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忘れられないハロウィンの思い出~ましログらし2

はじめに

ハロウィン。そのイベントは、ある種クリスマスやバレンタインと同様に、いや、もしかしたらそれ以上に、みんなが盛り上がって夜を明かしたくなるイベントの1つかもしれない。そしてそれは、日本だけでなく、私、真しろが今いるイングランドでも変わらない。


とはいえ、イングランドの大学のハロウィンがどんな物なのか。身を持ってそれをた意見するのも、真しろにとっては「修行」と言えるのではないか。


この記事では、イングランドの大学で体験したハロウィンについて、ちょっとテンション高めにつづってみたいと思う。とはいえこれを真しろが書いて、そしてこれが読者諸氏の目に届くのは、おそらくハロウィンの2ヶ月後なので、曖昧な表現になってしまっていることはご容赦いただきたい。


2 眠れない夜の始まりを告げる雨


真しろの修行場であるエセックス大学では、ハロウィンの夜、学内のバーやクラブで、夜通しハロウィンのイベントが行われた。バーやクラブはそうでなくても夜遅くまで学生たちで賑わっているのだが、その日は格別で、クラブのチケットは数日前には売り切れてしまうほど、皆しっかりと準備をして臨んだ。この地にやってきて1ヶ月だった真しろは、そんなことも知らずにのんきに構えていた物だが、修行の先輩方やメールの広告の言うとおり、早めにチケットを購入した。


とはいえ最後まで課題となったのはどんな衣装で臨むかであった。アニメのコスチュームだとか、妖怪のコスチュームだとかいろいろ考えたけれど、用意できぬまま当日の夜を迎えた。すると、寮の隣人の学生さんに、ネコのペイントをしてもらうことになり、なんとか見た目のほうも準備ができた。


眠れない夜の始まりは22時過ぎ。寮に迎えに来てくれた映画のキャラクターメイクの友人と連れだって外に飛び出せば、狙っていたかのような雨が、真しろたちのメイクを剥がしにかかってくる。これからが勝負だというのに、空から水を差すとは何事か。だがこれはこれで、眠れない夜に羽目を外すなという神様からのお達しと受け取って、いよいよパーティー会場へ急いだ。


3 歌え、踊れ、叫べ!


ハロウィンは仮装を見せ合いながらワイワイするイベントなんじゃないか。それぐらいのテンションで飛び込んでいった真しろであったが、その期待は少し正しくて、ほとんど間違っていた。仮想はもちろん大切なのだが、もっと大切なのは、パーティーで盛り上がるテンションだ。それが証拠に、クラブで踊ることに全力を注ぎたい人たちは、軽く何かのメイクはしていても、重い衣装などは着ていなかった。彼らがハロウィンでやりたいことは、歌って踊って叫ぶことなのだ。


バーでもクラブでも、DJたちが選りすぐりのセトリで参加者たちを盛り上げにかかってくる。参加者たちは、その曲を知っていようといまいと(少なくとも真しろよりは知っている人たちばかりだろうが)、適当に歌い、適当に踊り、適当なところで叫んでいる。汗だらけになって本物の顔があらわになろうと関係ない。ハロウィンは、何かになりきる場所ではなくて、自分が自分として盛り上がる場所なのだから。


4 盛り上がらないほうが疲れるという現実


イングランドのハロウィンという以前に、真しろはクラブで夜を明かすのが、今回初めてであった。クラブは大音量の曲が流れ、大量の人々と肩を寄せ合って騒ぐ物だ。隣の友人と会話を弾ませるなんてことは想定されていない。つまり、元々ない視力にプラスして、大きな音に聴力を遮断された真しろにとって、楽しめるかどうか分からない場所であり、死活問題として、友人たちとはぐれてしまったら、その時点で再会するのは不可能と言っていい。ちなみにはぐれた友人を見つけるのは見えていてもほぼ不可能だ。


盛り上がる雑踏に押しつぶされ、よく分からない洋楽のセトリに盛り上がることを強要され、パーティーが始まって2時間ほど経つと、そろそろ踊るのにも疲れてきて、しばらく軽くジャンプするだになってしまった。大声が頭に響いてうるさい。最初のころと違って知らない曲でもはしゃげない。息が苦しい。友人たちの声が遠い。もうリタイアして帰ろうか……。


