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PayPay感謝デーで見えた加盟店「黒字倒産」のリスク

昨日、PayPay感謝デーが開催されました。「最大20%戻ってくる」「50回に1回の確率で全額戻ってくる!」と還元を前面に打ち出したキャンペーンで、多くの人が利用したことでTwitter上でもトレンド入りしていました。

また、同時に開催されていたユニクロの「PayPayでヒートテック1枚買うともう1枚無料」というキャンペーンにより、ユニクロにも多くの人が訪れていたようです。
しかし、これらのキャンペーンにより、想定より多くの決済が行われたのか、PayPayサービスが利用しづらい時間帯があり、購入を諦めた、もしくは現金で支払った、という声も多く聞かれました。

加盟店で準備はできたか

PayPayに対応しているお店であれば、今回のキャンペーンを喜んでいた場合もあるでしょう。PayPayが使えるから、という理由で足を運んだ顧客も多く、店舗が何の宣伝もしなくても、PayPayで支払うことを前提として来店している顧客を取り込むことができたのです。
ただし、決済トラブルを予想して準備ができたか、というと少し状況は変わってきます。

飲食店の場合、決済は食事のあと、ということは珍しくありません。それまでどのような決済方法が使われるかわからないのです。決済のタイミングになって、その処理に時間がかかることを想定していないと、その顧客との対応に時間がかかるだけでなく、他の顧客にも迷惑がかかります。
飲食店でなくても、レジに行列ができ、並ぶことを嫌がって購入を諦める顧客が出ると、売上に大きな影響が出ます。現金で支払おうと思っていた顧客が、待たされてクレームを言うこともあるでしょう。

今回も、このような例が散見されたようです。これを防ぐには、複数のレジの準備が必要になります。しかし、現実的には難しいことが容易に想像できます。

小売店がPayPayを導入した理由として、今回の消費税増税により、政府の「キャッシュレス・ポイント還元事業」に対応することが挙げられます。
これまでは手数料や導入費用がかかるためクレジットカード決済を導入せず、現金のみで対応してきた店が、PayPayなら導入費用もかからず、すぐに導入できる、という理由で導入しています。

つまり、規模も小さく、店員の数も少ない小売店が多いのです。このような加盟店では、キャンペーンが開催されたからといって、人員を増やすことは難しいものです。

導入した店舗がPayPayを選んだ理由

PayPayにトラブルが発生しても、他の決済手段があればよいと考えるかもしれません。しかし、それも難しいものです。今回の場合、PayPayだけが行なったキャンペーンのため、LINE Payやau Payを導入していても、顧客はそれを選びません。

そもそも、複数のQRコード決済事業者がある中から、PayPayを選んで導入している理由として、「入金までのタイミングが短い」ことが挙げられます。LINE Payやau Payの場合、入金タイミングは月末締めや15日締めでの翌月払いなどがほとんどですが、PayPayでは「最短翌日入金」をうたっていました。

翌日ならこれまでとキャッシュフローが変わらない、と思って導入した店舗も多いでしょう。当日の売上の現金で、翌日の仕入れをする、という店舗は少なくありません。

「売上の入金が遅延する」というメール

そんな中、10月5日の夜に、加盟店に宛に次のようなメールが届きました。

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PayPayを導入しても、翌日入金であればそれほどキャッシュフローは変わらないと感じていた店舗も多いでしょう。しかし、売上の入金が遅延するとなると話は変わってきます。

そもそも手元に現金がないと仕入れもできませんし、すでに仕入れたものの支払いが滞ってしまいます。仕入れができずに在庫が減ると売上にも影響しますし、場合によっては「黒字倒産」もあり得ます。
もちろん、このようなギリギリの経営状況に問題がある、という見方もできますが、小規模な小売店の場合、それほど余裕がないことは少なくありません。

今回は結局、遅延せずに入金されたようですが、過去にも何度か入金遅延が発生していたこともあり、今後も同様のことが発生するリスクは存在します。

PayPayのうたい文句である「初期導入費も決済手数料も入金手数料も0円」という言葉につられて、安易に導入するのはリスクがあることが明らかになったともいえるでしょう。

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