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小説「13歳のランドセル」

振り返れば私って、もう13歳だ。
なんでだろ、家…いや部屋から出れなくなったのって。
小学生ン時って、そんなんでもなかったけどな~。
なんて、もう今は出番のない部屋のはしっこにあるランドセルを見ながら私は思っていた。


いつからだろう。〝誕生日祝い〟ってのがモノがなくなったって。
それどころか、ついこないだまで背負って通学していたランドセルも、じ~ちゃん、ば~ちゃんに買ってもらったりして昔っていろいろと〝祝ってもらうこと〟があったんだっけ…。
と、もういろいろと思い出すけど、なんか余計にツライ…。
何かムカついてきたのでランドセルに八つ当たりしてみた。
「おい!ランドセル!何で中学生になったらテメーを連れていけないんだよ!」
と、訳の分からない言葉で罵倒しながら…。
すると、そのランドセルが
「おい!コラ!私を何だと思っている!小学校を共に歩んで6年、プラス中学生になってからも君をそっと見守っているランドセル様だぞ!」
と、のたもうたので私は思わずハハァーとなった。
その時、私はついに病院行きかと確信したが、すかさずランドセル…様が
「大丈夫!そんなとこ行かずとも私と一緒に学校へ行こう!」


「って言っても…私5月ぐらいからず~っと学校行ってないのに…今さら…」
「大丈夫!そんな君でも行ける学校があるんだよ!それは…」
「え~っ!フリースクールかなんかの宣伝!?回し者?」
「いや…君みたいなのでも行ける学校、ランドセル中学校というんだ!」
「ゴメン…やっぱ私、病院に…」
「いやいや!大丈夫!」
「その〝大丈夫!〟って便利な言葉ね…」
「と、とにかく私についてきなさい!」


そうして言われるがまま、こっそりと部屋と家を抜け出して私は
ランドセルについていくまま森の奥深くへと入っていった。
その時点で私はひどく後悔をしていた。
その後悔は森の中にある廃校っぽい建物を見るとさらにその想いは強くなっていった。
「ここだよ、ランドセル中学校、いやランドセル学園!!中高一貫なんだ!」
「まさか〝全寮制〟で、ちょっと違うところに〝ランドセル大学〟なんてトコロまであったりして…!?」
「ぬ!?察しが早いな!ま~一応入学試験もあるから受けてみなさい!今すぐだ!」
私はもう半分以上ヤケクソ気分でその試験を受けた。特にどんな内容だったかについてはヒ・ミ・ツらしいので…。


結果は…落ちてしまった。ランドセル様はそこに残って〝やるべきこと〟があるらしいので私一人森の中をクマさん、シカさん、おサルさんに遭わないように祈りながら自宅近くまで帰ってきた。
その帰りすがら〝一番会いたくねー〟と思っていた同級生に出会った。
「あれ⁉アンタ、引きこもってんじゃね~の?」
なんて言われた。
でも悔しいから次の日から学校へ行きだした。
そうだ、私にも〝やるべきこと〟があるのだ。必死に勉強してあの森の中の〝ランドセル学園〟に入って…み~んなを助けるランドセルを…いやランドセルに…!


完。


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