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"黙秘権"を教えてくれた、教師の卵たちへ。

職業柄、自分の気持ちを聞かれることがある。
その時わたしはいつも言葉に詰まる。
(言ってもいいのだろうか。)



ふと、学生時代の自分を振り返ると
必ず思い出すことがある。
今でもわたしを苦しめる、
大学1年生での出来事。


「なんとなく」で応募したサークル。
めんどくさくて抽選会は帰った。
けれどその日、駅で見知らぬ電話番号から
当選報告を受けた。

サークルに入って初めて関わる大学の先輩は、
1ヶ月経たない前まで高校生だった自分には
とんでもなく"大人"に見えた。
そして出会った、1学年上の先輩。

活動後の合同飲み会で初めてゆっくり話した。
下宿で一人暮らし。車を持っている。
成人していて合法でお酒が飲める。
先輩のことが"かっこよく"見えた。

性格とか趣味とか相性は合わなそうで、
はなから恋愛対象ではなかった。
ただ、"自立"というかっこよさを持ったその人に
「近づきたい」思いがあった。

今思えば、その「近づきたい」を
履き違えていたのだ。

話したいですと言ったらご飯に連れていってくれた。
何を話せばいいんだろう、と正直気まずさもあった。
しかしいざ話せば話題は出てくるもので、
自分に無いものを持った先輩により憧れを抱いた。

後日サークルに顔を出すと、先輩の同期が
「おっ」というような表情でこちらを見る。
そしてニヤニヤと笑いながら口を開きこう言った。
「○○とメシ行ったんだって?」


その表情に、その態度に、その言葉に、
ひどく嫌悪感を抱いたことを
今でも鮮明に覚えている。
反射的にその場を飛び出してしまった。


走ってその場を離れて、涙が出てきた。
秘密にしてほしかったわけじゃない。
他意の無い質問だったかもしれない。
でも、なんで、わざわざ。

それからわたしは先輩のことを避けた。

よくある話だとは思う。
けれど、ここに書いたことはほんの一部。

「結局どうなの?」「好きなんだろ」
「あいつもメシ行ったらしいぞ、戦えよ」
周りが勝手に尾鰭をつけて、別物に変えていた。
それを拡散していた。
わたしに直接ぶつけてきた。
気がついた頃にはわたしも話に合わせて
ヘラヘラ笑ってた。そうかもしれないと認めていた。
わたしにも原型がわからなくなった。

ぐちゃぐちゃに、踏み荒らされた気分だった。


知られることが怖くなったのは明らかにこの時からだ。
当事者同士でない、第三者に話が回るのが怖かった。

恋愛に関する話題は特に嫌いになった。
相手から振られたときは
「はい」も「いいえ」も言わず、
適当に誤魔化して話題をすり替える。

その時に学んだ。
自分が「そう」だと言わなければ、
何を言われても
「あぁ、勝手な憶測立ててるなぁ」と流せる。
そうして自分を守ることができて済むのだと。

反対に、自分も相手のことを
勝手に誰かに話さないと決めた。
自分が意識できている範囲では
相手のことを傷つけないように。
自分が相手を傷つけてしまうときは
故意にならないように。


呪いは今も続いている。
人のことダシにして笑った、
そんな お前ら が教師か。
いい勉強になったよ。さんきゅー。

大事なことなんて誰にも言っちゃダメなんだ
自分の心飛び出せば一瞬で腐る
どんなキレイな言葉を選んだとしても
悲しいくらい見苦しいものに変わる

櫻坂46「cool」より

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