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季節の足音が聴こえる

クリスマス。
赤、白、緑、金、銀色と…キラキラ光る華やかな街並み。

サンタさん、プレゼント、トナカイ、聖夜、恋人、失恋…さまざまなテーマに沿って歌われているクリスマスソング。

そして、胸が高鳴る“鈴の音”。
私は、この時期に鈴の音を聞くと「シンシンと雪が降る様子」が目に浮かぶ。昔から頭の中でイメージしているからかもしれない。
少しの間、耳を澄ませて聞いていると、サンタさんとプレゼントをソリに乗せたトナカイが静かに近づいてきている気配すら感じる。


そして、お正月。
“洋”から“和”へと変化する街並み。クリスマスツリーから、門松や鏡餅へ。

「もういくつ寝ると〜」という音楽と、おせちやお酒の買い物に来る人の雑踏で賑わったスーパーや商業施設。

“鹿おどし”と、チャポチャポ流れる“水の音”。
我が家には鹿おどしも、水の流れる庭園などもなく、耳馴染みのある音ではないはずなのに
なぜか「懐かしい、ホッとする」と感じる音だ。


“音”の変化だけでも、とても楽しい。

まるで、季節が歩いている足音のようだ。


大事な場面では、無音。


クリスマスにしても、お正月にしても

クリスマスイブの夜や
初日の出、元旦の朝など。

“無音”である方が、よりその雰囲気が神聖なものに感じられるような気がする。
音がなく、静かな夜や朝の、その前後の時間が賑やかであればあるほどに。


映画やドラマ、アニメでもそうだ。

音がなくなることで、その場面に対して
注目が集まる。
緊張感が高まる。

集中してみていなかったら、「ん?どうしたんだろう?」とみてしまうし、
作品に入り込んでみていたら、「…っ!」とか「…はっ!」とか声にならない声をあげて、気づけば息を止めていたり、目を見開いていたり、反対にギュッと目を閉じているかもしれない。

“音”の効果は絶大だ。

だからこそ
私は元旦の朝、届いた年賀状をポストに取りに行きがてら、風がなく、いつもよりも静かな家の前で、その年初めての深呼吸をすることが毎年恒例だった。

「新しい一年が始まる」と実感する、神聖な瞬間。

自分の中だけの、恒例行事だ。

しかし、年賀状が減った今。
この恒例行事は年々少しずつ、朝日や無音な空間、新鮮な空気を堪能する時間が短くなっている。


イヤホンを外していた理由は。


そういえば最近、移動中にイヤホンをつけていない。

学生の頃はほぼ毎日、常に何か聴きながら移動したり、作業したりしていたというのに。

…理由を考えてみよう。


まず、「移動中に音楽を聴いていることは危険だ」と誰かに言われたこと。

大音量の場合に限るかもしれないけれど、確かに注意力が落ちたり、人の声に気づかないことがあったかもしれない。
車のクラクションの音や、後ろから自転車が来ていること、「あのー」と呼び止められていることに気づけないと困ると思ったのだろう。


そして、周囲に対して危険度を察知する力が必要だと感じたこと。

電車などの密室空間や公共の場での、物騒な事件をニュースで見た。そういった出来事があった時に音楽に集中していたら、すぐに反応することが出来ないと思ったのかもしれない。


あとは、環境音だけでも十分良いBGMになっていたこと。

鳥の声。
子供の笑い声。
虫の声。
風が木を揺らす音。
葉の擦れる音。
雨が窓を叩く音。
雨が屋根から落ちる音。
通り過ぎたお店から微かに聞こえるジャズの音楽。
近所のピアノ教室から聞こえる練習中のピアノの音。

それらの音を、「ずっと聴いていたい」と思ったことがある。

誰かの作品である音楽を聴くことも楽しいけれど
終わりもなく、自由に、無造作に奏でられている音楽というのは、飽きがこないように感じる。


世界は、音で溢れている。


気分に合った音楽を聴いていると、
まるで自分が何かの作品の主人公になったような気分になる。

BGMとしての音楽も
自然の中で流れている音楽も
誰かと心を通わせる音楽も

サイレンやクラクションなどの危険を伝えるための音も

無音でさえも

私たちの生活に大きく関わっている。


今日からは
クリスマスからお正月への変化と
神聖な場面での静けさが楽しみだ。

そして次は
2月のバレンタインデー
3月、4月の卒業式、入学式…
夏になったら蝉の声。夕方にはヒグラシ、夜には鈴虫の声が聞こえるだろう。
秋になったら枯葉の落ちる音と、落ち葉を踏んだ時の音。
冬は、自然界では皆眠っていて、静かな印象だけれど
その代わりに町中にクリスマスソングが流れて賑やかだ。

気づけば一年中、音を楽しんでいる。


時にはイヤホンをつけて、自分の世界に入り込んで。
時にはイヤホンを外して、自然と入ってくる音を堪能して。

季節とともに移り変わる音楽の変化を楽しんでいきたいと思う。


2023.12.26

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