散文詩:そして、息をする
息を全部吐き出すと
目の前は真っ暗闇になった
人生は苦しいのが当たり前
病気と共に生まれ育った僕は
家族や医師看護師が
想像するよりもずっと
心を閉ざして過ごして来た
人前では明るく振る舞ってただけ
まわりが励ますほどには
長く生きられない事実も知っていた
だけど自分だけが苦しいんだと
決めつけて内心不貞腐れていた事を
今夜は本当に後悔している
そして最高に幸せだ
ママのこんな大きな嬉し涙を見れば
僕が宣告された余命を超えて
特別な今日を迎えたってことは
誰だってわかるのさ
再び照明が灯されて皆の笑顔と
火の消えたローソクの立つ
バースデーケーキを目の前に
来年もママを嬉し泣きさせるんだ
と心に決めた
そして大きく深く息を吸い込んだ
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