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雪の練習生(読書感想文)

出会い

約1年前、書店で目にとまったのは、白い装丁に赤い帯のコントラストが冷たさを感じさせる本。

結局、読み始めたのは最近のこと。
惹き込まれて、なかなか忘れられない作品だった。
(このnoteは、本の内容には触れずに書きます。)

解説を読んで

作品が終わって、ひと呼吸おいてから解説を読んだ。
以下の文章を引用してみる。(引用の方法が正しくないことは、どうか目をつぶっていただきたい…)

不思議、というのは、一筋縄ではいかない、という意味である。いや、多和田葉子の場合は縄は幾筋あっても足りない。(p.327)

多和田葉子/雪の練習生/新潮文庫

また、それ以外にも、全編を通して、動物愛護をめぐる種々のクリティカルな問題と、セクシュアリティにかんする極めて現代的な思弁が豊饒に敷き詰められており、ディティールに踏み込んでいったらきりがないほどに、無数のテーマが何重もの編み目になっている。(p.328)

多和田葉子/雪の練習生/新潮文庫

不思議さ、踏み込んだらきりがないほどのテーマ。
私はこの2点に深く共感した。さすが解説。

この作品について言葉にしたくても、140字でおさまらないことは確かだった。それでも文章に残して向き合いたかった。

ここからは、私のことも織りまぜて書いていく。

不思議な感覚

不思議だなぁと思うことはときどきある。誰かと私をつなぐ縁。季節が変わっていくのを感じ取ることができる身体。ふとんの居心地のよさ。

今回は、読んでもつかめない気がしてならない感覚がする、そんな“不思議”だった。

本のタイトル・イラストから、ホッキョクグマのイメージが伝わってくる。そのつもりで、読みながらホッキョクグマを探してみても、ぽやんとしたまま進んでいってしまう。

「たぶん、ホッキョクグマ?」が積み重なっていく。

中心人物(熊?)に感情をよせてみよう、溶け込もうとしても難しい。自分の感覚で読んでしまうから、ことごとく失敗する。

頭のかたいところを取り除いてみなさい、もっと自由に視野を広げて、と言われている気がした。

動物愛護

途中、動物愛護団体のワードが出てきたとき、私は一瞬だけひやりとした。どんな見方で綴られるかどきどきして読んだ。

あっけなく淡々と終わってしまったので安心しつつ、私はあるシーンを思い出したのだった。

大学の講義で視聴した、イヌイットの映像。

迫力あるパフォーマンス、有名人が広告塔となって押し進められる運動。アザラシがかわいそう…という理由だけだったかは覚えていない。動物愛護団体の活動によってイヌイットの収入源が減り、生活に困るシーンが続いた。

同時に思い出すのは、南にある島の人々の暮らし。
クジラを食料とする彼らの暮らしは、文化として認められていた。エンジンの付いた船をもらったが、スタイルに合わず、手放す場面がみられた。

ヒトが決めたルールに沿って振り分けられる、動物と人々の暮らしを、教場のスクリーンでみていた。

イルカショー

もうひとつ、この作品を読んでいるときに思い浮かんだニュースがある。「イルカショー廃止」というものだ。

こちらは動物福祉に関わるものらしい。
生きている環境よりも狭い水槽とショーのための調教、特にこの2つが強く批判されているように思えた。

少し前に水族館へ行った。
何も気にせずイルカショーを観るために席に座って、「久しぶりだなぁ」なんて考えていた。

始まってみると、そのショーは私が観てきたものとは違っていて、イルカの個性と気持ちを尊重する時間になっていた。純粋に楽しむ、そんな雰囲気が心地よかった。

イルカの性格や好きなことを紹介してから、「今は何をして遊びたいか」を探して楽しむ。だから、一斉に飛ぶような大技がみられるかはイルカ次第。

「イルカたちと楽しんでいます」
ショーを観ながら、私たちに何度も投げかけられた。

こうやって文字に起こすと白々しいかもしれないけれど、トレーナーの熱のこもった言葉は「お願い、知ってほしい。」と叫んでいるみたいだった。

おしまい

守ることは一方的なのかもしれないと思う。
自分勝手で、簡単にくずれ落ちるもの。

私たちは勇気を持って対話するほうがいい。

あるものを守るために、押しのけられた他の何かが消えていくのを、どんな気持ちで認識していなければならないんだろう。



ほとんど作品の内容に触れずに、つらつらと書きなぐってしまった。淡々としていて怖かったかもしれない…と反省しているところです。話しにくいけど、外に出しておきたいことだったので満足…かな。たぶん。

雪の練習生!私の好きな本です。
本当に出会えてよかったと思う作品。

あらすじを読んで、手にとって見て下さい!
(とってもやわらかい、雪のような小説です)

次はもう少し上手く伝えられるように…📚

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