君の笑顔

お願いだから泣きやんで、その時の私はそう願うことしかできなかった。

七月三十一日金曜日、家にいるのは私と赤ちゃんの二人だけ、そして鳴り響く赤ちゃんの泣き声。声の主は姉の子供、生後三か月が過ぎたぐらいだ。
 なぜこんな状況になったかというと赤ちゃんの母親である姉が遊びに行ったからだ。そしてなぜずっと泣いているか、私が何もできないからだ。おむつを替えることもできなければミルクを作ることもできない、あやすために抱きかかえようとすればさらに泣かれる始末、泣きたいのはこっちの方だ。
「お願いだから泣きやんで」そう口に出し心でも願う。それで泣きやんでくれたら全国のお母さんたちはどれだけ楽だろうか。
 心底、思うよなんでこうなったって。今日預かるとき姉にはちゃんと確認したはずだ私は何もできないと。赤ちゃんが泣き始めて五分以上がたったと思う、あやしても泣きやまないと気づいたときに姉に送ったラインが帰ってきた。
『多分お腹空いてると思うから作ってあげて。作り方は……』
 神様仏様お姉さま。私はすぐにミルクを作ってあげることに、でもあることに引っかかった姉の子供はお腹が空いて泣いているときは指をくわえる癖があることを、少し心配になった私はおむつの匂いを嗅いでみることに。うん、臭い。なるほどおむつを替えてほしかったのか、そうかそうか、うん、無理。無理だよ無理だよ。と顔をそむけるが泣き声がやまない。ずっと聞いてると所々むせているようにも聞こえてくる。もう聞いていられない。意を決した私は見様見真似でやってみることに。やってみて分かった、ムズイ。赤ちゃんは泣いてるし、足をバタつかせおむつをけってくるしでもう大変。よくやるよ姉よ。赤ちゃんと格闘しながらおむつを替え終わるといい感じの人肌にミルクが冷めていた。さっそくやることに。そしたら待ってましたと言わんばかりにごくごくと飲み始めるではないか、やっぱりお腹もすいてたのね。勢いがよかったのは最初だけ。最後の方になるとうつらうつらと瞼が落ちてくるではないか、私はせっかく作ったのだから全部飲まそうと思い、寝かけると起こすを繰り返し無事全部飲ますことに成功した。やったーと思ったのもつかの間ゲポォと吐き出す赤ちゃん。はぁごめんよ無理やり飲ませて、赤ちゃんを寝かしつけた後は後かたずけ。吐いた後を掃除し哺乳瓶を洗いおむつを捨てもうやることがいっぱいだけど物音は最小限に。すべてのことが終わり疲れ切った私は赤ちゃんの隣でいつのまにか寝てしまった。次に起きたときは母親も姉も帰ってきており、夜ご飯ができていました。赤ちゃんはと周りを見渡すと、姉に抱っこされキャッキャッと笑っており、やっぱり姉に抱っこされるのが一番なんだと思い少し寂しい感じもあったりなかったり。でも赤ちゃんが笑っているのを見るとさっきまでの疲れが少し吹っ飛んだ気がします。また機会があれば子守も悪くないかな、なんて思ったりもしますね。

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