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匂いと生き方

初夏の匂いがする。
ベランダの窓を開けて、外の空気を吸い込んだ。乾いた空気と太陽の匂い。緑の葉が揺れる木々の匂い。遠くでかすかに聞こえるエンジンの音。

職場の匂いを覚えている。
本屋の時は紙の匂い。パン屋やドーナッツ屋の時は、甘い香りと油の匂い。お茶屋の時は、地下独特の循環する空気の匂い。その匂いを嗅ぐと、ああまたこの匂いの中にいるんだと息が詰まるような感覚になることもある。
たった数時間しか別の空気の場所にいないなんて。

自分の家の匂いはわからないのに、人の家の匂い、友達のロッカーの匂いを感じたときに自分じゃない存在を強く感じる。私は自分の匂いに安心するタイプだから、香水や柔軟剤は得意ではない。そのありのままの姿から出る匂いって、なんなんだろう。

思考力を働かせてないから、自然とゆるく過ごせているんだけども。
突然別の匂いに殺気立つこともある。感情は紙一重だ。
私はストレスレスに過ごせているとは思うけど、でもこれじゃあ何もしない人間じゃないかと思う。月末は焦るのかもしれないな。

ゆっくりゆっくりとは言うけど、ちゃんとしたいと思うとバランスが崩れる。早足くらいになりたい。でも早足じゃだめなんだよなあ。難しい。
生きることがストレスだともはや言ってしまいたい。それは簡単だ。しかし中身は空っぽだ。

もがくこともなく、憤ることもなく、穏やかに。
そうやって生ていけるんだろうか。



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