見出し画像

金沢の白い建物に隠れている夢のようなカフェ

金沢観光をする上で欠かせない観光地は、兼六園金沢21世紀美術館だ。

兼六園の真弓坂入出口に大きめの交差点があり、斜め横断ができるということで何となく渋谷のスクランブルを思い出す。でもこの交差点が渋谷と違うのは、右に金沢城、左に石浦神社があるということだ。まっすぐ行けば、香林坊と長町武家屋敷跡もある。

そして石浦神社の手前に金沢21世紀美術館がある。

21世紀美術館の外側には芝生や木々が生い茂っている。そこにはアート作品が数点置いてあって、全く別の世界のはずなのにアートと自然の国境が薄くなっているのだ。地球の歴史と現代アートを同時に楽しめる。
21世紀美術館の館内は、一面真っ白な壁に覆われていて完全に白の世界になる。円形の館は外周全て通路になっていてガラス張りだ。21世紀美術館を囲む自然の爽やかな緑を、目で、そして心で楽しめる。

冬になると、真っ白さが倍になる。大型の雪見だいふくの中にいると思うぐらい、感動的で美味しそうな雰囲気にもなる。金沢のど真ん中にいることを忘れる。今何時、何日、何年をパッと聞かれたら答えられない可能性が非常に高い。なぜ言いきれるかと言うと、僕がいつもそうなるからだ。

童話のようだ!
ここで美味しいスイーツとコーヒーで休憩したいけど、現実に戻りたくないあなたに金沢のとっておきな童話をこっそり教えておく。

21世紀美術館を背にして赤煉瓦で作られた金沢市役所が目の前に見える位置に立つ。そして自分の前にある道を左に曲がってメイン通り沿いに3分ほど歩けば、閑静な路地裏がある。そこをたった30歩進むだけで、とある真っ白な建物に辿り着く。

何かの事務所の入り口と勘違いするほど隠れている、いや隠されているカフェがある。
建物の入り口から数歩進めば、童話の中にある童話が目に入る。嘘かと思っていたあなたは、現実だということに気がつくだろう。

この童話の目的地は路地裏に隠れていた「カクレザトコーヒー」だ。
入って雰囲気を見て、思わずはっと息をのむ。

「ここはなんだ!金沢?いや、日本?」と混乱してしまう。童話に隠れていたあなたのためだけのカフェだ。今まで見たことがない空間は、さまざまな角度から心に響いてくるだろう。

席の反対側に夢を超える現実もある。白い壁の前で輝いているコーヒーマシンの隣に、茶色からオレンジの間のグラデーションのものがある。綺麗すぎてアクセサリーなのかと思い近くで見たら、なんとパイだった。食べ物はこんなに綺麗なのか、と初めて考えてしまうほど、食べるのが勿体無い。しかも、生地から手作りの自家製パイなのだ。

心と相談しなければならない。パイ一つだけじゃ、済まない。
甘い系にするか、肉パイにするか。ラムレーズンにするか。このような難しい選択肢は人生には滅多にないだろう。

熱々のパイとホットコーヒーはこんなに美味しかったっけ?と、脳内にセロトニン物質がめいいっぱい広がる。
窓から入る光はテーブルと優しい会話をしているような感覚になる中で、初対面のパイからの恥ずかしさが伝わってくる。美しく趣のある家具やカウンターの後ろで働いているお洒落な雰囲気の男女を見て、パイから「会いに来てくれてありがとう」という声が聞こえてくるようだ。

食べれば食べるほど、美味しくて食べたくなる反面、悲しさも少しずつ心の中で膨らむ。一口ごとにパイとのお別れの時間が迫ってくるのだ。この辺からコーヒーを飲むスピードが落ちてくる。美味しいから食べたい、でも食べたらなくなるという複雑な気持ちを胸にコーヒーに逃げて、少しずつ飲むというわけだ。
コーヒーに手を出すたびになぜかパイの嫉妬心を感じて謝りながら「ヨシヨシ」としながらもう一口食べてしまう。この繰り返しは、しばらく続く。

このお店のコーヒーのカップになりたいほど、ずっとこの空間にいたい。
地面はいつもと違う。家具もいつもと違う。おそらく、童話に囲まれているから心もいつもと違う。外で待っている向こうの自分に戻りたくない気持ちになる。

観光客も地元の人も、一度カクレザトコーヒーに入れば、離れなくなる。
オススメしたいというより、この体験をしてもらいたいから行く前にチェックして行けたら心の準備をすべき。

場所はこの記事に特別に書くからメモしてくださいね。
カクレザトコーヒー
石川県金沢市下本多町6-40-1 1F

ではでは、童話に戻ります。

Massi


この記事が参加している募集

至福のスイーツ

おいしいお店

みなさんからいただいたサポートを、次の出版に向けてより役に立つエッセイを書くために活かしたいと思います。読んでいただくだけで大きな力になるので、いつも感謝しています。