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無理やり捨てるのではなく、時期を待つのも手

『捨てるほど若返る!人生の「そうじ力」』P.118より

実家のリビングには、今はもう誰も弾かないピアノがあります。
このピアノは妹が小学校3年のときに父が買ったものです。

お正月やお盆など家族一同が集まると、このピアノの話題になります。
母が捨てたいというのです。

母からすれば、誰も弾かないピアノはもう役目を終えて、
今では、ホコリをのせることしかない迷惑なガラクタなのです。

しかし、父は、頑として「捨てない」の一点張り。

あまりに家族全員から「捨てるべきだ」と攻撃されるので、
話題が変わるまで、父も黙り込んでしまいます。

夕食の時間に、お酒も入って父もいい感じになったとき、
「思い入れのあるものはそう簡単に捨てられないよね」
とさりげなく聞いてみました。

すると父は、心の内を明かしてくれました。

「このピアノは、小さい頃からなんにも欲しがらないA美が、
小学2年生頃に、ピアノを習いたいと珍しく強く訴えたから、
お父さん、なんとかしてピアノを買ってやりたくてさ。
でも当時、このピアノは車1台分もしたんだ。
節約して、お小遣いの一部を長い間貯金をして、
さらにローンを組んで、なんとか買ったんだ。

A美にはこれしかしてあげられなかった。
ピアノしか買ってあげられなかった。

今は、このピアノは誰も弾かないけれど、
思いがいっぱい詰まっていて、どうしても捨てられないんだ」

と、ためていた気持ちを一気に吐き出しました。

それを何気なく、近くで聞いていた妹は、急に父の前に来て、

「お父さん、ありがとう。十分伝わっているよ」

といいました。

それを聞いて父は、「本当かい」と言い、
ふう〜と息を吐いて、ホッとしたような表情になり、また、無口になりました。

他人から見ればガラクタに見えるものが、
本人にとっては、意味のあるものであり、
感謝によってこだわりが溶けていくことを、しみじみとわかった出来事でした。

どうしても思い入れが強くて、捨てられないのなら、
時期を待つのもひとつかもしれません。


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