#連続小説【アオハル】〜第七章・地獄のバンク 4〜
「おおし!一年はピスト持ってバンクに集合しろ!」
『はい!!!!!』
バンクは1周400mで中央は芝生で覆われている。俺達はその芝生に集合させられたのだ。
「バンクは見ての通り傾斜がついてる。どんだけスピードを出しても遠心力で外側へブッ飛ばされない為だ。まずはバンクの走行に慣れるまで周回練習をする。先頭を1周交代で走るからな。番手を変わる場所はあそこの1コーナーだ。先頭は"上がります"って声を出して右側に抜けろ。その後は最後尾に張り付くんだ。ロードと違ってピストは速度が早いから最後尾が見えてからじゃチギレる。その手前で並走しながら最後尾に付け!分かったか?」
『はい!!!!!』
「んじゃあまぁ...気合入れていくぞ!!」
『はい!!!!!』
俺たちは、ピストに跨り竹之内さんの後を追うようにバンクへと繰り出した。
「絶対に下を向くなよ!それと前の奴の真後ろに位置取りしろ!絶対に右側に付くな!それが出来なきゃ下手したら自分だけじゃなく、全員巻き添えくらって死ぬぞ!もしトラブルがあったらスグにバンクを降りろ!分かったか!!!」
『はい!!!!!』
返事を合図がわりにスピードはグングンと上がっていった。速度にしたら50〜55Kmくらいだろう。それに伴い心拍数も上がった。風切り音に自分の息遣いが混じり、口の中は乾燥してきていた。
(くそ..マジしんどい..ギアが重い...)
「おらぁあ!!!1年!!!余計な事考えてると事故るぞ!!!集中しろや!!!」
(魔法使いかよ!?タイミングよすぎだろ!)
「返事は!!!!!!!」
『はい!!!!!』
「どんな時でも返事は基本だろうが!1年坊が舐めんな!」
『すいませんっした!!!!!』
どのくらい時間が経ったのだろう.."上がります"の声掛けすら無意識で出来るようになっていたのに俺は気付いた。気絶から目を覚ます感覚に近いと思う。その瞬間だった。
(ヤバイ....足が...つ..っ....っ...たーーーー!!!!!)
俺の右足のふくらはぎは、ビッキッーと音を立てたんじゃないかと勘違いする程の勢いで俺の体は、ふくらはぎの筋肉を吊り上げた。
コケたら大事故になると瞬時に判断した俺は、少しだけフラついたのだがハンドルにしがみ付くように我慢した。だが痛みは半端じゃない。
「足がつりましたーーーーー!!!!」
「すぐに降りろ!!」
ピストにブレーキは付いてない。自転車でバンクの内周を流しながら自然に止まるか、足に力を込めてブレーキ代わりにするかしかない。今の俺に選択肢なんかあるはずも無く、痛みを堪えながら流す他なかった。涙目で情けない顔になっていたのは内緒だ。
(くそ.....痛ぇぇ....)
周回数58でのリタイアであった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。 無理のない範囲で応援をしてもらえたら嬉しいです。 これからもチャレンジしていきますので宜しくお願い致します。