も落ち着いてきて、こうしたイベントもリアルでの開催が少しずつ戻ってきていますが、まだまだコロナ前の日常には戻り切っていないのが実情のようです。(現地の様子ではマスクしている人は皆無でしたが・・・)
 
一昨年はコロナ禍真っ只中、かつ初めてのバーチャル開催ということで、私もかなり気合を入れて視聴しましたが、昨年は正直、やや流し気味での参加でした。(今思うと、なんとなくトレンドの変化も感じづらかったのかも)
今年は自分自身がATDジャパンの理事を務めさせているということもあり、再度気を引き締めて、様々なセッションを視聴しました。
とはいえ、私が視聴できたのはキーノート含め、約15セッションぐらいで情報としてはかなり限定的なので、今回は私自身が参加(視聴)したセッションに加えて、私以外のATDジャパン理事の方のおススメコンテンツやATDジャパンのイベントで共有頂いた内容も交えて、以下14のラーニングトラックの中からテーマごとのトレンドや役に立ちそうなセッションをピックアップしてご紹介します。

ちなみに、2014年からATDのイベント(~2019までは台湾でのアジアパシフィックの大会)に参加していますが、毎年のトレンドをまとめてみるとこんな感じです。

既に2014年には「VUCA時代だ」という話が出ていましたが、当時は正直、「ふーん」という受け止め方ぐらいでした。あれから10年近く経ち、まさにVUCA、それもVUCA2.0といった混沌の時代の真っ只中という感じです。

まずはサマリー

まずは全体を通じて感じたことを私なりにまとめてみました。

キーノート

また、個別セッションのご紹介の前にキーノート(基調講演)について簡単に触れておきます。スピーカーは、このお三方です。
見事に私は誰も存知上げなかったのですが、アメリカでは著名な方々のようです。
個々の内容は割愛しますが、皆さんの共通的なメッセージとしては、マインドセットや個人のストーリー、パッションの重要性等でした。お分かりの通りメッセージ自体は何ら真新しいものではないものの、なぜ彼らがキーノートスピーカーに選ばれたのか?という点も一つの示唆だったのかなと感じました。
画面越しであっても彼らの熱量を感じられましたが、やはり生で聞きたかったなー、というのが正直な感想です。

リーダーシップ開発

最もセッション数が多かったの「リーダーシップ開発」ですが、これまでもATDではトップトピックスの一つでしたが、コロナによって働き方の多様化が急速に進み、そうした中でのリーダーシップが改めて注目されているようです。
 ・Leading in a Post-Pandemic World
リモートワーク中心の働き方になり、管理職が疲弊している状況。そんな中で管理職に必要とされるスキルがいくつか紹介されていました。メンバーに対して、「明確な期待値を示す」ということが最も重要と強調されていたのが印象的でした。
 
・How Leaders Can Use Personal Branding to Engage Their Teams
→人と人とが"スクリーンの中だけの繋がり"になり、テクノロジーの真価が人間性を犠牲にしているのではないか?そうした状況では、「パーソナルブランディング」が効果的で、一人ひとりの「スーパーパワー」を見つけ出して活かして行こう、という内容。スーパーパワーとは、 「その人が最高の価値を提供する源となる強み」で、他者からのフィードバックで見つけ出そう、というものでした。
・Putting the simple Truths of servant Leadership into practice
 →サーバントリーダーシップの重要性。謙虚であれ、といったマインドセットに加え、「信頼」「フィードバックを受け入れる」といった必要なスキルも示されていました。

タレントマネジメント

トレンドワードとして、近年アメリカで起きているGreat Resignation(大量離職)や、DEIBがホットトピックスのようでした。
ついこの間までは、D&Iと言っていたものが、DEI(Equity/公平性が追加)になり、更にBelongingのBが追加されてDEIBとなっていたことには驚きましたが、日本でも育児法や女性法の改正、人的資本開示の流れ等、いかにタレントに選んでもらえる組織になるか、といったこのテーマから派生する応用問題がいくつか生まれているという印象です。

学習科学

The Neuroscience of Purpose: Wired to Become 2.0
→ATDでは最近お馴染みの脳科学者 Andreatta氏のセッション。
最近バズワード化?しつつある「パーパス」の影響について脳科学の観点から紹介されていた興味深い内容でした。
なんと「パーパス」は、神経系、フィジカル、メンタル、だけでなく、組織の成功にもポジティブな影響があるとのことです。

インストラクショナルデザイン

既に学び方としてはかなり一般的になった「ミクロ(マイクロ)ラーニング」と、その対義語として示されていたこれまでの学び方である「マクロラーニング」の使い分けのポイントの紹介です。
短期間で個別課題を解決するには、「ミクロ」が効果的だけど、総合的なスキルや能力を深めに学んで育成していくには「マクロ」じゃないと難しいし、そうした長所/短所や特徴を掴んで適切に使い分けていこう、という内容でした。 

トレーニングデリバリー

Lessons in Implementing a Blended Learning Approach for MOOCS
→Moocs
(無料のオンライン学習環境)を定着させ学習効果を高めたGSK社(インドネシア)の事例です。
学習者のペルソナを理解することが大事。その上で、ブレンドラーニングの活用やビジネスゴールとの紐づけ、ナッジの活用、リーダーの巻き込み等、様々な観点でのアプローチが紹介されていました。

ラーニングテクノロジー

Why Most E-Learning Fails and How to Fix It(なぜeラーニングはうまくいかないのか?)
→正しい学び方をしているか、学びはイベントではなくプロセス、大人の学び(アンドラゴジー)は子供の学びと違う、大人の学びの特徴を理解しよう、そのためにはニーズ分析や行動観察ををしっかりやろう、ニーズ分析の方法いろいろあるよ、といったかなり実践的な内容でした。

未来への準備

今回から新しくできたラーニングトラックです。
キーワードしては、リスキリング、リバースメンタリング、ウェルビーイング、アンラーニング、GenZといったところでしょうか。
Scaling Upskilling Community X Blended Learning
→アップスキルの取り組みをスケール(拡大)させるためのポイントとして、実用的、選択肢を与える、EX、コミュニティの活用、目標設定、変化を後押し、といった点を挙げていました。
また、4つの「ライン」(On-line、In-line、(研修やワークショップで学ぶ) Front-line(業務への適用) Bee-line(共有や内省を通じて共に成長))を活用しよう、というユニークなコンセプトも紹介されていました。
 

今回の学び

まだまだご紹介したい内容もありますが、個別のセッションのご紹介はここまでにして、最後に今回のATD22への参加を通じて得られた学びはこんな感じです。

いかがでしたでしょうか?
このまとめをしていてふと思い出したのが、先日亡くなられた元サッカー日本代表監督のオシムさんの言葉でした。(急にサッカーの話ですみません)
「野心を持て」「自分の意志を信じろ」「自分で考えろ」等々、まさにここで感じたことを既に教えてくれていたのかも、と思うとしみじみとしてしまいました。
※2023年はサンディエゴでの開催が既に決まっています。ご興味ある方はぜひ現地に!

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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