そのとき、知っている洋楽が流れた。これなら踊れる。そばにいた友人の手を取って一緒に踊る。すると、さっきまで疲れていて足も上がらなかったのに、それが嘘のように足が軽くなった。意識もはっきりする。みんなと同じように叫べる。


つまり、クラブでは、盛り上がれなくなってたちどまってしまった時点でもう悪循環に入ってしまう。クラブでは疲れたから盛り上がれなくなるのではなくて、盛り上がれないと感じた瞬間に疲れを感じてしまうのだ。分からない曲だろうと、踊れるか分からなかろうと、自分が全力で盛り上がっていれば、疲れは感じにくくなる。そしてそれは同時に体に危険を伴うので、自分の体の声をしっかり聞けない人は、きっとパーティーには向いていないのだろう。


ともかく、パーティーもフィナーレまであと1時間を切ったころ、真しろの体は疲れの悪循環からなんとか脱却した。そしてそんな真しろを待っていたのは、美しすぎるクライマックスであった。


5 予想外のクライマックス


突然女の子に声をかけられた。修行を共にしている女の子の1人で、気の合う仲間でもあった。軽く話をしてそれで終わるはずだと思っていた。けれど、大音量の音楽と、人々の熱気と、壊れてしまった真しろたちの心は、そんな簡単にこのパーティーを終わらせなかった。


気づけば、汗だらけの手で、誰かの手を取っている。さっきまで一緒に踊っていた友人の誰かだろうか。そう思ってハイテンポの曲を踊る。いや、背の高さから考えてずっと一緒に踊っていた友人ではない。ということは……。気づいたときにはもう止められなかった。


異性の人と2人でダンスを踊るなんて、海外のドラマや映画でしか見たことがなかった。もちろん緊張はした。でも緊張をしている場合ではなかった。それ以上に真しろは、彼女とのダンスを楽しんでしまっていた。


真しろは、楽しみながらも、崩壊してしまったテンションで頭をフル回転させていたんだと思われる。こんな汗だらけの手で彼女の手を握ってしまって大丈夫だっただろうか。普通は自分が彼女をエスコートすべきじゃないのか。自分は決してうまく踊れるわけではないけれど、どうやってステップを合わせればいいのだろうか……。


彼女はきっとそんなふうに、いろいろと一気に考えを巡らせながら踊っている真しろの心中なんて知るよしもないだろう。しかし彼女は、不器用に自分らしく踊る真しろのステップに、どこまでも合わせようとしてくれた。気まぐれに真しろが万歳をしたら、一緒に万歳してくれた。突然腕を回転させたら一緒に回転させてくれた。曲が変わってステップの踏み方を変えても付いてきてくれた。感謝することしか真しろはできなかった。それは彼女に対する感謝でもあり、ほぼ初めてのクラブで初めてのハロウィンに疲れて倒れそうになりながらもずっと踊り続けた真しろ自身に対してでもある。永遠に終わらない気がしていた眠れない夜は、気づけば終わっていて、お互い汗だらけになっていた真しろと彼女の手は、気づけば離れていた。


6 Song for you


いつもの通り、Song for youのコーナー! 今回は、記事の内容には直接関係ないが、真しろが初めて異性と踊った曲である、クイーンのDon’t Stop Me Nowをチョイス! 子供のころから大好きな曲だったので、その曲をそんな形で踊れるなんて夢のようで、本当に止めないでほしいと強く願ったほどだった。
ご視聴になりたい方はこちら。

https://open.spotify.com/track/0DrDcqWpokMlhKYJSwoT4B?si=jt7Wn88zQTi_6MRbJX-Eew


7 おわりに


2ヶ月経った今、こうして言葉にしてみても、あの夜の興奮だけはしっかりとよみがえってくる。クライマックスに2人で踊ったことだけではなく、友人と大声で歌ったことや雨に降られてメイクが剥がれそうになったこと、疲れて会場で倒れそうになったことも含めてである。


ハロウィンは人の多さや物騒な事件の多さゆえに、今まではなんとなく距離を取っていたイベントであった。来年以降どういうふうに参加するかは正直分からない。ただ1つ言えるのは、初めて体験したイングランドのハロウィンは、真しろにとって忘れられない夜になったということであろうか。


それでは今日はこの辺で。Have a nice day!

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