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自由詩:屋上のアネモネ

『裏切られるのは
これで何度目だろうか
もう何もかもに疲れた
大好きなこの春花が
苦のない世界へと
私を導いてくれるだろう』


珈琲を片手に屋上に出ると
先客がいて様子がおかしい
「死ぬ前に話を聞かせて」
と彼女を思いとどまらせて
持参したアネモネを
その手に握らせてから
失恋の苦を互いに共有し
二人で無事下階へ降りた

思いがけず人助けをして
部屋に戻ると書き置きした
遺書を破り捨てて
私は新たに購入した
白のアネモネを窓辺に飾った

#花言葉 :恋の苦しみ、見捨てられた
〈白色〉希望

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